プレスリリースとは、企業や団体が、世の中に広く発信したい情報(ニュース)を主にメディア向けに簡潔にまとめた資料です。最近はPR TIMESなどプレスリリース配信サービスも広がっています。
広報担当者なら知っておきたいプレスリリースの役割と、配信代行サービスのメリット・デメリットをまとめました。
プレスリリースの基本の「キ」
プレスリリースと似た言葉に、「ニュースリリース」があります。プレスリリースとニュースリリースは、いったい何が違うのでしょうか。
プレスリリースとニュースリリース
プレスリリースは「報道発表」あるいは「報道発表資料」などと呼ばれ、企業や団体などが世の中に発信したいニュース(情報)をまとめたものです。
「プレスリリース」と「ニュースリリース」は、そのもの自体に違いはありません。ただし、目的や意味合いに、少し違いがあります。
プレスリリースの「プレス」は「報道」の意味で、新聞、テレビ、雑誌などの「メディア」のことを指します。「メディア」の中には、特定の業界や専門分野を対象とする新聞(専門紙・業界紙)や雑誌(専門誌・業界誌)もあります。発行部数が多くなくても、その業界や分野で影響力を持つ媒体もあります。
オンラインのニュースサイトも「メディア」です。
一方で、ユーチューバーやブロガー、インフルエンサーは、フォロワーが多くても「メディア」として位置づけられることはあまりありません。
「メディア」「報道」以外にも、広く情報を発信する場合「プレスリリース」いう用語を使わず(あるいは「プレスリリース」の用語を避けて)、「ニュースリリース」と呼ぶことがあります。ただし、そこまで厳密に考えず、呼び方が定着しているから「プレスリリース」と呼んでいることも多いです。
プレスリリースの内容とは
プレスリリースの内容は、大きく2つに分けられます。
- 事業や活動、サービスに関するニュース
新製品や新しい活動、新規のサービスに関するニュースなど - 経営や組織に関するニュース
役員人事、決算報告、経営統合、重大事態に関するものなど
経営や組織に関するニュースのうち、役員人事や決算報告などは、いつも掲載してくれる媒体や体裁がほぼ決まっていると思います。新たに設立した会社や組織でなければ、過去のフォーマットにしたがって情報を更新すればいいので、あまり問題はないでしょう。
広報担当者が日ごろ、頭を使わなければいけないプレスリリースとは主に、1の「事業や活動、サービスに関するニュース」を紹介するプレスリリースだということになります。
プレスリリース配信サービスとは
メディアや記者・編集者などに幅広くプレスリリースを配信するのが、「PR TIMES」や「共同通信PRワイヤー」などのプレスリリース配信代行サービスです。
プレスリリース配信サービスの機能
各サービスにより特徴や機能に差はありますが、共通する機能には次のようなものがあります。
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配信代行の定番 PR TIMESとは
プレスリリース配信代行サービスには、PR TIMES、共同通信PRワイヤー、アットプレス、バリュープレス、ドリームニュースなどがあります。
この中でも広く知られているのが、PR TIMES(運営=株式会社PR TIMES)。プレスリリース配信代行サービスの代名詞とも言える存在です。
PR TIMESウェブサイトによると、累計利用社数は79,000社以上、上場企業の利用率は53%以上です。主要機能に関するデータは、次の通りです。
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PR TIMESが提携している掲載サイトの例(プレスリリースを転載するサイトの例)
出典:https://prtimes.jp/service/
PR TIMESは、「非営利団体サポートプロジェクト」を展開しています。対象として認められた非営利団体は、PR TIMESのサービスやシステムを無料で利用することができます。
プレスリリース配信代行サービスの利用手順
配信代行サービスを利用してプレスリリースを配信する場合の流れは、以下のようになります。PR TIMESを利用するケースを基本に説明します。
- 契約・登録(個別のプレスリリースを作成・配信する前)
- プレスリリースの作成・登録
- プレスリリースの配信
- メディアからの取材・問い合わせへの対応
<契約・登録:個別のプレスリリースを作成・配信する前に>
配信代行サービスを利用するには、まず契約・登録をする必要があります。企業情報、担当者情報、請求先情報などを登録し、申請します。
PR TIMESの場合、登録した情報とコーポレートサイトなどをもとに審査が行われ、約1営業日で審査が完了します。
<プレスリリースの作成・登録>
配信するプレスリリースを作成します。
