取材を受けるメリットと気をつけなければいけないこと

interview-merit

会社として、あるいは経営者や、新規のサービス・商品の責任者として、取材の打診を受ける機会もあると思います。取材を受けるとどのようなメリット・効果があるか、取材する側・される側、両方の経験の豊富な筆者がご説明します。取材を受けるときに注意しなければいけないこと、対応策についてもご案内します。

目次

取材とは、経営者や担当者の「思い」を表す一つの手段

取材を受ければ、一部の例外的なケースを除いて、取材の結果が世の中に発信されます。会社・個人の取り組みや、取り組みの背景にある経営方針、ビジョン・ミッション、「思い」を発信する機会になります。

商品・サービスに加えて、ミッション・ビジョンを説明

個別の商品やサービスについての情報は、ウェブサイトやSNSで発信されるでしょう。なぜ、その商品やサービスを開発したのかという説明も、合わせて発信することも多いでしょう。

一方で、会社の経営理念や経営方針、ミッション・ビジョン・バリューをしっかり説明・発信する機会は、個別の商品・サービスの発信の機会と比べて少ないでしょう。

メディアやライターが取材を考える場合、きっかけは個別の商品やサービスへの関心であったとしても、多くの場合、その商品・サービスを生み出した要因・背景についても関心を持っています。取材の際、会社の理念やミッション・ビジョン・バリューを説明し、それが発信されることで、会社やブランドへの理解が広まります。

商品・サービスを超えたブランドイメージの構築につながる

最近は、ミッション・ビジョン・バリューという形で示されることも増えた会社・事業の方針・理念ですが、有名な例を2つ、ご紹介します。

  • パナソニック「綱領」

産業人たるの本分に徹し

社会生活の改善と向上を図り

世界文化の進展に

寄与せんことを期す

出典:パナソニックグループ 経営理念

   https://recruit.jpn.panasonic.com/philosophy/

  • 京セラ株式会社「社是」

敬天愛人

常に公明正大 謙虚な心で 仕事にあたり

天を敬い 人を愛し 仕事を愛し

会社を愛し 国を愛する心

出典:京セラ株式会社 社是・経営理念・経営思想

   https://www.kyocera.co.jp/company/summary/philosophy.html

商品やサービスを通じて、会社のイメージも作られていきますが、会社の理念・方針が知られているからこそ、商品やサービスへの信頼や期待も高まります。

商品やサービスについて、機能や性能で差別化を図ることが難しくなる一方、「商品やサービスを購入・利用するときに、企業やブランドが掲げるビジョンや理念、思想(ブランドパーパス)を気にする」という人が増えている傾向を示す調査結果も出てきています。

例えば、博報堂「ブランドパーパスに関する生活者調査」レポート

     https://www.hakuhodo.co.jp/uploads/2021/01/20210125.pdf

会社の理念、ミッション・ビジョン・バリューの発信につながる取り組みは重要です。

経営者・トップが取材を受けることも効果的

経営者・トップが取材を受けて、会社の理念や自分の考えをしっかり発信することも重要です。

以前に比べ、会社のトップが説明会などで自ら発信する機会も増えています。文章主体であっても、トップが取材を受け、自らの言葉で説明することは、理解を広げていく上で重要です。

取材を受けて発信されれば、社内の理解も深まる

会社の理念やミッション・ビジョン・バリュー、経営者の考えや、力を入れている商品・サービスについての背景は、社内であっても、十分に共有されているとは限りません。とくに大きな組織となれば、認識の差も大きくなります。

こうした点について取材が入り、メディアで発信されれば、社内でも情報や認識が共有されます。取材・発信の優先目標は外部(社外)ですが、意外と社内をまとめる効果があります。

第三者から取材を受けることが効果的な理由とは

「取材を受ける」場合、多くは外部の取材者、ライターから取材を受けることになるでしょう。その場合のメリットや効果について考えてみます。

内部の広報担当スタッフは「プロ」ではないことも多い

ウェブサイトや広報誌など、自社で運営している媒体(オウンドメディア)に読み物的なトピックスがあり、そこで会社の理念などを発信できる環境が整っているかも知れません。

ジョブ型採用/職種別採用で、オウンドメディアなど広報を担当する人が広報や取材・原稿作成の経験者であったり、部署間の移動はなく、ずっと広報を担当し続けたりするかも知れません。そうした場合は、広報の担当者や担当部署が、経営者に会社の理念やミッション・ビジョンをしっかり「取材」することも可能かもしれません。

一方で、社内異動の中で、総務や営業など、いくつもの職種を経験する中で、一時期、広報を担当するというケースもあるでしょう。そうした中でも、広報部門に広報のノウハウが蓄積されている会社もありますが、3年程度で異動する場合、担当者が広報の十分なスキルを身に付けることは容易ではありません。

