商標登録の方法と費用|自分でできる出願手順と注意点を完全解説

kento_morota 10分で読めます

「自社のサービス名を他社に先に登録されてしまった」「ロゴを使い続けたいのに、使用停止を求められた」――商標に関するトラブルは、起業家にとって大きな痛手となります。

日本の商標制度は先願主義のため、先に出願した者に権利が与えられます。ブランドを守るためには、できるだけ早い段階で商標登録に取り組むことが重要です。本記事では、商標登録の調査から出願、登録までの一連の手順を、費用の目安とともにわかりやすく解説します。

商標登録とは何か?基本の仕組み

商標とは、自社の商品やサービスを他社のものと区別するための「しるし」です。文字、図形、記号、色彩、音などが商標として登録できます。

商標権で保護される範囲

商標登録を行うと、指定した商品・サービスの区分において、登録商標と同一または類似の商標を他者が使用することを排除できます。具体的には以下の権利が得られます。

専用権
登録商標を指定商品・役務に使用する独占的な権利です。他者の許可なく自由に使用できます。

禁止権
他者が登録商標と同一・類似の商標を、同一・類似の商品・役務に使用することを禁止できる権利です。侵害者に対して差止請求や損害賠償請求ができます。

ライセンス権
他者に商標の使用を許諾(ライセンス)し、ライセンス料を得ることができます。フランチャイズビジネスなどで活用されます。

商標登録の有効期間

商標権の存続期間は、設定登録の日から10年間です。10年ごとに更新手続きを行えば、半永久的に権利を維持できます。特許権(出願から20年)や意匠権(出願から25年)と比較して、更新により無期限に保護できる点が商標権の大きな特徴です。

出願前の商標調査の方法

商標出願で最も重要なステップのひとつが、事前の商標調査です。同一・類似の商標が既に登録されている場合、出願しても拒絶される可能性が高いため、必ず調査を行いましょう。

J-PlatPatでの検索方法

特許庁が運営する「J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)」を使えば、無料で商標検索ができます。

手順1:J-PlatPatにアクセス
ブラウザで「J-PlatPat」と検索し、サイトにアクセスします。「商標」メニューから「商標検索」を選択します。

手順2:検索条件の設定
検索したい商標の文字列を入力します。「称呼検索」を使うと、読み方で類似商標を検索できます。たとえば「ハーモニック」で検索すると、同じ読み方の商標が表示されます。

手順3:結果の確認
検索結果から、類似する商標がないかを確認します。特に、自社と同じ区分(商品・役務の分類)で登録されている商標がないかに注目します。

類似判断のポイント

商標の類似性は、以下の3つの観点から総合的に判断されます。

外観(見た目)
文字の形状やデザインが似ているかどうか。「HARMONIC」と「HARMONIK」は外観が類似すると判断される可能性があります。

称呼(読み方)
音声で聞いたときに紛らわしいかどうか。文字が異なっていても、読み方が同じまたは類似していれば、類似と判断されやすくなります。

観念(意味合い)
商標が示す意味やイメージが共通するかどうか。「太陽」と「SUN」は、言語は異なりますが観念が同一です。

自分での調査に不安がある場合は、弁理士に依頼することを検討しましょう。調査費用は1〜3万円程度が相場です。

区分(指定商品・役務)の選び方

商標出願では、保護を求める商品やサービスの「区分」を指定する必要があります。区分の選択を誤ると、必要な保護が受けられません。

区分とは何か

商品・役務は、国際分類に基づき第1類から第45類までの区分に分けられています。第1類〜第34類が商品、第35類〜第45類がサービス(役務)です。

代表的な区分の例を挙げます。

IT・ソフトウェア関連
第9類:コンピュータプログラム、アプリケーションソフトウェア、電子機器
第42類:ソフトウェアの設計・開発、SaaS、クラウドコンピューティング

コンサルティング・ビジネスサービス
第35類:広告、経営コンサルティング、マーケティング、人材紹介

飲食関連
第43類:飲食物の提供、宿泊施設の提供
第30類:コーヒー、パン、菓子類

教育・出版
第41類:教育、セミナーの開催、出版、娯楽サービス

区分選択の実践的なコツ

現在の事業に必要な区分を優先する
まずは、現在提供している商品・サービスに該当する区分を選びましょう。将来の事業拡大を見据えて関連する区分も取得したいところですが、区分が増えるほど費用も増加します。

類似群コードを確認する
同じ区分内でも、商品・役務はさらに「類似群コード」で分類されています。類似群コードが同じ商品・役務は、互いに類似と推定されます。自社の商品・役務に該当する類似群コードを正確に把握しましょう。

将来の事業展開も考慮する
事業計画に基づき、近い将来に展開予定の商品・サービスの区分も取得しておくと安心です。後から追加出願することも可能ですが、その間に他者に登録されるリスクがあります。

出願書類(願書)の書き方

商標の出願書類は「商標登録願」と呼ばれます。特許庁の様式に従って作成します。

願書の記載事項

願書に記載する主な項目は以下のとおりです。

商標登録を受けようとする商標
文字商標の場合は、標準文字で記載するか、ロゴなどの図形を含む場合は商標見本を添付します。標準文字とは、特許庁が定めた書体で表示される文字のことで、特定のデザインに限定されない広い保護が受けられます。

指定商品または指定役務並びに商品及び役務の区分
前述の区分と、具体的な商品・役務名を記載します。商品・役務名は、特許庁の「商品・役務名リスト」から選ぶとスムーズです。

出願人の情報
氏名(法人名)、住所(法人の本店所在地)、識別番号(過去に出願歴がある場合)を記載します。

出願方法の選択

電子出願(インターネット出願)
特許庁の「電子出願ソフト」を使用してオンラインで出願できます。電子証明書の取得が必要ですが、郵送の手間がなく、出願後の手続きもオンラインで完結します。