PR TIMESの場合、PR TIMESのサイトにログインし、サイト上で作成を進めることもできますが、Microsoft Wordで作成したファイルを読み込み、使用することができます(Wordファイルインポート機能)。
プレスリリース作成段階で、社内での確認なども必要なことが多いと思います。また、誤字脱字がないかの確認もよりしっかりできると思いますので、Wordで作成後、インポートするのがよいでしょう。
サブタイトル、リード(前文)、画像なども整え、カテゴリ-なども設定したら、プレスリリースを登録します。
よいプレスリリースのポイントや関連ブログは、後半で紹介しています。
<一般公開情報とメディア向け情報>
PR TIMESでは、広く一般に公開する情報と、メディアや記者・編集者向けに限定して伝える情報を、分けて登録することができます。
自社担当者の情報や関連の記者会見の情報などは、「メディアユーザー」としてログインした人に限定して、伝えることができるのです。
ただし、メディアユーザー登録の審査は、それほど厳密ではありませんので、機微な情報の扱いには注意が必要です。
<プレスリリースの配信>
まずは、プレスリリースの配信先を設定します。
PR TIMESの場合は、「メディアの種類」(TV番組、雑誌、新聞、インターネットサイトなど)、「報道対象地域」(全国と、全国8地域)などを選び、メディアリストを作成します。
メディアでは現在もFAXを使用しているところが少なくありません。PR TIMESのプレスリリース配信はメールが基本ですが、FAXを送信先に加えるオプションも用意されています。
プレスリリースの作成も完了している場合は、即時配信か、タイミングを設定して配信するかを決め、配信をセットします。
<メディアからの取材・問い合わせへの対応>
配信したプレスリリースを見て、記事やレポートしようと考えた記者・編集者は、多くの場合、プレスリリースにある問い合わせ先に連絡をしてきます。
電話やメールで済むこともありますが、インタビューや撮影など、より本格的な取材につながることもあります。
ここが一番大切なところです。しっかり対応しましょう。
プレスリリース配信代行サービスの利用料金
配信1件ごとに料金が発生するもの(従量課金制)と、一定期間契約し、契約期間中は無制限もしくは上限件数まで利用できるもの(定額制)があります。
PR TIMESの利用料金は以下のようになっています。
従量課金 | 30,000円/件 |
定額制 | 70,000円/月(12カ月契約の場合) ~80,000円/月(6カ月契約の場合) ※30件/月まで配信可 |
プレスリリースの役割とは
プレスリリースはもともと、マスメディアに記事を掲載してもらうために作成・発信されるものでした。しかし、一般の人にも広く公開されるプレスリリースも増えました。
元々はマスメディアに載せてもらうため
インターネットやSNSが今のように発達していない時代は、情報を広く伝えるにはマスメディアに取り上げてもらう以外の方法がありませんでした。プレスリリースは、そのために活用された手段の一つです。
プレスリリースは、メディアや記者・編集者から2つの形で活用されました。
- プレスリリースを元に記事を書く、レポートを制作する
- プレスリリースをきっかけに取材する
記者クラブにプレスリリースを届ける
「記者クラブ」という言葉を聞いたことがある人に比べて、実際に記者クラブに行ったことのある人や活用したことがある人は少ないかも知れません。
記者クラブとは、メディアの取材・情報収集の拠点です。記者クラブには次のような特徴があります。
記者クラブの特徴 |
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広報担当者としては、発信しようとしている新商品・新サービスが持つ社会性・公共性を考えてアピールすることが重要です。社会性・公共性が見えれば、記者クラブに出入りしている記者・編集者を含め、より多くのメディアや記者・編集者に関心を持ってもらうきっかけになります。
記者や編集者にプレスリリースを送る
記者や編集者の連絡先が分かる場合は、プレスリリースを直接、記者・編集者に送ることもあります。記者クラブに所属していないメディアや記者・編集者も多いので、そうしたメディアや記者・編集者には直接、情報を届けることが大事です。
また、過去、記事や番組にしてくれた記者・編集者であれば、自分の会社や団体の取り組みに関心を持っているので(担当していることもある)、その後も、記事や番組にしてくれる可能性も高くなります。取材や問い合わせのあった記者やメディアのリスト(メディアリスト)を作成し、活用していきます。
これまでメディアや記者・編集者との接点があまりなかった場合や、接点がなかったメディアや記者・編集者にもニュースを伝えたい場合には、プレスリリース配信代行サービスを利用するという選択肢も出てきます。