オウンドメディアであっても、会社の方針や商品・サービスのストーリーをしっかり発信しようとする場合、同様の経験・スキルを持つ社員/担当者がいない場合は、外部の「プロ」に委託するというのも選択肢となります。

外部のメディアの場合、取材はもちろん、外部の「プロ」の仕事になります。

外部からの取材の方が、興味深い話を引き出しやすい

取材をする方も、取材を受ける方も、同じ会社・組織の人である場合は、上下関係や人間関係に気を遣ってしまうため、外部の人にとって(あるいは社内の人にとっても)興味深い話なのに突っ込んで聞けないことも出てきます。

例えば、失敗談。とくに、経営者の若いころの失敗のエピソードなどは、部下や、若手社員にとっては、聞きにくいと思います。勇気をふりしぼって聞いても、経営者やベテラン社員は「威厳を保ちたい」という気持ちもあって、存分には話してくれないこともあるでしょう。

情報が発信されれば、結局、知られることだと頭で分かっていても、社内を顔を合わせる人、今は違ってもいつかは部下になるかもしれない若手に、自分の失敗した体験を質問されて話すことに抵抗を感じる人は少なくないように感じます。

この点、外部の取材者・ライターであれば、ハードルはかなり下がります。発信前に内容案の確認ができる場合は、「どこまで明らかにするか」、もう一度、考える時間もあります。

社内の当たり前が世間の当たり前と一緒とは限らない

筆者の場合、ある勤務先で仕事をしているとき、担当部署に問い合わせをし、「これ、急ぎでお願いします」と伝えたものの、一向に連絡が来ないということがありました。筆者の「急ぎ」は、待っても数時間だったのですが、その組織では「2~3日以内の返答」でも急ぎと考えられることもあったためです。

こうしたように、その会社では当たり前、あるいは異例と思われている取り組みが、他の人から見ると、普通だったり、早いと思っていたことが遅かったりということもあります。時間やコストなど、ものごとの考え方など、第三者の目が入ることで、客観的な評価になり、実はすごいことだったということもあるでしょう。

プロの関わりで、取材・原稿作成・拡散の効果に期待

第三者の目を持っているだけではなく、「プロ」には「プロ」のノウハウがあります。取材、原稿作成、それに拡散についても効果ができることがあります。

経験をもとに聞き出す取材

社内の人間には聞きづらいことを聞く、第三者の目線で考え方や取り組みを評価することだけではなく、経験の豊富な取材者・ライターであれば、読者や閲覧者の心をつかむような「いい話」を聞き出すノウハウを持っています。

「プロ」の取材を受けることで、周りの人間も聞いたことがなかった思いや体験、アイデアを聞き出してもらうこともできるかもしれません。

原稿作成・コンテンツ制作にも慣れている

経験のある取材・ライターであれば、取材に慣れているだけではなく、原稿作成にも慣れているでしょう。動画などの場合であればコンテンツ制作のノウハウも持っている人が撮影や編集にあたります。

例えば社内の不慣れな担当者だと、仮に取材で「いい話」をたくさん聞き出したとしても、それを読みやすく、またしっかり心に届くように編集・構成するのは、なかなか大変です。

「プロ」は、常に、そうした点を意識して、原稿を書いたり、動画を編集したりということに慣れています。

SEO対策や情報を拡散させるノウハウがある

ネットにも情報があふれる時代、情報を載せておくだけでは、見てくれる人の数には限りがあります。

ネット情報をバズらせるノウハウというのもありますが、広く拡散される情報には、特徴があります。それは、ニュース性です。世相や時代感覚、世の中の関心や問題意識に応えるような情報に注目が集まります。

そうしたニュース性のある情報は、ネット系のインフルエンサーだけでなく、マスメディアの関心をひきつけることがあります。一度、マスメディアに取り上げられた情報は、SNSでも広く発信されます。また、マスメディアが発信した情報は、信頼度も高く、会社の理念や商品・サービス開発の背景を理解してもらい、ブランドイメージを向上させるためにも効果的です。

ウェブ系の発信の場合、最近では検索されたときにヒットしやすい形に構成するSEO対策を実施することが一般化しています。広報に力を入れている会社であれば、自社で工夫をすることも可能ですが、そうでない場合、外部のノウハウを借りることも一手です。

外部の取材を受けるときに注意すること

発信されるコンテンツの質、拡散の可能性など、期待される効果も大きい外部の取材ですが、注意しなければならないこともいくつかあります。大事なポイントを3点、紹介します。