紙出願
願書を紙に印刷して、特許庁に持参または郵送します。電子化手数料(1件あたり2,400円+1ページあたり800円)が追加でかかるため、電子出願の方が費用面で有利です。

商標登録にかかる費用の全体像

商標登録にかかる費用は、「特許庁に支払う費用(官費)」と「弁理士に依頼する場合の手数料」に分かれます。

自分で出願する場合の費用

出願時
出願料:3,400円+(区分数×8,600円)
1区分の場合:3,400円+8,600円=12,000円
2区分の場合:3,400円+17,200円=20,600円

登録時
登録料(10年分一括):区分数×32,900円
1区分の場合:32,900円
登録料(5年分割):区分数×17,200円

1区分を10年一括で登録する場合の合計
出願料12,000円+登録料32,900円=44,900円

弁理士に依頼する場合の費用

弁理士に依頼する場合は、官費に加えて弁理士手数料がかかります。

相場の目安(1区分の場合)
事前調査:1万〜3万円
出願手数料:5万〜10万円
登録手数料:2万〜5万円
合計:8万〜18万円程度(官費込み)

弁理士に依頼するメリットは、類似調査の精度が高いこと、拒絶理由通知への対応を任せられること、書類の不備を防げることです。初めての出願で不安がある場合や、重要なブランドの出願では弁理士への依頼を検討しましょう。

費用を抑えるためのポイント

区分数を最小限にする
区分が増えるごとに費用が加算されるため、本当に必要な区分に絞って出願しましょう。

5年分割登録を利用する
10年分を一括で支払うより、5年分割の方が初期費用を抑えられます。ただし、合計金額は分割の方が高くなるため、資金に余裕があれば一括払いが有利です。

自分で出願する
比較的シンプルな文字商標であれば、自分で出願することで弁理士手数料を節約できます。

出願後の審査プロセス

出願後の審査プロセスと、拒絶理由通知を受けた場合の対応方法を解説します。

審査の流れ

方式審査
出願書類に形式的な不備がないかを確認する審査です。不備があれば補正命令が出されます。

実体審査
商標としての登録要件を満たすかどうかを審査します。出願から実体審査の結果が出るまで、通常6か月〜1年程度かかります。

登録査定または拒絶理由通知
要件を満たす場合は「登録査定」が出され、登録料を納付すると商標権が発生します。要件を満たさない場合は「拒絶理由通知」が送付されます。

拒絶理由通知への対応

拒絶理由通知を受けても、適切に対応すれば登録が認められる場合があります。主な拒絶理由と対応方法を紹介します。

類似商標の存在(商標法第4条第1項第11号)
既に登録されている商標と類似すると判断された場合です。指定商品・役務を限定する補正や、非類似であることを主張する意見書の提出で対応します。

識別力の欠如(商標法第3条第1項各号)
商品の品質や原材料を表す普通名称(例:「おいしい」「プレミアム」)は、識別力がないとして拒絶されます。使用による識別力の獲得(商標法第3条第2項)を主張する方法もあります。

公序良俗違反(商標法第4条第1項第7号)
公の秩序や善良の風俗を害するおそれがある商標は登録できません。

拒絶理由通知に対する意見書の提出期限は通常40日以内(在外者は3か月以内)です。期限を過ぎると出願が拒絶されるため、速やかに対応しましょう。

登録後の管理と注意点

商標登録が完了した後も、権利を維持するためにいくつかの注意点があります。

商標の使用義務

登録商標は、継続して3年以上使用していない場合、他者から不使用取消審判を請求される可能性があります。登録後は、指定商品・役務に実際に使用している証拠(使用実績)を残しておきましょう。

使用証拠として有効なもの
・商品パッケージ、ラベルへの表示
・Webサイトでの使用
・広告・カタログでの使用
・取引書類(請求書、納品書)での使用

更新手続き

商標権の存続期間は10年間です。更新する場合は、存続期間の満了前6か月から満了日までの間に更新登録の申請を行います。更新を忘れると権利が消滅するため、期限管理を徹底しましょう。

商標権侵害への対応

自社の登録商標を無断で使用している業者を発見した場合は、以下の手順で対応します。

1. 証拠の収集
侵害の事実を示す証拠を収集・保全します。Webサイトのスクリーンショットやアーカイブ、侵害品の購入記録などを残しておきましょう。

2. 警告書の送付
弁護士または弁理士を通じて、使用停止と損害賠償を求める警告書を送付します。

3. 法的措置の検討
警告で解決しない場合は、差止請求訴訟や損害賠償請求訴訟を検討します。商標権侵害は刑事罰(10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金)の対象にもなります。

まとめ:ブランドを守る第一歩を踏み出す

商標登録は、自社のブランドを法的に保護するための最も基本的かつ効果的な手段です。本記事のポイントを振り返ります。

先願主義のため早期の出願が重要
日本では先に出願した者に権利が与えられます。ブランド名が決まったら、できるだけ早く出願しましょう。

事前調査で拒絶リスクを減らす
J-PlatPatで類似商標を調査し、出願前にリスクを把握しておくことが大切です。

区分の選択が保護範囲を決める
現在の事業内容と将来の展開を見据えて、適切な区分を選択しましょう。

自分での出願で費用を抑えられる
1区分の文字商標であれば、自分での出願で約4.5万円から登録可能です。

登録後の管理も忘れずに
使用証拠の保存と更新手続きの期限管理を徹底しましょう。

商標登録は難しそうに見えますが、基本的な手順を理解すれば自分でも対応可能です。まずは自社のブランド名が使えるかどうか、J-PlatPatで検索することから始めてみてください。

#商標登録#出願#ブランド
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