DXとは?その定義から見えてくる必要な理由と成功ポイントを解説!

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DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉を耳にしている人はいますが、明確に理解している人は少ないかもしれません。それは、DXのもたらす恩恵が広範囲に渡るからです。

この記事では、DXの定義やDXを取り巻くキーワード、成功に向けて知っておくべきポイントなどを中心に解説します。DXを始めるには、「何が必要なのか」や「現在のリソースでもできるのか」などと模索中の経営層の方は、ヒントとしてお役立てください。

目次

DXの定義

経済産業省の「DXレポート」では、ITや通信分野などの調査・分析・コンサルティングサービスのIDC Japan株式会社によるDXの定義を示しています。

「企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」

引用:経済産業省「DXレポート・簡易版」

企業を取り巻く環境要因 対象 対応
外部エコシステム ・顧客
・市場
・破壊的な変化をふまえる
内部エコシステム ・組織
・文化
・従業員
・変革をけん引する
第3のプラットフォーム ・クラウド技術
・ビッグデータ(アナリティクス)
・モビリティ
・ソーシャル技術
・新製品の開発
・新しいサービスの提供
・新しいビジネスモデルの構築

※出典:経済産業省「DXレポート・簡易版」記載のIDC Japan株式会社の定義を参照

DXは、顧客や市場の変化に合わせた、内部環境の変革を先導する考え方であり取り組みと言えるでしょう。この考え方から、第3のプラットフォームで顧客体験の変革をはかります。結果として新しい価値を創出し、競争優位性が確立できます。

DXは、企業の2つの環境要因に対して、第3のプラットフォームで新しい価値を創出する企業変革の考え方です。抽象度が高いため、捉え方がぼんやりしてくるかもしれません。ただし、DXにあたる取り組みは、範囲が広く以下の企業変革はDXと考えられます。

  • 社内であつかう書類の保管→電子帳簿保存
  • 飲食店のメニュー注文→卓上設置のタブレットやスマホアプリ経由の注文
  • 注文品の配膳→ロボットによる配膳
  • 会場に集まる会議→Web会議システムでリモート商談
  • タイムカードで打刻→スマホアプリで出退勤記録

これらはDXにあたる取り組みの一部です。DXは、従来の人が当たり前のように携わってきた行動をデジタル技術の活用で変革します。それにより、DXは企業のビジネスモデルや製品、サービスだけではなく次の変革も進めるでしょう。

  • それぞれの業務
  • 組織体制
  • 生産プロセス
  • 営業プロセス
  • 企業文化
  • 風土

これらの変革が進むことで市場における競争優位性を向上できます。

企業にDXが必要な理由と背景

企業にとっては、先述した外部エコシステム(顧客や市場)の破壊的な変化がDXの追い風となっています。その理由は、あつかうデータが増えたことによるデジタル市場の拡大ではないでしょうか。

デジタル市場の拡大

インターネット環境の整備やモバイルデバイス端末の普及は、あつかえるデータを増やすことにつながっています。ビッグデータやクラウド環境などデジタル技術の進化にともない、それら技術を駆使して競争優位に立とうとするベンチャー企業も台頭してきました。

また、2020年初頭から世界的に流行した新型コロナウイルス感染症の影響も企業のDX導入を加速する要因となっています。感染症対策に向けたリモートワークの活用が企業のDXへの意識を高めました。

デジタル市場で勝ち抜くためには、従来のスピード感や許容範囲では物足りなくなり、より多くのデータをあつかえるデジタル技術の活用が求められます。そのような時代背景から、企業のビジネスモデルは変革を余儀なくされています。

レガシーシステムから新しいシステムへ

企業における既存のデータ活用システムは、ブラックボックス化されている状況です。企業のビジネスプロセスは、非効率なデータ管理のまま煩雑となり、システムの全貌も機能の意義も見えなくなっています。

たとえば、経済産業省の「DXレポート」では、企業がレガシーシステム(既存システム)を使い続けることで、技術が老朽化したり、システムの肥大化や複雑化が懸念されたりしています。この状況がレガシーシステムによるブラックボックス化として問題視されている状況です。

