長年にわたりサーバーOSの定番として広く利用されてきたCentOSが、2024年6月をもってCentOS 7のサポートを終了しました。CentOS 8は2021年末にすでにサポートが打ち切られており、CentOS Streamは従来のCentOSとは性質が異なるディストリビューションです。
「CentOSのサポートが切れたけど、どのOSに移行すればいいのか分からない」「Rocky LinuxとAlmaLinuxの違いが分からない」という声を多くの中小企業のIT担当者から耳にします。本記事では、CentOS終了の背景から、後継ディストリビューションの比較、そして具体的な移行手順まで網羅的に解説します。
Linuxの基本概念を理解している前提で進めますが、初めての方はまずそちらを確認してください。
CentOS終了の経緯と影響|なぜ移行が必要なのか
CentOSは、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)のソースコードを再構築した無料のディストリビューションとして、企業のサーバー環境で広く利用されてきました。RHELと高い互換性を持ちながら無料で使える点が、特にコストを重視する中小企業にとって魅力でした。
CentOS終了の背景
2020年12月、Red Hat社はCentOS 8のサポートを2021年末で打ち切り、今後は「CentOS Stream」に注力するという方針を発表しました。この決定はコミュニティに大きな衝撃を与えました。
CentOS Streamは、RHELの「下流(ダウンストリーム)」であった従来のCentOSとは異なり、RHELの「上流(アップストリーム)」に位置づけられるディストリビューションです。つまり、RHELに組み込まれる前のパッケージをテストする役割を担うため、従来のCentOSほどの安定性は保証されていません。
サポート終了を放置するリスク
サポートが終了したCentOSをそのまま使い続けることには、深刻なリスクがあります。
セキュリティの脆弱性:新たに発見される脆弱性に対するパッチが提供されません。攻撃者は既知の脆弱性を狙って攻撃を仕掛けるため、放置すればサーバーが侵害される可能性が高まります。
ソフトウェアの互換性問題:新しいバージョンのソフトウェアやミドルウェアがサポート対象外になり、インストールや動作に問題が生じます。
コンプライアンス違反:業界によっては、サポート切れのOSを使用すること自体がセキュリティ基準に違反する場合があります。
障害時のサポート不在:問題が発生した際に、公式のバグ修正やコミュニティのサポートを受けられません。
移行は「やった方がいい」ではなく「やらなければならない」レベルの課題です。
CentOS後継ディストリビューションの全体像
CentOSの終了を受けて、複数の後継プロジェクトが立ち上がりました。代表的な選択肢を整理します。
Rocky Linux
CentOSの共同創設者であるGregory Kurtzer氏が立ち上げたプロジェクトです。「CentOSが本来あるべきだった姿」を目指しており、RHELとのバイナリ互換を重視しています。名前は、CentOSのもう一人の共同創設者であるRocky McGaugh氏に由来しています。
運営主体:Rocky Enterprise Software Foundation(RESF)
最新安定版:Rocky Linux 9.x(2026年3月現在)
サポート期間:各メジャーバージョンにつき約10年
AlmaLinux
CloudLinux社が中心となって立ち上げたプロジェクトです。同社はこれまでもRHELベースのCloudLinux OSを開発・提供しており、エンタープライズLinuxの知見が豊富です。
運営主体:AlmaLinux OS Foundation
最新安定版:AlmaLinux 9.x(2026年3月現在)
サポート期間:各メジャーバージョンにつき約10年
その他の選択肢
CentOS Stream:RHELの上流に位置するため、安定性よりも最新機能を重視する環境向けです。本番サーバーでの利用は慎重に検討する必要があります。
Oracle Linux:Oracle社が提供するRHEL互換ディストリビューションです。無料で利用可能ですが、有償サポートとの組み合わせが前提の面もあります。
Ubuntu Server:RHEL系とは異なるDebian系のディストリビューションです。CentOSからの移行はコマンド体系が大きく変わるため工数が増えますが、将来的な選択肢として検討する価値はあります。Ubuntu Serverの構築方法はUbuntu Server初期設定ガイドで解説しています。
Rocky LinuxとAlmaLinuxの詳細比較
中小企業がCentOSからの移行先を選ぶ際、最も比較されるのがRocky LinuxとAlmaLinuxです。両者の違いを複数の観点から詳しく比較します。
互換性の方針
Rocky Linux:RHELとの「バグまで含めた1:1の互換性」を目標に掲げています。バイナリレベルでの完全互換を目指すため、CentOSで動作していたアプリケーションがそのまま動く可能性が高い傾向があります。