広がる“一般向けプレスリリース”
プレスリリースが、直接、一般の人の目に触れる機会が増えました。
企業・団体の多くは、ウェブサイトでプレスリリースを公開しています。新商品・新サービスなどニュースの特徴が分かりやすくまとめられたプレスリリースなら、組織のアピールにも効果的です。
省庁や都道府県(県庁など)、市町村(市役所など)もまた、ウェブサイトでプレスリリースを公開しています。
記者クラブ向けに配布・発表した情報の多くが「報道発表資料」「記者発表」などとして、そのまま掲載されています(記者クラブで公開・共有される情報のすべてが公開されているわけではありません)。
新聞社や通信社などのオンラインサイトにも、プレスリリース配信代行サービス経由で、プレスリリースが掲載されるようになりました。
いいプレスリリースとは
プレスリリースは、新しい商品・サービスに興味を持ってもらい、知ってもらうための「ツール」です。では、どのようなプレスリリースが、その目的を達成できるでしょうか。
プレスリリースから記事化を図る
プレスリリースそのものが一般の人の目に触れる機会が増えても、メディアがプレスリリースをもとに編集や取材をした記事・ニュースの影響力は、元のプレスリリースと比べて非常に大きいものがあります。
プレスリリースは基本的に、自社の商品・サービスや、企業の取り組みの特徴を自ら紹介するものなので、「自画自賛」的に見られる部分がどうしても残ります。一方、メディアの記事やニュースは、以下のように認識されることが多いです。
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また、メディアに掲載されたニュースは、Yahoo!ニュースやNewsPicsをはじめ、各種のオンラインサイトやポータルサイトに幅広く転載されます。地方紙を含めた多くの新聞や一部の雑誌は、記事データベースを運用しているので、掲載記事はデータベースにも収容されます。テレビ番組の企画に関わるリサーチャーなどが新聞や雑誌の記事を参考にすることも少なくありません。
プレスリリースの原点に返るようですが、メディアの記事につながるプレスリリースこそが「いいプレスリリース」だと言えるでしょう。
社会性・公共性が感じられる3つのケース
商品や営業に関する情報でありながら、その社会性・公共性が認識され、報道にもつながっているケースを3つ紹介します。
1.ダウン症の特徴を表現したバービー人形
2023年11月にマテル・インターナショナル(株)からリリースが出されると、テレビや新聞など多くのメディアが扱いました。病気や障害がある人もない人も一緒に暮らす社会づくりが意識される中、広告・宣伝を超えた社会性・公共性が認識された結果でしょう。
ダウン症をテーマにした初のバービー人形発売のプレスリリース
出典:PR TIMESのマテル・インターナショナル(株)のページ
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000510.000012996.html
2.スーパーの「最大30%値下げ」「緊急値下げ宣言!」
(株)東武ストアは2023年7月に「お客様の生活に欠かせない食料品が最大30%値下げ 『厳選168品 緊急値下げ宣言!』」のリリースを発信。その後も「緊急値下げ宣言!第●弾のお知らせ」を毎月、発信しています。
朝日新聞は2023年11月の「物価高にあえて「値下げ」で対抗 価格戦略に変化、日銀は広がり警戒」の記事で、同社のキャンペーンを取り上げました。
価格という商品の最も基本的な情報を強く打ち出しながら、物価高が続く中で社会性・公共性も強く感じさせるリリースです。
出典:東武ストア プレスリリース
https://www.tobustore.co.jp/information/uploads/691/news-20230725.pdf
3.受験シーズン定番の合格祈願商品
(株)ロッテは例年、受験シーズンに合わせ、チョコ菓子「コアラのマーチ」の季節限定商品を発売し、商品を紹介するプレスリリースを発信しています。
「コアラは寝てても木から落ちない」ことから、「コアラのマーチ」は合格祈願商品の定番となっています。
また、2023~2024年の受験シーズンには、通常、六角柱のパッケージを「五角(合格)柱」にした商品を企画し、中学受験塾漫画『二月の勝者-絶対合格の教室-』とコラボしました。
出典:(株)ロッテ プレスリリース「五角のコアラのマーチで合格祈願!!」
https://www.lotte.co.jp/info/news/pdf/20231115114056.pdf
プレスリリース作成の実践的なノウハウについては、以下のブログ記事でも詳しく紹介しています。
プレスリリースの書き方とメディアに取り上げられるコツ5選!
プレスリリースとは?配信の目的やタイミング、書き方のポイントを解説!
