マーケティングにおいて、課題分析や戦略的意思決定に役立つのが「フレームワーク」です。
これまで市場や顧客のニーズの変化に対応するため、いくつものフレームワークが考案されてきました。そのためフレームワークの種類は数多く、「どのフレームワークを選んだらよいかわからない」「フレームワーク選びに失敗して時間を無駄にしたくない」という方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、フレームワークの概要やメリットを具体的に解説した上で、5つのフレームワークを紹介します。フレームワークに興味のある方や自社に合ったフレームワークをお探しの方はぜひ参考にしてください。
マーケティングのフレームワークとは「戦略の最適化に役立つツール」
フレームワークは、本来「枠組み」「型」を意味する英単語です。骨組みや構造と言い換えても構いません。
そしてマーケティングにおけるフレームワークとは、マーケティング戦略を最適化するためのツールだと捉えてよいでしょう。自社の課題を発見したり発見した課題を分析したりして、最も成功が期待できる施策を見つけやすくするのがフレームワークの役割です。
フレームワークを自社のマーケティングに導入することで、以下のような項目を達成できるようになります。
- 自社の強みや課題を把握しやすくなる
- 競合他社の強みや課題も発見しやすくなる
- 市場の規模やターゲット顧客のニーズが把握しやすくなる
以上のような項目を達成した結果、自社に最適なマーケティング施策が見つかるというわけです。
マーケティングに効果的なフレームワーク5選
フレームワークには、市場分析に活用できるものや自社の現状を確認できるものなどがあります。得意とする項目が異なりますので、ここでは特徴別に分けてフレームワークを5つ紹介します。
マクロ的な視点から市場を分析するのに効果的なフレームワーク
- PEST分析
- SWOT分析
ミクロ的な視点から市場を分析するのに効果的なフレームワーク
- 3C分析
自社を取り巻く外部環境に焦点を当てて分析するフレームワーク
- 5F分析(ファイブフォース分析)
自社に適切な市場を見つけるのに役立つフレームワーク
- STP分析
それぞれの特徴を捉えると、自社に必要なフレームワークを見つけやすくなります。具体的に確認していきましょう。
①PEST分析
PEST分析は、マクロ的な視点から市場を分析するのに効果的なフレームワークです。PESTとは、Politics(政治)・Economy(経済)・Society(社会)・Technology(環境)という4つの単語の頭文字であり、市場をマクロ的な視点から分析するために用いられます。
PEST分析は、ビジネスを新しく展開したいときに役立ちます。政治や社会情勢、経済の状況や環境の変化といった項目を分析することで、マーケティング戦略の立案にも効果的です。
一方、同じ業界にいる競合他社やターゲットユーザーといったミクロな視点からの分析は行えない点には注意してください。
4項目の主な内容がこちらです。
- Politics(政治)~政治的項目(法律や条例、規制や税制など)
- Economy(経済)~経済的項目(GDPや金利の影響など)
- Society(社会)~社会的項目(人口動態、流行、世論など)
- Technology(環境)~技術的項目(インフラや環境のトレンドなど)
政治や経済といった自社の企業努力だけでは変革がむずかしい項目について考察できる点が、PEST分析の大きな特徴といえます。
②SWOT分析
SWOT分析は、マクロ的な視点から市場を分析するのに効果的なフレームワークです。SWOTとは、Strength(強み)・Weakness(弱み)・Opportunity(機会)・Threat(脅威)という4つの単語の頭文字であり、4項目は「プラス要因」「マイナス要因」に分けられています。
4項目の主な内容がこちらです。
<プラス要因>ビジネスの成功を期待できる要因のこと
- Strength(強み)~自社が持つ性質の中で、得意分野や競合他社より優れている性質。目標達成に大きく貢献するもの
- Opportunity(機会)~社会や市場の変化といった目標達成に貢献するもの
<マイナス要因>ビジネスの成功を妨げる要因のこと
- Weakness(弱み)~自社が持つ性質の中で、苦手分野や競合他社より劣っている性質。目標達成の妨げになるもの
