「気づいたら毎月のSaaS料金で15万円払っている。でも何にいくら払っているか正確には把握していない——」千葉の社長から、こうした悩みが増えています。SaaS(クラウドサービス)の利便性は高く、必要な都度契約していくと、数年で20〜30種類のサービスに加入していることが珍しくありません。本記事では、SaaSの棚卸し手順と、年間100万円以上のコスト削減を実現した事例を紹介します。
なぜSaaSはどんどん増えていくのか
低コストの「魔法」が逆に制御を難しくする
SaaSは月額数千円〜数万円と、単発で見ると小さな金額です。社長の承認なしに部門判断で契約できることも多く、「小さな金額だから気にしなくていい」という心理が働きます。
しかし、月3,000円のサービスを15個契約すれば月45,000円、年間54万円。月1万円のサービスを10個契約すれば年間120万円。小さな金額の積み重ねが、気づかないうちに大きな固定費になっていきます。
退会・解約の手続きが面倒
多くのSaaSは契約は簡単ですが、解約はメニューの奥に隠れている、または問い合わせフォームからしかできない、という設計になっています。「使わなくなったが、解約手続きが面倒で放置」した結果、年間数十万円の無駄な支払いが続くケースが多いです。
担当者の退職・異動で「何に使っていたか」が失われる
SaaSを契約した担当者が退職・異動すると、「何のために契約していたか」が社内から消えることがあります。アカウントだけが生き残り、毎月の支払いが続く状態です。
SaaS棚卸しの6ステップ
ステップ1:全支出の洗い出し(2〜3日)
過去12か月のクレジットカード明細、銀行引き落とし履歴、経費精算データを集め、SaaS・サブスクリプション・月額利用料に該当するものをすべてリストアップします。エクセルで「サービス名、月額、年額、契約者、用途」を列にして整理してください。
この段階で、多くの社長が「こんなに契約していたのか」と驚きます。30サービス以上、年間300万円以上というケースも珍しくありません。
ステップ2:利用状況の確認(2〜3日)
各サービスの契約者に「このサービスを月何回使っていますか」「なぜ必要ですか」を聞き取ります。次の3カテゴリに分類してください。
- 必須——業務の中核で、ないと仕事が回らない
- 便利——あると便利だが、なくても代替可能
- 不要——実際には使われていない、または代替手段で十分
ステップ3:「不要」を解約(即日〜1週間)
「不要」に分類されたサービスを即座に解約します。解約手続きが面倒でも、年間コストに対して10〜15分の手続きは圧倒的に割に合う投資です。
なお、解約手続きが分かりづらい場合は、カスタマーサポートに「解約したい」と明示的に問い合わせるのが早道です。
ステップ4:「便利」カテゴリを統合検討(1〜2週間)
「便利」カテゴリのサービスは、似たような機能が重複していないかを検証します。チャットツールが3つ、ファイル共有が2つ、タスク管理が3つ——こうした重複はよく見られます。
たとえばMicrosoft 365を契約していれば、Teams(チャット)、OneDrive(ファイル共有)、Planner(タスク管理)がすべて含まれています。別サービスを重複契約していたら統合の余地ありです。
ステップ5:必須サービスの契約条件見直し(2〜3週間)
「必須」サービスについても、月払い→年払いへの切り替え、プランのダウングレードを検討します。
- 月払いを年払いにすると10〜20%値引きされるケースが多い
- 不要な機能が含まれる上位プランは、下位プランへダウングレード
- ユーザー数課金の場合、退職者・利用しないメンバーのアカウントを削除
ステップ6:契約管理の仕組み化(恒常的)
棚卸しが終わったら、再発防止のため契約管理の仕組みを作ります。
- SaaS契約は月1万円以上を社長承認制にする
- 四半期ごとに全SaaS契約の利用状況を確認する
- 退職者が出たら、その人が契約していたSaaSを全て引き継ぐまたは解約する
- 契約管理台帳を1シートにまとめ、更新する
千葉の事例:年間120万円を削減した中小企業
柏市の従業員25名のサービス業で、SaaS棚卸しを実施した事例です。棚卸し前は月額SaaS支出が18万円、年間216万円でした。
棚卸しの結果
- 完全に使われていない「不要」サービス7種→解約。年58万円削減
- 機能重複の整理(チャット3つ→1つ、ファイル共有2つ→1つ)→年36万円削減
- 月払い→年払い切り替え→年18万円削減
- 退職者分のアカウント削除→年8万円削減
- 合計:年間120万円の削減
棚卸しに要した時間は、社長と経理担当で合計20時間程度。時給換算しても10万円未満の工数で120万円の年間削減を実現できました。
棚卸しで見逃しがちな支出
SaaSの棚卸しでは、次のような支出を見逃さないよう注意してください。
- 個人クレジットカードで契約してしまったサービス——経費精算書で紛れ込んでいる
- 海外SaaSのドル建て請求——為替変動で支出が増えている可能性
- 使用頻度が年数回のサービス——月額課金を続けるより、都度利用・買い切りが安い場合あり
- 追加機能・オプション料金——本体料金に加えて、別項目で課金されているケース
- 決済サービスの手数料——クレジットカード決済、スマホ決済の手数料も実質的なSaaS支出
SaaS乱立を再発させないための原則
原則1:新規契約前に「既存サービスで代替できないか」をチェック
新しいSaaSを契約する前に、現在契約中のSaaSで同じ機能が使えないかを確認する習慣をつけてください。Microsoft 365、Google Workspace、Salesforceなどの包括的サービスには多機能が含まれています。
原則2:契約時に「解約条件」も確認する
契約前に、解約手続きの方法と、解約時のデータ持ち出しができるかを確認しておきます。解約しにくいSaaSは、将来の足かせになります。
原則3:試用期間を最大限活用
本契約前に、無料トライアルや最低プランで試用し、「実際に使うか」を検証してから本契約してください。「便利そう」「いつか使う」で契約すると、使われないまま支払いが続きます。
まとめ:SaaS管理は「経営の基礎体力」
SaaS支出の管理は、財務諸表に直接現れにくい領域ですが、年間100万円規模のコスト削減余地が眠っていることが多い分野です。棚卸しは一時的なイベントではなく、四半期ごとの定常業務として組み込むと、無駄な支出が積み上がらなくなります。
自社のSaaS棚卸しに着手したい、効果的な管理体制を作りたいという場合は、外部の視点で一緒に進めるのが効率的です。当社では月1.5万円のIT顧問ライトプランで、SaaSの棚卸し、統合提案、契約管理体制の構築を行っています。千葉の社長が、不要な固定費を払い続けないためのサポートをいたします。