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ディープラーニングとは?仕組みから活用例までわかりやすく解説

ディープラーニングとは、AI(人工知能)に複雑な判断や細かな処理を学習させる手法のことです。

ディープラーニングを活用することで、AIができることの幅や種類を格段に増やすことができ、たとえば画像認識を活用した自動運転や顔認証、自然な会話に受け答えをすることなどが実現できるようになります。

今回は、ディープラーニングの意味や仕組み、代表的なアルゴリズム、活用方法、実用例などを詳しく解説します。

ディープラーニングとは?

ディープラーニング(Deep Learning)は、人工ニューラルネットワーク(Artificial Neural Network)を用いてパターンや特徴を学習する手法のことです。機械学習(Machine Learning)の一分野でもあります。

その名前の通り、深い階層構造を持つことが特徴で、多層のニューラルネットワークによって構築されています。日本語では深層学習と訳されることもあります。

ディープラーニングの特徴

ディープラーニングの最大の特徴は、多層の人工ニューラルネットワークが自動的に特微量(データの分類に必要な情報で、対象の特徴が数値化されたもの)を導き出す能力にあります。従来の機械学習では、特微量の抽出や選択を人手で行う必要がありましたが、ディープラーニングでは、多層の人工ニューラルネットワークを通過することでコンピューターが自動的に行ってくれます。

具体的には、ディープラーニングでは、入力データを受け取り、それを多層のニューラルネットワークを通じて処理し、最終的な結果を出力します。各層のニューロンは、入力データに対して重みとバイアスを持ち、それらの値を調整することで、学習を行います。学習の過程では、ニューラルネットワークの出力と正解データの間の誤差を最小化するように、重みとバイアスが自動的に調整されます。

ディープラーニングの仕組み

ディープラーニングの仕組みは、多層の人工ニューラルネットワークを使用して、データのパターンを学習することにあります。

ニューラルネットワークの構築

ニューラルネットワークとは、ニューロン(生物の脳を構成する神経細胞)の構造と働きをモデルにしたAIのことで、ディープラーニングはニューラルネットワーク(NN)を多層構造化したディープニューラルネットワーク(DNN)を用いて学習します。

ニューラルネットワークは、データを入れる入力層、入力層から流れてくる重みを処理する中間層(隠れ層)、結果を出力する出力層で構成されています。

入力データは感覚器官からの刺激、各層のニューロンは脳の神経細胞、そして出力は行動や反応に相当します。ディープラーニングはこのような多層のニューラルネットワークを通じて、人間のような高次元の特徴抽出や複雑な問題解決を実現しています。

ディープラーニングはニューラルネットワークの技術の1つ

ディープラーニングでは、十分な学習データさえあれば、ニューラルネットワーク自体がデータ群の特徴を自動抽出することが可能です。

マルチスケールの中間層が入力データをさまざまな大きさに切り取って特徴を割り出すので、与えられたデータを基に細部のパターンから大きな構造、全体の輪郭まで抽出。

画像のような記号化できないデータのパターン認識を得意としています。

フォワードプロパゲーション

入力データは、ニューラルネットワークの最初の層(入力層)に与えられます。入力層のニューロンから出力された値は、次の隠れ層のニューロンに渡されます。このプロセスが隠れ層を経て、最終的に出力層のニューロンに到達します。このようにデータが順方向に伝播することから、「フォワードプロパゲーション」と呼ばれます。

機械学習との違い

機械学習とは、AIにおける“学習”のこと。人間が学習するように「機械自身が学習する」という意味が込められています。

機械学習はAIを支える技術の1つであり、ディープラーニングは機械学習の手法の1つです。トレーニングに時間がかかるという欠点があるものの、トータルで考えれば機械学習以上の「効率化」を実現できるというメリットがあります。

ディープラーニングのアルゴリズム

ディープラーニングの手法のうち、代表的なものを紹介します。

FNN(フィードフォワードニューラルネットワーク)