- Threat(脅威)~社会や市場の変化の中で目標達成の妨げになるもの
SWOT分析を利用すると、現在進行形でビジネスを展開している業界において、「自社の強みや弱みとは何か?」「業界にどのようなビジネスチャンスがあるか?」「売上を伸ばしていく上でどのような脅威があるか?」といった内容を具体的に考察できるでしょう。
③3C分析
3C分析は、ミクロ的な視点から市場を分析するのに効果的なフレームワークです。市場におけるさまざまな情報を、Customer(市場や顧客)・Competitor(競合)・Company(自社)という3つの項目に分けて考察します。
3C分析では、PEST分析のように自社を取り巻く環境をマクロ的視点から見ることは行いません。「市場の規模」「競合他社の状況」といった、現在の自社が直面している状況を細かく見ていくことで、業界における自社の立ち位置や強み・弱みを分析していく手法といえます。
3項目の主な内容がこちらです。
- Customer(市場や顧客)~ビジネスを展開している業界の規模、ターゲット顧客のニーズなど
- Competitor(競合)~競合他社の特徴、業界のシェア率、商品やサービスの強みなど
- Company(自社)~自社の経営理念、保有している資産、提供している商品やサービスの強みなど
3C分析では、政治や社会情勢といった大きなトレンドの分析は行わない分、現在のビジネスと密接に関わりのある情報を分析できる点が大きな特徴です。
④5F(ファイブフォース)分析
5F(ファイブフォース)分析は、自社を取り巻く外部環境に焦点を当てて分析するフレームワークです。5つの外部の脅威(フォース)を分析することで、ビジネスを展開している業界・市場を分析して、戦略の方向性を定めるのに役立てます。
5つの脅威とは、以下の内容です。
- 既存の競合他社
- 新規参入企業
- 買い手の交渉力
- 売り手の交渉力
- 代替品の存在
上記の項目はいずれも自社の外部にある情報です。そのため外部環境を客観的に分析したい場合に5F分析を活用しましょう。さらにPEST分析やSWOT分析などの別の分析手法を用いれば、より多角的な視点から市場や自社の状況を分析できます。
⑤STP分析
STP分析とは、Segmentation(セグメンテーション)・Targeting(ターゲティング)・Positioning(ポジショニング)という項目からなるフレームワークです。
以下の順番で分析を進めていきます。
- Segmentation(セグメンテーション)~市場を細分化する
- Targeting(ターゲティング)~狙いたい市場を明確にする
- Positioning(ポジショニング)~自社の立ち位置を決める
ビジネスを成功させるためには、自社が提供する商品やサービスをターゲット顧客に届けることが大切です。そのためには競合他社に負けない市場を選ぶのが近道です。
そこでSTP分析では、まずセグメンテーションによって市場を細かく分けて、自社の強みを生かせる市場を見つけやすくします。
続いてターゲティングによって、自社の成功が期待できる市場を明確に。そして、ポジショニングによって市場の中で自社が有利になるポジションを見つけていき、ビジネスの成功確率を上げるのです。
STP分析を活用すると、顧客のニーズの把握、自社製品の強み、競合他社の強みなどを把握できるようになるため、最適なマーケティング戦略の立案が可能になるでしょう。
自社に合ったフレームワークを導入してマーケティング施策を最適化する
フレームワークを活用すると、効率的に自社の課題を分析できるようになり最適なマーケティング施策を立案しやすくなります。
しかし注意点が1つあります。それはフレームワークの活用を一番の目的にしてはいけないということ。フレームワークの活用が目的になると、フレームワークの導入だけで満足してしまうかもしれません。
フレームワークはあくまで目的達成の手段と捉えましょう。自社に合ったフレームワークを導入してマーケティング施策を最適化させてください。
フレームワークは組み合わせて利用することも可能です。本記事を参考にフレームワークの得意とする分野を確認して、より効果的にフレームワークを活用しましょう。
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