システム開発を検討する中で「GraphQL」と「REST API」という2つの選択肢を耳にしたけれど、どちらを選べばいいのかわからない――そんな方は多いのではないでしょうか。
この記事では、GraphQLとREST APIの違いを専門知識がなくてもわかるように解説し、自社のビジネスに最適なAPIの選び方をお伝えします。
GraphQLとREST APIの基本を理解しよう
システム開発やWebサービスの構築を検討する際、「API」という言葉を耳にする機会が増えています。特に最近では「GraphQL」という新しい技術が注目を集めていますが、従来の「REST API」との違いがわからず、どちらを選べばよいのか迷っている中小企業のIT担当者や経営者の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、GraphQLとREST APIの違いを、技術的な専門知識がない方にもわかりやすく解説します。それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解することで、自社のビジネスに最適な選択ができるようになります。
APIとは何か?基本的な役割
APIとは、異なるシステム同士がデータをやり取りするための窓口です。認証にはAPI連携でよく使われるOAuth2.0の仕組みを理解しておくと役立ちます。日常業務に例えるなら「受付窓口」のようなもので、顧客管理システムから注文データを取得したいとき、APIという窓口を通じて「この顧客の注文履歴を教えてください」とリクエストすると、適切な形式でデータが返ってきます。
中小企業の実務では、以下のような場面でAPIが活用されています:
- ECサイトと在庫管理システムの連携(API設計の基本はREST API設計のベストプラクティスを参照)
- 会計ソフトと銀行口座の自動連携
- 予約システムとカレンダーアプリの同期
- LINE公式アカウントと顧客管理システムの連携
APIを活用することで、バラバラに動いていたシステムを連携させ、手作業でのデータ入力を削減できます。
REST APIの仕組みと特徴
REST API(Representational State Transfer API)は、現在最も広く使われているAPIの設計方式です。2000年代初頭から普及し、Web技術の標準的な手法として定着しています。
REST APIの特徴は、URLごとに決められたデータを取得するという明確でシンプルな構造です:
GET /customers→ 顧客一覧を取得GET /customers/123→ ID123の顧客情報を取得POST /customers→ 新しい顧客を登録PUT /customers/123→ ID123の顧客情報を更新DELETE /customers/123→ ID123の顧客を削除
URLとHTTPメソッド(GET、POST、PUT、DELETEなど)の組み合わせで操作を表現します。レストランのメニューのように、「このURLを選べば、この情報が返ってくる」というイメージです。理解しやすく、多くの開発者が慣れ親しんでいるため、外部ベンダーに依頼する際もコミュニケーションが取りやすいという利点があります。
GraphQLの仕組みと特徴
GraphQLは、Facebookが2012年に開発し、2015年に公開した比較的新しいAPI技術です。モバイルアプリの開発において、「必要なデータだけを効率的に取得したい」というニーズから生まれました。
GraphQLの最大の特徴は、欲しいデータの形を自分で指定できることです。REST APIが「決められたメニューから選ぶ」方式だとすれば、GraphQLは「オーダーメイドで注文できる」方式といえます。
たとえば、顧客情報を取得する際:
{
customer(id: 123) {
name
email
orders {
orderDate
totalAmount
}
}
}
このように必要な項目だけを指定してリクエストできます。また、すべてのリクエストが単一のエンドポイント(通常は /graphql)に送られる点も特徴的です。
GraphQLが注目されている背景には、現代のWebアプリケーションの複雑化があります。スマートフォンアプリやSPA(Single Page Application)の普及により、一つの画面で多様なデータを表示するケースが増えました。REST APIでは複数回の通信が必要になり表示速度が遅くなる問題がありましたが、GraphQLなら1回のリクエストで取得できます。
GraphQLとREST APIの主な違い
GraphQLとREST APIの違いを理解することで、自社のシステムにどちらが適しているか判断できるようになります。実務に影響する主要な違いを解説します。
データ取得の方法:エンドポイントと柔軟性
REST APIの場合は、取得したいデータの種類ごとに異なるエンドポイント(URL)が用意されています。各エンドポイントの役割が明確で理解しやすい反面、複雑な情報を表示する際には複数のエンドポイントにアクセスする必要があり、通信回数が増えます。
GraphQLの場合は、すべてのリクエストが単一のエンドポイントに送られます。1回のリクエストで関連するすべてのデータを取得でき、フロントエンド開発者が必要なデータを柔軟に取得できます。ただし、「何をリクエストできるのか」を理解するために、スキーマ(データ構造の定義)を学ぶ必要があります。
| 比較項目 | REST API | GraphQL |
|---|---|---|
| エンドポイント数 | 複数(機能ごと) | 単一 |