配信代行サービス利用のその他のメリット
プレスリリースの配信に関わる業務やノウハウをパッケージ化した、プレスリリース配信代行サービス。元々の目的だったメディア露出以外のメリットもあります。Google検索やSNS引用に効果
配信代行サービスのサイトの評価が高くなっていることもあり、Googleなどで関連キーワードを検索すると、PR TIMESに掲載したプレスリリースのページが上位に表示されることがよくあります。
プレスリリースを探すつもりでなかった人にも、効果的にニュースをアピールできます。その結果、プレスリリースのページをSNSでシェアしてくれる人も多くなります。
アウター&インナーブランディングに効果
多くの場合、プレスリリースは商品やサービスの「紹介」だけではなく、企画したコンセプトや背景、関連する過去の経過なども紹介します。これらは、会社・組織のブランディングにもつながる情報です。
自分の会社・組織が、どのようなものか、あるいはどのようなものとして見られたいかを外部に発信することは、アウターブランディングの活動と言えます。
一方、プレスリリースの作成や発信に関わることや、外部サイトに掲載されたプレスリリースを見ることで、中の社員・スタッフも同じ認識を持つことができます。これはインナーブランディングとも言えます。
配信代行サービス利用の注意点
プレスリリース配信代行サービスには多くのメリットがあり、うまく活用すれば効果的ですが、注意しなければいけない点もいくつかあります。利用に費用がかかる
多くの場合、プレスリリース配信代行サービスの利用には費用がかかります。配信1件あたり30,000円程度、定額制で1カ月あたり70,000円程度~が多いです。無料のサービスもありますが、有料サービスに比べて配信先が少なかったり、掲載サイトがなかったり、そのサービスが持っているサイトの認知度が低いためにプレスリリースを掲載してもアクセスが少なかったりということがあり得ます。
効果に対して、費用が見合うかどうか、検討や検証が必要でしょう。複数のサービスを利用して比較してみるのもいいかも知れません。
独自の記事に結びついたケースの集計が難しい
多くのプレスリリース配信代行サービスでは、提携しているサイトなどに掲載されたプレスリリースなどはしっかり集計できます。また、メールで記者や編集者に送ったプレスリリースが開封・ダウンロードされた回数などを集計できるサービスもあります。
一方で、プレスリリースを元にどれくらいの記事が作成されたのか、配信代行サービスの中で集計・分析しているものは、ほとんどありません。
期待したメディアの取材・報道につながらない
プレスリリース配信代行サービスは、プレスリリースを多くのメディアや記者・編集者に配信します。
配信代行サービスの中には、メディアによって報道される割合(掲載率)の高さをアピールしているところもあります。注意しなければいけないのは、配信先は有名メディアだけではなく、地域や分野などもさまざまなメディアや記者・編集者が含まれていることです。
掲載はされても、本当に掲載してほしかったメディアには掲載されないこともあります。記事・ニュースの反響が小さいかも知れません。
当然ながら有名メディアには、さまざまなプレスリリースが送られてきます。その中で記者・編集者の目に留まるプレスリリースにするのは、見出しや画像などの工夫も必要です。プレスリリース作成の支援をしてくれるサービスも多いですが、追加料金が必要なところが多いです。
ニュースサイトで意外に目立たない
プレスリリース配信代行サービスの多くは、ニュースサイトも提供していますが、自社のプレスリリースは想定したほどには表示されないかも知れません。ニュースのカテゴリーと比べて、プレスリリースがどこに掲載されているのか分かりにくいニュースサイトもあります。
カテゴリーに「プレスリリース」があり、リリース配信代行業者が扱うプレスリリースが掲載される産経新聞系のニュースサイト「iza」(産経デジタル運営)
出典:iza https://www.iza.ne.jp/
経済ニュースのカテゴリーの中に、サブカテゴリーとして「PRワイヤー」があり、共同通信PRワイヤーが扱うプレスリリースが紹介される「47NEWS」(共同通信・地方紙系)
出典:47NEWS https://www.47news.jp/economics
まとめ
オンラインメディアやSNSの影響力が拡大していますが、従来からのマスメディアの影響力はなお大きく、広報活動においてはマスメディアの活用が引き続き重要です。情報環境やメディア状況の変化の中、プレスリリース配信代行サービスが普及・定着し、マスメディアとの接点がなかった会社や団体もメディアへ向けてニュースを発信することのハードルは低くなりました。しかし、「メディアが記事や番組で取り上げたくなるニュース」にアピールするためには、工夫やノウハウも必要です。
プレスリリースの配信代行や作成支援などのサービスもうまく活用しながら、ぜひ広報活動を強化してください。
Harmonic Society株式会社もプレスリリースの作成や発信をはじめ、各種広報活動のサポートを展開しています。ぜひお気軽にお問い合わせください。