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ノーコード開発とは?導入が進む背景と期待される効果
ノーコード開発とは、プログラミング知識がなくても、ドラッグ&ドロップなどの視覚的操作だけでアプリケーションを構築できる開発手法です。Kintone、Bubble、AppSheetなどのツールが代表的で、専門的なITスキルがなくても現場の担当者が自分たちで必要なシステムを構築できる点が最大の魅力です。
中小企業で導入が加速する3つの理由
中小企業でノーコードツールの導入が進む背景には、明確な社会的要因があります。
IT人材不足の深刻化が第一の理由です。経済産業省の調査によれば、2030年には最大79万人のIT人材が不足すると予測されています。中小企業が優秀なエンジニアを採用することは年々難しくなっており、「自社でシステムを開発・保守できる人材がいない」という課題は切実です。
既存システムの老朽化問題も無視できません。多くの企業が使用している基幹システムが老朽化し、2025年以降、年間最大12兆円の経済損失が生じる可能性があるとされています。しかし、システム刷新には莫大なコストがかかるため、「まずはノーコードで小さく始めたい」と考える企業が増えています。
さらに、コロナ禍によるデジタル化需要の急増も大きな要因です。テレワークの普及により、紙やExcelでの業務管理の限界が露呈し、「どこからでもアクセスできるクラウドシステム」への需要が高まりました。
導入時に期待される主な効果
ノーコードツール導入時に多くの企業が期待するのは、Excel管理からの脱却です。複数人での同時編集、バージョン管理、データの一元化といった課題を解決できます。
また、業務の可視化と標準化も重要なメリットです。属人化していた業務フローをシステム化することで、業務の流れが見えるようになり、新人教育の負担も軽減されます。
開発コストと期間の削減は経営層にとって魅力的です。従来数百万円かかるシステムが月額数万円のサブスクリプション費用だけで利用でき、初期投資を抑えたスモールスタートが可能になります。
ノーコード開発の5つの限界
ノーコードツールは便利ですが、万能ではありません。導入後に「こんなはずじゃなかった」と後悔しないために、事前に理解すべき限界があります。
【限界①】複雑な業務フローへの対応困難
ノーコードツールの最大の限界は、自社特有の複雑な業務フローに対応できないことです。
例えば、以下のような要件の実装は困難です。
- 多段階の承認フロー:申請者の部署や金額によって承認ルートが変わる複雑な分岐
- 例外処理:特定の顧客や時期だけ処理方法が変わるイレギュラー対応
- 複数システム間の高度な連携:在庫と連動した自動発注、複数条件を組み合わせた請求書自動生成
ノーコードツールはテンプレート化された一般的な業務フローを前提に設計されているため、長年の業務改善で最適化されてきた自社独自のプロセスや業界特有の商習慣には対応できないことが多いのです。
【限界②】カスタマイズの制約
ノーコードツールは、用意されたパーツや機能の範囲内でしか開発できないという制約があります。
具体的には以下のカスタマイズが困難です。
- 画面デザイン:企業のブランドに合わせた独自UIや細かなレイアウト調整
- 計算ロジック:複雑な料金計算や業界特有の計算式の実装
- 帳票出力:見積書や請求書を自社仕様に完全に合わせる
- 権限設定:項目レベルでの細かな権限制御
また、ツールのバージョンアップによって仕様が変更され、「今まで使えていた機能が使えなくなった」といったトラブルも報告されています。
【限界③】スケーラビリティの制約
ノーコードツールには拡張性の限界があります。多くのツールは以下のような制限を設けています。
- データ容量の上限:有料プランでも数万〜数十万件程度
- 同時接続ユーザー数の制限:多数のユーザーが同時アクセスすると動作が不安定に
- API呼び出し回数の制限:外部システムとの頻繁なデータ同期ができない
- ストレージ容量の制限:添付ファイルを大量に保存できない
ビジネスが成長し、取引先や案件が増えると、これらの制限に引っかかるケースが出てきます。上位プランへの変更で制限を緩和できる場合もありますが、月額費用が大幅に上がり、「結果的にスクラッチ開発より高コストになった」というケースも珍しくありません。
【限界④】パフォーマンスの問題