FNNは、最も基本的なディープラーニングアルゴリズムです。入力データがネットワークを通じて順方向に伝播し、出力を生成します。各層のニューロンは、前の層の出力を受け取り、重みとバイアスを用いて活性化関数を計算します。

CNN(畳み込みニューラルネットワーク)

CNNは、主に画像認識や動体検知に使用されます。画像の特徴を抽出する「畳み込み層」と特徴を分析する「プーリング層」から構成され、画像処理に特化した構造を持っています。画像上をフィルター(カーネル)で畳み込むことで特徴マップを生成し、プーリング層では特徴を縮小するので、画像に対する高いパターン認識能力があり、素早く識別できることが特徴です。また、膨大なデータセットから自動的に特徴を抽出できることから、画像分類やセグメンテーション、物体検出などのタスクに利用されます。

RNN(再帰型ニューラルネットワーク)

RNNは、時系列データやシーケンスデータの処理に適したアルゴリズムで、可変長の系列データのパターンや依存関係を学習することが可能です。つまり、RNNは、各時刻での入力データに対して過去の情報を保持し、その情報を次の時刻に渡せるという事。音声認識や自然言語処理、音楽生成、動画解析など、時系列データを扱うタスクに用いられます。

LSTM(ロングショートタームメモリ)

LSTMは、 RNNの一種であり、特に系列データの長期的な依存関係をモデル化するために設計されています。LSTMは、ゲートと呼ばれるメカニズムを持ち、入力や出力を制御することで、適切な情報のみを長期記憶として残すことが可能です。これにより、長期的な依存関係を効果的に学習できます。主な利用例に関して、自然言語処理の分野では、言語モデルや機械翻訳、文章生成などです。また、音声認識の分野では、音声認識エンジンの開発や音声合成、音声翻訳などに使用されています。さらに、時系列データの予測や異常検知などのタスクにも応用されています。

GAN(敵対的生成ネットワーク)

GANは、生成モデルの一種であり、データの生成や変換に使用されます。GANは、生成器と識別器の2つのネットワークが相互に競い合う構造を持っています。生成器は偽のデータを生成し、識別器は本物か偽物かを判別します。画像作成時に実在しないデータを生成したり、存在するデータの特徴に沿って変換することが可能です。

ディープラーニングでできること

では、ディープラーニングを使って実際にどのようなことができるのでしょうか。ここからは、ディープラーニングの活用例を紹介します。

画像認識

CNNを利用して画像内に存在する特徴を自動的に抽出し、画像を分類できます。学習には多量の画像データが必要で、物体認識や顔認識、手書き文字認識などのタスクを高精度に行うことが可能です。

例:iPhoneの顔認証、Facebookのタグ付け

自然言語処理

テキストデータを処理し、文書分類、感情分析、機械翻訳などのタスクを実現するのに役立ちます。

例:機械翻訳、言語モデリング、chatbot

音声認識

音声データを処理し、音声認識や音声合成の分野で重要な役割を果たしています。ディープラーニングを活用した音声認識では、音声認識精度が向上し、自然な言語処理が可能になりました。音声認識技術は、スマートスピーカー、自動車のナビゲーションシステム、コールセンターなどの分野で広く利用されています。

例:Siri、Alexaの音声入力

レコメンドシステム

ユーザーの嗜好や行動パターンを分析し、個別の推薦を行うためのレコメンドシステムに使用されます。

例:Amazon商品レコメンド、Netflix「あなたにおすすめの作品」

医療診断

医療画像の解析や病気の診断支援に使用されます。がん検出、病変識別、疾患予測などに活用されています。

自動運転

センサーデータの解析や物体検知、道路状況の予測などを通じて、自動運転技術の発展に寄与しています。音声認識技術によって、音声コマンドで車両を制御することもできます。ディープラーニングはより高度な運転判断を行い、自動運転の性能を向上させてくれます。