AlmaLinux:2023年にRed HatがRHELのソースコード公開方法を変更した際、AlmaLinuxは「ABI(Application Binary Interface)互換」に方針を転換しました。これは完全なバイナリ一致ではなく、アプリケーションレベルでの互換性を保証するアプローチです。実用上はほとんど差がありませんが、厳密な互換性を求める場合はRocky Linuxが有利です。
コミュニティとガバナンス
Rocky Linux:コミュニティ主導のプロジェクトです。特定の企業に依存しない運営体制を重視しており、CentOSがRed Hatの方針変更で終了に至った教訓を活かしています。
AlmaLinux:CloudLinux社の支援を受けつつ、独立した財団によって運営されています。企業のバックアップがあるため、資金面での安定性があります。
移行ツールの充実度
両ディストリビューションとも、CentOSからの移行ツールを公式に提供しています。
Rocky Linux:migrate2rocky スクリプトを提供。CentOS 8/CentOS StreamからRocky Linuxへのインプレース移行が可能です。
AlmaLinux:almalinux-deploy スクリプトを提供。同様にインプレース移行に対応しています。また、ELevateプロジェクトにより、CentOS 7からAlmaLinux 8/9へのメジャーバージョンアップグレードにも対応しています。
パフォーマンスと安定性
基本的にどちらもRHELベースであるため、パフォーマンスに大きな差はありません。ベンチマークテストでも有意な違いは報告されていません。安定性についても、両者ともエンタープライズ品質を維持しています。
移行方法の選択|インプレース移行とクリーンインストール
CentOSからの移行には、大きく2つのアプローチがあります。
インプレース移行(既存環境を変換)
既存のCentOS環境のパッケージを入れ替えて、Rocky LinuxやAlmaLinuxに変換する方法です。
メリット:
- 既存の設定やデータをそのまま引き継げる
- ダウンタイムを最小限に抑えられる
- 作業工数が比較的少ない
デメリット:
- 既存環境の問題をそのまま引き継いでしまう可能性がある
- まれにパッケージの依存関係で問題が発生する場合がある
- CentOS 7からの移行は直接的にはできない(ELevateを除く)
クリーンインストール(新規構築して移行)
新しいサーバーにRocky LinuxまたはAlmaLinuxをクリーンインストールし、旧環境からデータや設定を移行する方法です。
メリット:
- クリーンな環境から始められる
- 旧環境の技術的負債を持ち込まない
- 構成を見直す良い機会になる
デメリット:
- 新環境の構築と設定の再現に時間がかかる
- 並行稼働期間のリソースが必要
- 設定の移行漏れのリスクがある
一般的に、CentOS 8やCentOS Streamからの移行であればインプレース移行が効率的です。CentOS 7からの移行や、長年運用してきた環境の場合はクリーンインストールを推奨します。
Rocky Linuxへのインプレース移行手順
ここでは、CentOS 8からRocky Linux 8への移行手順を解説します。本番環境で実施する前に、必ずテスト環境で検証してください。
事前準備
移行前に以下の準備を行います。
1. 完全なバックアップの取得
システム全体のバックアップを取得します。万が一移行に失敗した場合にロールバックできる状態を確保してください。バックアップの手法についてはLinuxのバックアップとリストアガイドを参照してください。
2. 現在の環境を記録
インストール済みパッケージの一覧、ネットワーク設定、サービスの稼働状況を記録しておきます。
rpm -qa > /root/installed-packages.txt
ip addr > /root/network-config.txt
systemctl list-units --type=service --state=running > /root/running-services.txt
3. システムの最新化
sudo dnf update -y
すべてのパッケージを最新の状態にしてから移行を開始します。
移行スクリプトの実行
Rocky Linuxの公式移行スクリプトをダウンロードして実行します。
curl -O https://raw.githubusercontent.com/rocky-linux/rocky-tools/main/migrate2rocky/migrate2rocky.sh
chmod +x migrate2rocky.sh
sudo bash migrate2rocky.sh -r
-r オプションは、移行完了後にシステムを再起動することを指示します。スクリプトの実行には通常30分から1時間程度かかります。
移行後の確認
再起動後、以下のコマンドで移行が正しく完了したことを確認します。
cat /etc/os-release
Rocky Linuxの情報が表示されれば移行は成功です。続いて、サービスの稼働状況を確認します。
systemctl list-units --type=service --state=running
移行前に記録したサービス一覧と比較し、必要なサービスがすべて稼働していることを確認してください。systemctlを使ったサービス管理の知識があると、確認作業がスムーズに進みます。