| データ取得の柔軟性 | 低い(決められた形式) | 高い(必要な項目を指定) |
| 理解のしやすさ | わかりやすい | スキーマの理解が必要 |
| 通信回数 | 複数回になりがち | 1回で完結しやすい |
Over-fetchingとUnder-fetchingの問題
REST APIでは、エンドポイントが返すデータの形式が固定されているため、必要のないデータまで取得してしまう(Over-fetching)ことがよくあります。顧客一覧画面で「顧客名」と「メールアドレス」だけを表示したい場合でも、住所や電話番号など不要なデータまで取得してしまい、通信量が増え、表示速度が遅くなる可能性があります。
逆に、1つのエンドポイントでは情報が足りず、複数回リクエストが必要になる(Under-fetching)こともあります。顧客詳細画面で「顧客情報」と「最近の注文履歴」を表示したい場合、2回の通信が必要になり、画面の表示が遅くなります。
GraphQLでは、必要なデータだけを指定して取得できるため、これらの問題を解決できます。モバイルアプリを提供している場合やデータ量が多いシステムでは、GraphQLの効率性が大きなメリットになります。
型定義とドキュメント管理
REST APIには標準的な型定義の仕組みが組み込まれていないため、APIの仕様書を手作業で作成・更新する必要があります。ドキュメントとコードが一致しないことがあり、新しいメンバーが仕様を理解するのに時間がかかります。
GraphQLにはスキーマ(型定義)が必須で、「どんなデータが存在し、どんな操作ができるか」を定義します。この定義により、ドキュメントが自動生成され、入力チェックが自動化され、開発ツールの補完機能が使えます。属人化を防ぎ、引き継ぎをスムーズにする効果が期待できます。
エラーハンドリングの違い
REST APIでは、HTTPステータスコード(200 OK、404 Not Found、500 Internal Server Errorなど)を使ってエラーを表現します。ステータスコードを見れば一目でエラーの種類が判断でき、Webブラウザや各種ツールも標準的に扱えます。
GraphQLでは、ほとんどの場合HTTPステータスコードは200を返し、レスポンスの中のerrorsフィールドでエラー内容を伝えます。この方式の利点は、部分的なエラーにも対応できることです。複数のデータを同時にリクエストした際、一部が成功して一部が失敗した場合でも、適切に結果を返せます。
REST APIのメリットと適した場面
REST APIは長年の実績があり、多くのシステムで採用されています。中小企業が導入を検討する際、どのような場面で力を発揮するのかを見ていきましょう。
REST APIの主なメリット
シンプルで理解しやすい構造が最大の強みです。URLとHTTPメソッドの組み合わせという、Webの基本的な仕組みを活用しているため、新しく入ったスタッフへの説明がしやすく、外部ベンダーとのコミュニケーションがスムーズです。
豊富なツールとリソースも大きな利点です。Postman(APIのテストツール)、Swagger/OpenAPI(API仕様書の自動生成)など、開発ツールが充実しています。インターネット上に情報が豊富にあるため、問題が発生したときも解決策を見つけやすくなっています。
HTTPの標準的なキャッシュの仕組みをそのまま活用できるため、サーバーの負荷を軽減でき、表示速度が向上します。特に、商品一覧や会社情報など、頻繁に変更されないデータを扱う場合に効果的です。
段階的な拡張がしやすい点も中小企業にとって重要です。新しいエンドポイントを追加するだけで機能拡張でき、既存の機能に影響を与えにくい構造です。小さく始めて徐々に育てていく、という中小企業の成長フェーズに適しています。
REST APIが向いている場面
- シンプルなCRUD操作(登録・取得・更新・削除)が中心のシステム
- 社内の管理画面や基幹システム
- 外部サービスとの連携(多くの外部APIはREST形式)
- IT人材が限られており、シンプルな構成を優先したい場合
REST APIの注意点
複雑な情報を表示する際には何度も通信が発生し、画面の表示が遅くなることがあります。また、必要以上のデータを取得してしまい、通信量が増加する可能性があります。システムを改善していく過程で、APIの仕様を変更する際には、互換性を保つためにバージョン管理が必要になり、開発・保守の負担が増加します。
GraphQLのメリットと適した場面
GraphQLは比較的新しい技術ですが、特定の状況では大きな力を発揮します。中小企業がGraphQLを検討する際のポイントを見ていきましょう。
GraphQLの主なメリット
1回のリクエストで複雑なデータを取得できる効率性が最大の強みです。ECサイトのマイページで顧客情報・注文履歴・お気に入り商品・ポイント残高を表示する場合、REST APIでは4回の通信が必要ですが、GraphQLなら1回で完結します。画面の表示速度が向上し、モバイル環境でのユーザー体験が改善されます。
フロントエンド開発の柔軟性向上も重要なメリットです。既存のスキーマから必要なデータを自由に組み合わせられるため、バックエンドの対応待ちで開発が止まることがなく、フロントエンドとバックエンドの開発を並行して進められます。
ドキュメント自動生成により、ドキュメント作成の手間が不要になり、ドキュメントとコードの不一致がなくなります。新しいメンバーの学習コストが下がり、属人化を防げます。
強い型付けシステムにより、データの整合性が保たれ、バグを早期に発見でき、システムの安定性が向上します。