ノーコードツールは、処理速度が遅くなりやすいという課題があります。汎用的な仕組みで動いているため、個別最適化されたシステムに比べて処理効率が劣るためです。
具体的には以下の場面でパフォーマンス問題が顕在化します。
- 大量データの検索・集計:数万件のデータ抽出や複雑な集計に数十秒〜数分かかる
- 複雑な画面の表示:複数テーブルの結合表示やリアルタイム計算で読み込みが遅延
- モバイル環境:スマートフォンやタブレットからのアクセスでさらに動作が重くなる
業務効率化のために導入したシステムが、かえって作業時間を増やしてしまう本末転倒な状況に陥るリスクがあります。
【限界⑤】外部システム連携の制約
ノーコードツールは、外部システムとの連携に制約があることも大きな限界です。
主要なサービス(Google Workspace、Slack、Salesforceなど)との連携機能は提供されていますが、以下のような課題があります。
- 対応していないシステムとは連携不可:自社の基幹システムや業界特有のツールとの連携ができない
- 連携できる項目が限定的:データの一部しか連携できない、リアルタイム同期ができない
- ベンダーロックインのリスク:特定のツールに依存しすぎると、他システムへの移行が困難
特に問題なのはベンダーロックインです。ノーコードツールで構築したシステムは、そのツール独自の仕組みで動いているため、料金値上げやサービス終了時にも簡単には移行できません。
現場で起こる「限界」を感じる瞬間
実際の現場では、どのような場面で「ノーコードではもう無理だ」と感じるのでしょうか。多くの企業が経験するリアルな挫折体験を見ていきましょう。
「思った通りに動かない」ストレスの蓄積
ノーコードツールを使い始めて最初にぶつかるのが、「やりたいことができない」というストレスです。
「この項目とこの項目を掛け合わせた条件で絞り込みたいのに、できない」「承認後に自動でメール送信したいのに、テンプレートが固定で変更できない」——一つひとつは小さな不便かもしれませんが、それが積み重なると、「結局、業務をツールに合わせて変えなければいけない」という状況になります。
特に、現場で長年培ってきた効率的な業務フローがある場合、それをノーコードツールの制約に合わせて変更することは、かえって非効率になることもあります。
Excel管理への逆戻り
ノーコードツールを導入したにもかかわらず、気づけばまたExcelを使っているというケースは非常に多く見られます。
- ノーコードツールからデータをエクスポートして、Excelで集計・加工する
- ノーコードツールには一部のデータだけ入力し、詳細な管理はExcelで行う
- 結局、Excelとノーコードツールの二重管理になってしまう
「Excel管理から脱却したい」という目的で導入したはずが、むしろ管理が複雑化してしまうという本末転倒な状況です。
新たな属人化の発生
ノーコードツールの導入目的の一つに「属人化の解消」がありますが、実際には新たな属人化を生んでしまうこともあります。
ノーコードツールは確かにプログラミング不要ですが、複雑な設定や運用には一定のスキルが必要です。結果として、「ツールに詳しい担当者」だけが設定を変更でき、その人がいないと何もできない状況が生まれます。
また、各部署が勝手にアプリを作り始め、「どこに何のデータがあるのか分からない」「同じようなアプリが乱立している」といった混乱が生じることも少なくありません。
ノーコードの限界を感じたら?3つの対策
ノーコードの限界を感じたとき、どのような選択肢があるのでしょうか。ここでは3つの対策を紹介します。
【対策①】ローコード開発への移行
ノーコードの次のステップとして、ローコード開発への移行があります。ローコードとは、基本的には視覚的な開発が可能ですが、必要に応じて一部プログラミングコードを書ける開発手法です。
ローコードのメリット
- ノーコードでは実現できなかった複雑な処理やカスタマイズが可能
- 完全なスクラッチ開発に比べて、開発期間とコストを抑えられる
- 既存システムとの連携がしやすい
ローコードのデメリット
- 一定のプログラミング知識が必要(社内にエンジニアがいない場合は外部委託が必要)
- ノーコードに比べて学習コストが高い
- ツールのライセンス費用が高額になることがある
ローコードは、「ノーコードでは物足りないが、完全なスクラッチ開発は予算的に厳しい」という企業に適していますが、ベンダーロックインのリスクは残ります。