AlmaLinuxへのインプレース移行手順
AlmaLinuxへの移行手順も基本的な流れは同様です。
almalinux-deployスクリプトの使用
事前準備はRocky Linuxの場合と同じです。バックアップの取得と環境記録を必ず行ってください。
curl -O https://raw.githubusercontent.com/AlmaLinux/almalinux-deploy/master/almalinux-deploy.sh
sudo bash almalinux-deploy.sh
スクリプトが完了したら再起動します。
sudo reboot
再起動後、cat /etc/os-release でAlmaLinuxに切り替わっていることを確認します。
ELevateを使ったCentOS 7からの移行
CentOS 7を使用している場合、直接的なインプレース移行ツールの選択肢は限られますが、AlmaLinuxが提供するELevateプロジェクトを使えば、CentOS 7からAlmaLinux 8へのアップグレードが可能です。
ただし、メジャーバージョンをまたぐアップグレードは複雑なため、重要なシステムではクリーンインストールと段階的なデータ移行を推奨します。
移行後の運用ポイント
OSの移行が完了した後も、安定した運用のために注意すべきポイントがあります。
パッケージ管理の継続
Rocky LinuxとAlmaLinuxは、CentOS 8と同じくdnfパッケージマネージャーを使用します。コマンド体系はCentOSと同一なので、既存の運用手順をほぼそのまま引き継げます。パッケージ管理の基本はLinuxパッケージマネージャーガイドで確認できます。
sudo dnf update -y(定期的な更新)
sudo dnf install package-name(パッケージのインストール)
セキュリティ対策の確認
移行後、以下のセキュリティ設定が正しく引き継がれているか確認します。
ファイアウォール:firewall-cmd --list-all でルールを確認
SELinux:getenforce でステータスを確認
SSH設定:/etc/ssh/sshd_config の設定内容を確認
ファイアウォールの詳細な設定方法はLinuxのファイアウォールとセキュリティで解説しています。
監視とログ管理
移行直後は特に注意深くログを監視し、異常がないか確認します。
journalctl -f(リアルタイムログ監視)
journalctl --since "1 hour ago" --priority err(直近のエラーログ確認)
ログ管理の運用ノウハウはLinuxのログ管理ガイドを参考にしてください。パフォーマンスに問題がないかはLinuxのパフォーマンス監視ガイドで紹介しているツールで確認できます。
アプリケーションの動作検証
OS移行後にアプリケーションが正しく動作するか、網羅的にテストを行います。特に以下の点に注意してください。
Webアプリケーション:全ページの表示確認、フォームの送信テスト
データベース:接続確認、クエリの実行速度
バッチ処理:cronジョブの実行確認
外部連携:API通信やメール送信の確認
まとめ|CentOSからの移行は計画的に進めよう
CentOSのサポート終了は避けて通れない課題ですが、Rocky LinuxやAlmaLinuxという優れた後継ディストリビューションが存在するおかげで、移行のハードルは決して高くありません。
改めて、選択のポイントを整理します。
Rocky Linuxを選ぶべきケース
- RHELとの厳密なバイナリ互換を求める場合
- 特定企業に依存しないコミュニティ主導のプロジェクトを支持する場合
- CentOSの理念を引き継ぐディストリビューションを求める場合
AlmaLinuxを選ぶべきケース
- CentOS 7からの移行でELevateツールを活用したい場合
- 企業のバックアップによる安定した開発体制を重視する場合
- ABI互換で十分と判断できる場合
どちらを選んでも、CentOSからの移行はスムーズに行えます。重要なのは、移行を後回しにせず、計画を立てて着実に進めることです。
移行が完了したら、サーバーのセキュリティ強化やパフォーマンスチューニングにも取り組みましょう。Linuxのセキュリティ強化ガイドやLinuxカーネルチューニングの基礎が次のステップとして参考になります。また、基本的なLinuxコマンドの実践ガイドを手元に置いておくと、日常の運用作業が効率化できます。
関連記事
AWS CloudFrontでサイト高速化|CDN設定からキャッシュ戦略まで実践解説
AWS CloudWatchで監視・アラート設定|運用担当者のための実践ガイド
AWS CodePipelineでCI/CD構築|コード変更から本番デプロイまでの自動化
AWS Cost Explorerでコスト可視化|ムダを見つけて月額費用を削減する実践術
AWS ECS/Fargateでコンテナ運用|Docker→本番デプロイの実践ガイド
AWS IAMのベストプラクティス|最小権限の原則を実務で実装する方法
AWS RDSの実務ガイド|データベース構築・バックアップ・パフォーマンスチューニング
AWS S3の実務活用ガイド|バケット設計・アクセス制御・コスト最適化の実践