「現代のマーケティングは、データありき」
そのような視点を持ちながらも、自社に同調する人材がいなくてお困りではないでしょうか。
自らもデータ主導で事業を展開したいと考えているけれど、どうやったら良いか迷っている。その迷いを解消し、データ主導で展開できるマーケティング手法があります。
この記事では、データドリブンマーケティングについて、注目される理由や実践方法などを解説します。また、実践にあたっての注意点や大切なポイントなども。Webマーケティングをデータ主導で取り組みたいと検討中の中小企業経営者の方は、ぜひお役立てください。
データドリブンマーケティングの概念
「データが重要だとは常に考えている」という経営者は少なくありません。
では、データドリブンマーケティングの概念を理解しているのでしょうか。データドリブン(Data Driven)は、直訳すると「データ駆動」のことをあらわします。
マーケティングと合わせて表現すると、データ主導のもとで打ち出すマーケティングです。
データドリブンマーケティングが注目される理由
データドリブンマーケティングが注目され始めた理由は、企業の扱う情報量が増えたことではないでしょうか。インターネット環境の整備やスマートフォンの普及は、消費者とのコミュニケーション手段を変えました。企業は、コミュニケーションで得た消費者情報をデータ化します。消費者の行動や属性データなどから次の施策を打ち出せるようになりました。
これら収集できるデータ量が増えてきただけではなく、非対面のアプリを介したサービスが台頭してきたことも追い風となっています。企業は、POS(販売時点情報管理)レジから得られる消費行動データや、アプリを介した位置情報データなどから、より個人の属性に近づいた訴求ができるようになりました。
そのような時代の流れとともに、データ主導で打ち出すマーケティングの必要性が高くなり企業から注目されている状況です。
2020年に総務省が発表している企業が活用するデジタルデータの効果は、マーケティングの分野において61%の企業が(総合的に)効果があったと示しています。
データ活用の効果 | マーケティング分野 |
まったく効果がなかった | 0.8% |
あまり効果がなかった | 7.3% |
どちらでもない | 31.0% |
多少効果があった | 48.1% |
非常に効果があった | 12.9% |
出典:総務省「情報通信白書令和2年版|5Gが促すデジタル変革と新たな日常の構築」
データドリブンであることのメリット
企業のマーケティング活動がデータドリブンであることは、いくつかのメリットをもたらします。
客観的なデータで施策を打ち出せる
データドリブンマーケティングは、客観的なデータを使って施策が打ち出せます。客観的であることは、自社にとって都合の良い結果とは限りません。主観的な判断に委ねる体制からの脱却もできます。
主観的な判断の場合は、意思決定者の意見が強くなりがちです。しかし、データ主導であればデータがもたらした結果を軸に判断します。そのため、効果測定が客観的な見解で評価できます。
定量的な判断で業務効率を改善できる
データ主導は、感覚的な判断ではなく定量的な判断で施策を立てられます。定量的な判断となるため、答えを模索する必要がありません。マーケティング担当者は、データを基準に進められることから効率よく業務に取り組めます。定量的な判断ができる点が、業務効率の改善にもつながるでしょう。
先手に出られ競争優位に立てる
データドリブンマーケティングは、データから将来を見据えた施策が立てられます。データ主導で施策を打ち出すため、感性重視の施策より方向性を可視化できるでしょう。
感性重視の施策は、感覚的な面に頼るため計画どおりに進みません。データ主導の場合は、必要なデータさえ揃そろえば施策を実行できます。そのため、データ主導は考える時間を短縮して、先手に出ることが可能です。競合との競争では、優位な立場で施策を実行できます。
意思決定が迅速になりROIの向上が期待できる
組織の戦略実行を減速させる要因は、意思決定者の判断に要する時間です。意思決定者は、いままでの経験や感覚で施策を捉える可能性があります。そのような環境では、意思決定が遅くなり、競争優位性を維持できなくなるでしょう。
データドリブンマーケティングは、データを軸に決定するため、意思決定者の感覚などを参考にしません。そのため、データの変化に連動した施策実行を実現できます。結果的に迅速な意思決定が定着し、施策実行の精度が上がれば施策への投資コストも抑えられROI向上にも期待できるでしょう。
データドリブンマーケティングの実践
実際の現場では、どのような手順でデータドリブンマーケティングに取り組めば良いでしょうか。実践の手順について解説します。
KPI設定
データドリブンに限られたことではありませんが、施策立案では目標設定から始めます。目標設定を論理構造で作成するKPI設定を使います。KPI設定では、事業目標を明確にして小さな取り組みまで落とし込むことが大切です。
また、小さな取り組みは抽象的ではなく、定量的に判断できる数値データの必要があります。たとえば、WebマーケティングであればWebサイトのアクセス数や広告のクリック率、資料請求のコンバージョン数などです。これらの指標を顧客の行動心理プロセスに沿ってKPIツリーで作成します。
関連記事:インサイドセールスに効果的なKPI設定の方法とポイントを具体的に解説
データ収集
KPIの指標となる各要素が設定できた場合、分析対象となるデータの収集が必要です。データ収集は、それぞれの目的に応じたデータ収集ができます。
データ収集ツール | 収集できるデータ |
Googleアナリティクス (Web解析ツール) | ・Webサイトの訪問ユーザー数 ・Webサイトの新規ユーザー数 ・Webサイトのセッション数 ・ページビュー数 ・平均ページ滞在時間 ・直帰率・離脱率など |
Googleサーチコンソール (Web解析ツール) | ・Webサイトの検索表示回数 ・Webサイトの検索順位推移 ・Webサイトの検索クリック数 ・Webサイトの検索でのクリック率など |
マーケティングオートメーションツール (マーケティング業務自動化ツール) | ・見込み客の態度変容データスコア ・Webページでの行動データ ・メール開封率 ・購買フェーズごとの顧客データ ・既存顧客データなど |