【対策②】スクラッチ開発で自社専用システムを構築
ノーコードやローコードの制約から完全に解放されたいなら、スクラッチ開発という選択肢があります。
スクラッチ開発の特徴
- 完全な自由度:業務要件に100%合わせたシステムを構築できる
- 独自機能の実装:競合他社にはない、自社だけの強みを持ったシステムを作れる
- 柔軟な拡張性:ビジネスの成長に合わせて機能を追加・変更できる
- ベンダーロックインからの解放:特定のツールに依存せず、システムの所有権を持てる
従来、スクラッチ開発は「大企業向け」「高コスト」というイメージがありましたが、最近では小規模システムに特化したスクラッチ開発という選択肢も登場しています。AI技術とモダンな開発手法を活用することで、従来の1/3〜1/2のコストで、1〜2ヶ月という短期間でのスクラッチ開発が可能になっています。
【対策③】ハイブリッド型で段階的に移行
「いきなり全部を変えるのはリスクが高い」と感じる場合は、ハイブリッド型という選択肢もあります。
例えば、簡単な業務はノーコードツールで、複雑な部分はスクラッチで開発する組み合わせや、まずは一部の機能だけスクラッチで構築し、効果を確認してから範囲を広げる段階的移行などです。
ハイブリッド型のメリット
- リスクを抑えながら、段階的に最適なシステムへ移行できる
- 初期投資を抑えられる
- 既存の運用を大きく変えずに改善できる
注意点
- システムが複雑化し、管理が煩雑になる可能性がある
- 各システム間のデータ連携をしっかり設計する必要がある
- 最終的なゴールを明確にしておかないと、中途半端な状態で止まってしまう
スクラッチ開発への移行を検討すべきタイミング
ノーコードからスクラッチ開発への移行を検討すべき具体的なタイミングと、判断のポイントを解説します。
切り替えを判断する3つのサイン
以下の3つのサインが複数当てはまる場合は、スクラッチ開発への移行を真剣に検討すべきタイミングです。
【サイン①】業務の複雑化に対応できなくなってきた
事業が成長するにつれて業務フローは複雑になります。承認フローが多段階になり表現しきれない、部署をまたいだデータ連携で手作業が増えている、「本当はこうしたいのに、ツールの制約で妥協している」ことが増えた——このような状況では、業務に合わせてシステムを構築できるスクラッチ開発の方が長期的には効率的です。
【サイン②】パフォーマンスの低下が業務に影響している
データの読み込みに時間がかかり現場から不満の声が出ている、同時アクセスが増えると動作が不安定になる——業務効率化のために導入したツールが、逆に業務のボトルネックになっている状態は、明らかに移行を検討すべきサインです。
【サイン③】ランニングコストが想定以上に膨らんでいる
月額費用が当初の3倍以上になっている、複数のツールを組み合わせて使っており合計コストが高額——年間のランニングコストが100万円を超えている場合は、スクラッチ開発の初期投資と比較検討する価値があります。
小規模スクラッチ開発が向いている企業
以下のような特徴を持つ企業には、特に小規模スクラッチ開発が効果的です。
従業員10〜100名規模で独自の業務フローがある企業
創業から積み上げてきた独自のノウハウや業務フローがあり、業界特有の商習慣があり、汎用ツールでは対応しきれない企業では、ツールに業務を合わせるのではなく、業務に合わせたシステムを作ることで、大きな競争優位性を得られます。
システム化したい業務範囲が明確な企業
「この業務だけシステム化したい」という要件が明確で、必要な機能が絞り込まれており、まずは小さく始めて効果を見ながら拡張していきたい企業には、必要最小限の機能に絞った小規模スクラッチ開発なら1〜2ヶ月という短期間で立ち上げが可能です。
中長期的な視点でシステム投資を考えられる企業
目先のコストだけでなく3年後、5年後を見据えて判断でき、自社の資産としてシステムを持ちたいと考えている企業では、スクラッチ開発は初期投資が必要ですが、長期的には自由度とコストパフォーマンスで優位性があります。
「ちょうどいい仕組み」を作るために大切なこと
中小企業のシステム選びには、これまで大きく2つの選択肢しかありませんでした。SaaS・ノーコードツール(安価だが柔軟性に欠ける)と大規模スクラッチ開発(自由度は高いが数百万〜数千万円の予算が必要)です。
しかし、最近注目されているのが、必要最小限の機能に絞った小規模スクラッチ開発という第3の選択肢です。