GraphQLが向いている場面
- モバイルアプリを提供している
- SPA(Single Page Application)を開発している
- 複雑なデータ構造を扱う
- 複数のクライアント(Webアプリ、モバイルアプリ、管理画面など)で同じAPIを使う
- フロントエンドとバックエンドを並行開発したい
GraphQLの注意点
習得に時間がかかるという課題があります。スキーマの設計方法、クエリの書き方など、学習が必要な要素が多く、REST APIに慣れた開発者でも一定の学習期間が必要です。
また、複雑なクエリを許可すると、サーバーに過度な負荷がかかる可能性があります。適切なクエリの深さ制限や複雑さの制限を設定する必要があります。
どちらを選ぶべき?選定のポイント
GraphQLとREST APIのどちらを選ぶべきかは、自社のシステムの特性や開発体制によって異なります。以下のポイントを参考に判断してください。
システムの規模と複雑さから考える
REST APIを選ぶべき場合:
- シンプルな業務システム(顧客管理、在庫管理など)
- データ構造が単純で、画面ごとの情報が独立している
- 段階的に機能を追加していく予定
GraphQLを選ぶべき場合:
- 複雑なデータの関連性がある(顧客→注文→商品→在庫など)
- 1つの画面で多様なデータを表示する
- モバイルアプリとWebアプリで同じAPIを使う
チームのスキルセットと学習コスト
REST APIを選ぶべき場合:
- IT人材が限られている
- 外部ベンダーに開発を依頼する
- 短期間でシステムを立ち上げたい
GraphQLを選ぶべき場合:
- 開発チームに学習意欲がある
- 中長期的な開発効率を重視する
- フロントエンドとバックエンドの分業体制がある
パフォーマンス要件とデータ構造
REST APIを選ぶべき場合:
- 主に社内の管理画面として使う
- ネットワーク環境が安定している
- キャッシュを活用したい
GraphQLを選ぶべき場合:
- モバイル環境での利用が中心
- 通信回数を最小限にしたい
- データの取得パターンが多様
両方を併用する選択肢
実は、REST APIとGraphQLはどちらか一方を選ばなければならないわけではありません。以下のような併用パターンも有効です:
- 社内の管理画面:REST API(シンプルで十分)
- 顧客向けモバイルアプリ:GraphQL(効率性重視)
- 外部サービス連携:REST API(標準的な形式)
自社の状況に応じて、最適な組み合わせを選択することが重要です。
中小企業がAPI選定で失敗しないために
API選定において、中小企業が陥りがちな失敗パターンと、その対策を紹介します。
よくある失敗パターン
流行に流されて過剰な技術を導入してしまうケースがあります。「GraphQLが最新だから」という理由だけで導入し、シンプルなシステムに対して複雑すぎる構成になってしまうことがあります。自社の業務規模や開発体制に合った「ちょうどいい」技術を選ぶことが重要です。
学習コストを軽視してしまうことも問題です。新しい技術の習得には時間がかかります。開発チームのスキルレベルや学習時間を考慮せず、納期に間に合わなくなるケースがあります。
将来の拡張性を考えずに設計してしまうと、後から機能追加が困難になります。最初から完璧を目指す必要はありませんが、ある程度の拡張性は考慮しておくべきです。
外部ベンダーに依頼する際の注意点
外部ベンダーに開発を依頼する場合、以下の点を確認してください:
- 実績と得意分野:REST APIとGraphQLのどちらに強みがあるか
- 提案の根拠:なぜその技術を勧めるのか、明確な理由があるか
- 運用・保守体制:開発後のサポート体制は整っているか
- ドキュメント整備:引き継ぎ可能な状態で納品されるか
「最新技術だから」という理由だけで提案するベンダーには注意が必要です。自社の課題を理解し、最適な解決策を提案してくれるパートナーを選びましょう。
自社に合った仕組みづくりのヒント
小さく始めて段階的に拡張するアプローチが有効です。最初から完璧なシステムを目指すのではなく、最小限の機能でスタートし、実際に使いながら改善していく方が成功しやすくなります。
現場の声を反映することも重要です。実際に使う担当者の意見を聞き、本当に必要な機能を見極めることで、無駄のないシステムが構築できます。
運用・保守まで考えることを忘れないでください。システムは作って終わりではなく、継続的な改善が必要です。運用フェーズでのサポート体制も含めて検討しましょう。
まとめ:自社に最適な選択を
GraphQLとREST APIは、それぞれに明確な強みがあります。GraphQLとREST APIの違いを理解した上で、自社のビジネス規模、開発体制、システムの複雑さに応じて選択することが重要です。
- シンプルな業務システムなら、理解しやすく実績豊富なREST APIが適しています
- 複雑なデータ構造やモバイルアプリなら、効率的なGraphQLが力を発揮します
- 両方を併用する選択肢も有効です
流行に流されず、自社の課題や規模に合った「ちょうどいい」システムを選ぶことが、成功への近道です。技術選定に迷った際は、実績のあるパートナーに相談することをお勧めします。
Harmonic Societyでは、中小企業向けの「ちょうどいい」業務システムを短期間・低コストで構築しています。AI活用により、従来の開発費の1/3〜1/2程度でのシステム構築が可能です。GraphQLとREST APIのどちらが適しているか、お客様のビジネスに最適なソリューションをご提案します。まずはお気軽にご相談ください。