「IT業務を全部外注していると費用がかさむから、社内で人を雇って内製化したい——」千葉の社長からよく聞く検討です。一方で「社員1人雇えばIT業務は全てまかなえる」と考えるのは、実態を知るとかなりの誤解を含んでいます。本記事では、コスト・スピード・ノウハウ蓄積の3軸で両者を比較し、業務タイプ別の使い分けを整理します。
「内製化=安くなる」は本当か
IT人材1人あたりの年間コスト
中小企業がIT人材を1人雇う場合、次のコストが発生します。
- 給与:年収500〜700万円(経験5〜10年の人材)
- 社会保険・法定福利費:給与の15〜20%=年75〜140万円
- 教育・研修費:年10〜30万円
- 機材・ソフトウェアライセンス:年30〜50万円
- 合計:年間650〜920万円
月額に換算すると月54〜77万円。これに対して、外注ベンダーに月50万円を払って同等の業務をやってもらうとどうなるか、というのが比較の出発点です。
単純比較では見えない内製化の「隠れコスト」
社員1人を雇う場合、コスト以外にも考えるべきことがあります。
- 採用コスト——転職エージェント経由で年収の30%、自社媒体でも年50〜100万円
- 退職リスク——ITエンジニアの平均在籍期間は3〜5年。退職時には業務が止まる
- スキル陳腐化——IT技術の進歩は早く、継続的な学習・研修投資が必要
- 閑散期の遊休コスト——業務量に波があっても、社員の給与は毎月発生する
これらを含めると、「内製化は安い」という前提は揺らぎます。
外注が向いているケース
ケース1:専門性が高く、頻度の低い業務
セキュリティ診断、アプリ開発、基幹システム構築——これらは数年に一度しか発生しない高度な業務です。社内にその専門家を雇うコストは、外注費を大きく上回ります。
船橋のある商社では、3年前に基幹システムを外注で構築し、通常運用は社内で対応する形をとっています。もし社内でシステム構築から運用まで全部やる前提で人を雇えば、年間700万円の固定費が必要でした。
ケース2:業務量の波が大きい
繁忙期と閑散期の業務量が2〜3倍違う会社は、ピークに合わせて人を雇うと閑散期に遊休になります。外注なら業務量に応じて発注量を調整でき、固定費化を避けられます。
ケース3:最新技術のキャッチアップが重要
AI、クラウド、セキュリティなどは半年単位で技術が変化します。社内1人で全ての領域をキャッチアップするのは現実的ではなく、複数の専門家を抱える外注ベンダーの方が最新知見を持っています。
内製化が向いているケース
ケース1:日常的に発生する運用業務
社内PCのセットアップ、社員アカウント管理、簡単なトラブル対応——こうした日常業務は、外注すると毎回発注・見積もりが発生し、コストも時間もかかります。社内に対応できる人材がいると圧倒的に効率的です。
ただし「社員全員のITサポート担当」だけで専任を雇うのは割高なので、他業務との兼任で対応するのが中小企業のリアルな形です。
ケース2:業務ノウハウと密接に結びついた業務
業務システムの細かな改修、データ分析、業務フローの改善など、自社の業務知識があって初めてできる業務は、外注だと毎回説明コストがかかります。社内で対応する方が効率が良いです。
ケース3:情報セキュリティ上、社外に出せない業務
顧客の機密情報、新商品の開発データなど、社外秘の情報を扱う業務は内製化が基本です。業務効率のために外注するリスクが、漏洩時の被害に見合いません。
現実解:ハイブリッドモデル
中小企業にとって最も現実的な答えは、「全て外注」でも「全て内製化」でもなく、業務ごとに使い分けるハイブリッドモデルです。
よくある役割分担の例
- 社内担当者(1名・他業務兼任)——日常の運用、社員サポート、ベンダーとの窓口、業務改善の旗振り役
- 月額固定の外注——ホームページ保守、セキュリティ監視、日常的な改修
- スポット外注——大規模システム開発、特殊なカスタマイズ、セキュリティ診断
千葉市内の従業員25名のサービス業で、この3層構造に整理した事例があります。整理前は全てスポット外注で、問い合わせのたびに見積もりと交渉が発生していたため、社長の時間が月20時間も取られていました。整理後は社内担当1名の配置と月額保守契約で、社長の時間が月3時間に短縮されました。
社内IT担当者を置く場合のポイント
ポイント1:1人に全てを背負わせない
社内IT担当者を1人配置する場合、その人がいなくなると業務が止まるという属人化が最大のリスクです。外注ベンダーを1社は並行でキープしておき、社内担当が不在でもベンダーに切り替えられる体制にしてください。
ポイント2:業務範囲を明確にする
「何でもお願いします」で雇うと、パソコンの修理からシステム開発まで膨大な業務を背負わされて、担当者が疲弊します。「日常運用と一次対応まで、大規模案件は外注と連携」のように範囲を区切ることが定着のコツです。
ポイント3:他業務との兼任で始める
いきなり専任を雇うのではなく、総務・情報システムの兼任として業務を1〜2年回してみて、業務量が十分なら専任化する、という段階的アプローチが失敗を減らします。
判断フレーム:業務ごとに4つの質問
どの業務を外注/内製化するかは、次の4つの質問で判断できます。
- 年間発生頻度は?——月次以上なら内製化の価値あり、年数回なら外注
- 専門性は?——高度で特殊な業務は外注、日常的な運用は内製化
- 情報の機密性は?——社外秘の深い情報を扱うなら内製化
- 業務量の安定性は?——変動が大きいなら外注、安定しているなら内製化
まとめ:二択ではなく「使い分け」で考える
IT業務の外注と内製化は、排他的な二択ではなく、業務ごとの使い分けの問題です。社員1人を雇うだけで全てをまかなおうとするのも、全てを外注で回そうとするのも、中小企業にとっては最適解ではありません。
自社のIT業務をどう整理すべきか、社内担当と外注の役割分担で迷う場合は、第三者の視点で棚卸しするのが早道です。当社では月1.5万円のIT顧問ライトプランで、IT業務の棚卸しと内外のバランス設計、ベンダー選定の伴走を行っています。千葉の社長が、無駄なく、回る体制を作れるよう支援いたします。