小規模スクラッチ開発の特徴
- 必要な機能だけを抽出し、最小構成でシステムを構築
- AI活用により、従来の開発費の1/3〜1/2程度で実現
- 開発期間は1〜2ヶ月と短期間
- 将来的な機能追加・拡張も柔軟に対応可能
- 自社の資産として、システムを所有できる
この「ちょうどいい」アプローチなら、中小企業でもスクラッチ開発という選択肢が現実的になります。
業務整理の重要性
スクラッチ開発を成功させる最大のポイントは、開発に着手する前の業務整理です。
多くの失敗プロジェクトに共通するのが、「とにかく早くシステムを作りたい」という焦りから、業務整理を疎かにしてしまうことです。業務整理をしないまま開発すると、開発途中で追加費用が発生したり、現場の実態と合わないシステムができて結局使われなかったりします。
業務整理のステップ
- 現状把握:今の業務フローを可視化する
- 課題抽出:どこにムダや非効率があるかを特定する
- 理想の設計:「本来あるべき業務フロー」を描く
- 優先順位づけ:最初に実装すべき機能を絞り込む
- 要件定義:システムで実現すべきことを明確にする
ツールに業務を合わせるのではなく、業務に合わせたシステムを作る——この発想の転換が、真の業務効率化への第一歩です。
伴走型パートナーを選ぶメリット
スクラッチ開発では、「システムを納品して終わり」ではなく、開発後の運用・改善まで見据えた伴走型のパートナーを選ぶことが重要です。
伴走型パートナーの特徴
- 開発前の業務整理から一緒に考えてくれる
- 開発中も柔軟にコミュニケーションが取れる
- リリース後の操作レクチャーや定着支援まで対応
- 小さな改善要望にも迅速に応えてくれる
- 長期的な視点で、システムの成長を支援してくれる
単に「言われた通りに作る」のではなく、なぜその機能が必要なのか、本質的な課題は何かを一緒に考えてくれるパートナーなら、表面的な要望だけでなく、根本的な課題解決につながるシステムが実現します。
Harmonic Societyでは、「テクノロジーと人間性の調和」という理念のもと、お客様に寄り添った開発を大切にしています。業務整理からサポートし、分かりやすいコミュニケーションで、運用まで一気通貫で継続サポートします。
まとめ:適材適所の判断が成功の鍵
ノーコードは「悪」ではない
まず強調しておきたいのは、ノーコードツール自体が悪いわけではないということです。
ノーコードツールは、小規模な業務でシンプルな機能だけで十分な場合、まずは素早くプロトタイプを作って検証したい場合、IT人材がおらず自社で運用・管理したい場合などでは非常に有効な選択肢です。
重要なのは、自社の状況に合ったツールを選ぶことです。事業規模、業務の複雑さ、ユーザー数、求める柔軟性、予算、中長期的な事業計画——これらを総合的に判断し、「今の自社に最適な選択肢は何か」を考えることが大切です。
ノーコードで始めて、成長に合わせてスクラッチ開発に移行するという段階的なアプローチも、十分に合理的な戦略です。
自社に合った開発手法を選ぶためのチェックリスト
以下のチェックリストで、自社の状況を振り返り、次のアクションを判断してください。
□ 現状確認
- 現在のノーコードツールで実現できていない業務がある
- ツールの制約で、業務フローを妥協している部分がある
- データ量やユーザー数の増加で、動作が遅くなってきた
- 月額費用が当初の想定より大幅に増えている
- 複数のツールを組み合わせて使っており、管理が煩雑
□ 事業状況
- 従業員数が10名以上いる
- 今後も事業拡大を計画している
- 独自の業務フローやノウハウが競争力の源泉になっている
- システム化したい業務範囲が明確になっている
□ 投資判断
- 中長期的な視点でシステム投資を考えられる
- 年間のツール利用料が100万円を超えている(または超えそう)
- 自社の資産としてシステムを持ちたいと考えている
- ベンダーロックインのリスクを避けたい
判定結果
- 10個以上チェック:スクラッチ開発への移行を真剣に検討すべきタイミングです
- 6〜9個チェック:ローコードや小規模スクラッチ開発を検討する価値があります
- 5個以下:現状のノーコードツールを活用しつつ、定期的に見直しましょう
まずは相談から始めてみませんか?
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