CRM (顧客関係管理ツール) | ・既存顧客データ ・見込み客データ ・休眠客データなど |
SFA (営業プロセス進捗管理 ・営業活動支援ツール) | ・顧客データ ・案件データ ・営業担当者データ ・行動データなど |
BIツール (企業データ収集、蓄積、分析 報告ツール) | ・過去の売上データ ・既存顧客データ ・販売データ ・過去の天候データなど |
これらデータ収集に役立つツールは、必要とするデータを効率よく収集できます。複数のツールからデータを収集すると、分析データが重複する可能性があります。外部ツールとシームレスに連携のできるBIツールを活用した一元管理も必要です。
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関連記事:MAツール比較!どのMAツールを選ぶべき?徹底解説します
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データ分析
収集したデータは、データ主導を基準に分析します。データ分析では、データを基準にどのような仮説が立てられるか、がポイントです。たとえば、次の視点で顧客ニーズを捉えると施策の方向性が見えてきます。
- データを大きさで捉える
- 類似データとの比較する
- データを時系列で推移する
- データを分解する
- データを連結させる
収集したデータは、あらゆる角度から確認することで、顧客行動の未来を予測する手掛かりがつかめるかもしれません。
仮説と検証でPDCAサイクルを回す
データ分析で立てた仮説は、そのまま何もしなければ机上の空論で終わってしまいます。仮説は、検証することで実証された施策となるでしょう。そのためには、実行と改善をくり返すことが必要です。
収集した既存データは、仮説と検証をくり返すことが実行と改善につながります。成果が出なければ、施策を立て直すことも大事です。このように、施策は仮説と検証でPDCAサイクルを回し、実証された施策へと進化させます。データドリブンマーケティングは、勘や経験値に頼らず、データ主導で仮説と検証を行うため高速にPDCAサイクルが回せます。
データドリブンマーケティングの実践における3つの注意点
企業が準備不足のまま、データドリブンマーケティングを実践することは、実践途中で壁にあたるかもしれません。そのため、データドリブンマーケティングの実践では、注意点を理解しておく必要があります。
KPIが不十分なままだとデータを生かせない
データドリブンマーケティングの実践は、KPIの精度が十分であることが求められます。KPIツリーは、感覚で各要素を設定するものではありません。すべての要素が前後する要素と定量的な数値データでつながっています。KPIは、下流要素が目標数値に到達することで上流へとつなぐ仕組みを破綻させないことが大切です。
KPIツリーの破綻は、効果を得られない施策の早急な見直しで改善できます。実際の現場では、KPIで設定した施策が目標数値に到達しても上流要素の数値を高められないことはよくあることです。
KPIは、データでつないだとしても、そのデータが実証されていなければ最初からうまくいくとは限りません。そのため、実証済みのデータと未実証のデータを融合させたKPIでは、不十分だと考えておきましょう。
意思決定者の理解がなければ成功しない
データ主導のマーケティングで成功するには、意思決定者の理解を得ることが大事です。意思決定者がデータを重要視していなければ、施策の進捗を妨げる可能性があります。現場のマーケティング担当者がデータ主導で施策の精度を高めても、意思決定者が勘や経験を頼りにしている状態では足並みがそろいません。
実証済みの施策がお蔵入りになることを避けるため、経営層も含めたデータドリブンマーケティングへの理解を深める社内外の勉強会などが必要です。
データ収集のままで終わらせない
データドリブンマーケティングで注意すべき点は、目的を見失うことです。データドリブンマーケティングの実践は、いくつかの手順で進めます。その際、データ収集の段階で立ち止まってしまうと、その先にある可能性を見いだせなくなります。
データ収集は、分析してこそ効果を発揮するものです。データ収集のままで終わらせず先へ進むことを念頭に取り組みましょう。
データドリブンマーケティングを円滑にする2つの体制づくり
企業によっては、意思決定者や他部署の社員がデータ主導の施策立案の妨げとなることも考えられます。実証できた施策を生かすためには、組織の体制づくりが大切です。データドリブンマーケティングを円滑に進める場合は、体制を整える必要があります。
全社で実行する体制
企業の扱うデータは、全部門に影響するといっても過言ではありません。データ分析を目的に収集したデータは、顧客データに限らず仕入れや競合の状況など多岐にわたります。他部署から、「データ分析は関係ない」と判断されると部門単独の取り組みになってしまいます。
意思決定者がデータドリブンマーケティングを前向きに捉えているのであれば、トップダウンで全社一丸となることも大切です。データ主導のマーケティングに切り替えるのであれば、全社間を行き来できる体制づくりが求められます。そのためには、経営トップ直属の部門間連携のできるプロジェクトチームの構築などが考えられます。
データを正確に理解する体制
データドリブンマーケティングに向けた体制は、経営層が正しいデータ活用を理解することで成り立ちます。経営層がデータ主導の考え方に賛同していても、理解がともなっていなければどこかで判断を誤るかもしれません。
全社で実行する体制づくりであれば、正しいデータ活用のルールを共通認識する必要があります。そのため、一部の部署だけが単独で進めてしまうのではなく、分かりやすいデータで共有することも重要です。
まとめ
現代は、生活のあらゆる部分がデータとつながっています。そのため、データ主導のマーケティングが重要視されていることは自然の流れと判断できます。データドリブンマーケティングは、企業が都合よく進められるわけではありません。あくまでも客観的なデータを活用した第三者目線で取り組む必要があります。
また、データ主導で取り組むのであれば、全社共通認識で理解できるデータ活用を目指しましょう。組織全体がデータ主導で判断できるようになれば、施策の実証も高速で進められます。
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