質問への回答はできるだけ事前に準備

記事・コンテンツの発信前に内容案の確認ができるかどうかで重要度は変わってきますが、どのような質問を受けるのか、その質問にどのように答えるのか、できるだけ事前に準備しておきましょう。

質問案は、回答を準備する時間、担当部門・担当者と調整する時間も考えて、できるだけ早めにもらうようにしましょう。取材を受ける経営者や担当者があまり取材に慣れていない場合や、あまり話すことのないテーマで取材を受ける場合は、できるだけ念入りに準備します。

質問案が抽象的な場合は、より具体的な質問をもらえるように取材相手に要望します。

回答案は、スピーチのように一字一句、原稿形式で作成する必要はありません。回答のポイントが分かることが大切です。ただし、取材を受ける人が、あまり取材を受けた経験がないような場合は、原稿形式の方が安心できるかも知れません。回答案を事前に作成することで、取材を受ける人が安心できるようになることが重要です。関連の資料も合わせて用意できるといいでしょう。

掲載発信の前に原稿やコンテンツを確認できるか?

これは非常に大切なポイントとなります。必ず事前に確認しましょう。

自社がウェブサイトや広報誌など、オウンドメディアの場合は、自社が発信者となり、外部の「プロ」に関わってもらう場合も、「自社の発信」です。その場合は、当然ながら、その内容を確認し、不都合や懸念があれば修正することができます。ネット系の情報であれば、発信した後の修正・変更も容易です。

一方で、外部メディアの場合、掲載・発信前に内容の確認ができるかどうかは、その媒体の方針やコンテンツの位置づけによって変わってきます。

自社が広告料や協賛金を出した広告記事の場合、そのスペースは自社が購入したものなので、事前に確認し、修正を依頼することができます。これは、オウンドメディアと同様です(対応できるスケジュールや修正に要する時間などは、必ずしも同じではないので、注意は必要です)。

外部のメディア自身の企画として記事やコンテンツが考えられ、その中で取材を受けたケースでは、掲載前の確認ができる場合とできない場合があります。一般的にいうと、新聞は事前の確認ができないことが多く、雑誌やオンラインメディアは確認できることが多い傾向があります。記事のタイプによっても違いがあり、インタビュー記事の場合は、確認できることが多くなります。

なぜ、取材を受けたのに、その内容を事前に確認できないかというと、メディア側が「編集権」を持っているからです。

かつて新聞は、「掲載前の記事(原稿)確認なんて、とんでもない」という雰囲気でしたが、近年は従来に比べると、原稿確認のハードルも下がっています

オフレコは絶対に守られる、とは限らない

「オフレコ」という言葉を聞いたことがある人も多いと思います。オフレコは、取材などで、発信しないことを前提に話されること、その内容です。

記事・コンテンツの発信前に内容を確認できる場合は、不都合もしくは懸念のある情報が含まれていれば、その修正・変更を依頼すれば問題は生じないでしょう。

一方で、取材後の確認ができない場合は、注意が必要です。取材のとき、「これはオフレコで」と断って話した内容が発信されてしまうこともあります。多くの場合、発信前に「オフレコということだったが、記事に入れたい」などの相談があります。十分に理解し合えないまま、時間切れで掲載されてしまうケースもあるようです。

取材の際、相手がオフレコに同意したかどうかということもありますが、十分に信用できると確認できない相手には、発信されて困ることは話さないのが、一番の対策です。

ネガティブ報道・不祥事が発生したとき

今回、紹介したケースは基本的に、相手が自分の会社や取り組みに興味・関心を持ち、前向きに紹介しようとしているケースです。

何か、会社で問題があった場合の対応は、こうしたケースとは全く異なります。

まとめ

外部の取材を受ける場合のメリットや注意点をご紹介しました。すべて外部に任せる、外のメディアの取材を受けるというケース以外にも、オウンドメディアのコンテンツ制作の一部を外部のスタッフ・会社に委託したり、SEO対策などについてアドバイスを受けるといった方法もあると思います。

弊社もコンテンツ制作や、広報に関する各種のアドバイスの提供などのサービスを展開していますので、ご相談ください。

この記事を書いた人

師田 賢人のアバター 師田 賢人 代表取締役

Harmonic Society株式会社 代表取締役。一橋大学(商学部)卒業後、Accenture Japanに入社。ITコンサルタントとして働いた後、スタートアップ企業にWebエンジニアとして転職。2016年に独立したのち、Webライターとして100社以上と取引。経営者や著名人、大学教授ら200名以上に取材、執筆に従事する。2023年3月にHarmonic Society株式会社を設立し、経営者をはじめさまざまな事業者へ取材・撮影をして記事を制作している。

目次