異常検知

正常なデータやパターンから外れた異常なデータを自動的に検出する技術のことです。セキュリティ監視や設備監視、品質管理などの分野で活用されています。

例:クレジットカードの不正利用、製造業の品質管理

ゲームプレイ

ディープラーニングは、コンピュータゲームにおけるAIの強化に使用されます。「AIが囲碁で名人に勝った」というようなニュースを見かけませんか?囲碁や将棋の戦略系ゲームはデータの蓄積とその応用が重要なので、ディープラーニングが得意なことと言えます。また、プロ棋士もディープラーニング技術を利用し自身の棋譜を分析することで、戦略の改善や弱点の克服に役立てています。

ここで紹介したのはごく一部の活用例です。ディープラーニングはデータのパターン認識や予測モデリングに適しており、さまざまな領域での応用が広がっています。

ディープラーニングの課題

様々な技術に活用されているディープラーニングですが、課題は残されています。

データの不足と資源の不足

ディープラーニングは大量の高品質なデータを必要とします。しかし、特定のタスクや特定のドメインにおいてデータが不足している場合、モデルの学習や汎化能力に制約が生じる可能性があります。また、非常に大量のデータを処理するため、高性能なハードウェアや分散処理の技術が必要となることがあります。

過学習

ディープラーニングモデルは、訓練データに過度に適合し、新しいデータに対して一般化が難しい「過学習」の問題に直面することがあります。これを解決するためには、適切なモデルの複雑さや正則化手法の選択が重要です。

倫理的な問題

ディープラーニングは訓練データに依存するため、データセットにバイアスが存在する場合、モデルの予測や意思決定にもバイアスが反映される可能性があります。また、倫理的な問題や人権の侵害のリスクも考慮する必要があります。

ディープラーニングの進展にはこれらの課題をクリアしなくてはなりません。様々な課題に対処するために、データの収集と品質管理の改善、モデルの正則化やドメイン適応の手法の開発、モデルの解釈性向上の研究などが日夜行われています。

ディープラーニングはこれからどうなる?

ディープラーニングは現在、多くの分野で大きな進展を遂げており、将来に向けてもさらなる進化が期待されています。

モデルの大規模化と性能向上

ディープラーニングのモデルはますます大規模化され、より多くのパラメータとレイヤーを持つようになります。これにより、より高度な表現能力と性能向上が期待されます。

より効率的な学習手法

ディープラーニングの学習は現在でも計算資源や時間を要しますが、将来的にはより効率的な学習手法が開発されるでしょう。例えば、より効率的な自己教師あり学習(self-supervised learning)などが注目されています。

ディープラーニングの統合と融合

ディープラーニングは他の技術と組み合わせることで、さらなる進化が期待されます。例えば、ディープラーニングと強化学習の統合によるAIの能力向上や、ディープラーニングとシンボリックAIの融合による論理的な推論の実現などが考えられます。

ディープラーニングの応用範囲の拡大

ディープラーニングは現在もさまざまな領域で活用されていますが、将来的には新たな応用範囲が広がることが予想されます。例えば、ロボティクスやIoT(モノのインターネット)など、さまざまな領域でのディープラーニングの活用が進むでしょう。

ディープラーニングが解明され信頼性が向上する

ディープラーニングモデルはブラックボックスとして扱われることがあり、その意思決定プロセスが解釈困難であると指摘されています。今後は、モデルの説明性と信頼性の向上に取り組むことで、より信頼性の高いAIシステムを実現することが期待されます。

これらはディープラーニングの今後の展望の一部ですが、技術の進歩や研究の進展により、ディープラーニングはさらなる発展と革新を遂げることでしょう。

ディープラーニングとこれから

ディープラーニングが活用された技術は今や生活と切り離せない重要なツールとなっています。

異常検知や医療診断など無くなったら困るものもあれば、自動運転のように人々の生活を便利にさせる可能性を秘めているものもあります。一方で課題も残っており、倫理の問題は近年大きな話題を呼んでいます。

様々な課題をクリアし、私たちの生活をより良いものにする技術としてディープラーニングにこれからも目が離せません。

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Harmonic Society編集部

Harmonic Society編集部です。コンテンツ・マーケティングを軸にWebマーケティングの情報を発信しています。Creating Harmony in small steps, 世の中にもっと調和が訪れますように。

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