※出典:経済産業省「DXレポート・簡易版」

このようなレガシーシステムの問題点から脱却するには、新しいシステムへ移行する必要があります。また、ブラックボックス化したシステムを放置しておくと、情報や組織が孤立しサイロ化する可能性もあるでしょう。つまり、レガシーシステムの問題は放置しないことが大事です。

「2025年の崖」への対策

前述したレガシーシステムの問題は、企業のDX推進を妨げる要因になっています。具体的には、企業であつかうデータが古いシステムのまま事業部ごとに構築されている状況があてはまります。

事業部ごとに異なるシステムで構築されたままだと、全社横断的なデータの利活用ができません。その延長上にあるのがシステムのブラックボックス化です。

このシステムのブラックボックス化問題を抱えている企業は少なくありません。いわゆる「2025年の崖」のことです。経済産業省の「DXレポート」では「2025年の崖」について次のように説明しています。

システムのブラックボックス化という課題を抱えた企業が新しいシステムへ移行しないでいると、2025年以降からは年間最大12兆円の経済損失となるという予測のことです。

※出典:経済産業省「DXレポート・簡易版」

2025年以降から予測される年間最大12兆円の経済損失は、2018年時点の約3倍と考えられます。それは、システムだけではなくシステムの保守運用の担い手となる人材も含めて保守運用上のトラブルやデータ消失のリスクも高くなると考えられるでしょう。企業にとってこの「2025年の崖」への対策として、DXの必要性が高まっている状況です。

多様化する顧客ニーズへの対応

ビッグデータやクラウド環境の台頭は、顧客ニーズの多様化を促進する結果となっています。デジタル市場の拡大は、顧客が入手する情報量の増加にもつながっています。情報が増えることで、顧客ニーズの多様化が進み、顧客獲得に向けた戦略もデジタル技術なくして考えられなくなりました。

企業は、データやデジタル技術を活用してビジネスモデルの変革を進めなければ、安定した収益の確保が難しくなってきました。そのため、顧客や市場の動向に対してもDXの取り組みは必要となっている状況です。

OMOへの対応

また、多様化する顧客ニーズへの対応として、オンラインとオフラインの融合したOMO(Online Merges with Offline)を取り入れたビジネスがあります。そのため、オフラインビジネスがOMOを取り入れることでデジタル技術の必要性がさらに高くなるでしょう。

国内企業におけるDXの取り組み状況

2018年頃よりDXが提唱され、そのキーワードだけがひとり歩きしているかが懸念される中、国内企業のDXはどのような状況でしょうか。2021年3月に総務省が発表した「デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究の請負」では、2019年8月時点で次のようなDXの取り組み状況が報告されています。

  • 特定の組織のみ、取り組みや具体的な検討を進めている企業:48.7%
  • 経営会議など、上層部での重要な経営課題だと認識している企業:29.4%
  • 話題にはのぼっているが、具体的な取り組みや検討は行っていない企業:20.6%

※出典:総務省「デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究の請負」

この結果から、調査対象の企業のうち半数弱の企業が特定の組織限定でDXを進めていると判断できます。ただし、残りの半数の企業は全社の取り組みとして考えていないことが考えられるでしょう。

DX推進を考える企業の課題

前述した総務省の調査結果では、「DXの推進のために必要な体制」についても報告されていました。企業のDX推進に対して求められる体制は、次のとおりです。

  • 従業員の意識改革と新しい風土を作る体制:56.7%
  • DX人材を確保・育成する体制:56.3%
  • トップが主導で関与する体制:55.0%
  • デジタル専門組織を設置する体制:39.0%

※出典:総務省「デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究の請負」

この調査結果から見えてくることは、DX体制への理解や人材確保などが考えられます。

本当の意味でDXを理解しているか

企業がDX推進に移行する場合は、本当の意味でDXを理解していなければなりません。それは、従業員の意識改革や新しい風土を作るくらいの体制変革です。DXによる変革への理解は、低いITリテラシーを改善することにもつながります。

そのためには、トップ主導で全社的な取り組みとして変革することも必要です。デジタル技術の知見を底上げする専門部署の設置も求められるでしょう。

不透明な部分が残っていないか

DX推進を考える企業の課題は、透明性ではないでしょうか。企業の経営層が自社の将来性や競争力強化を目指すことは、当然の流れと考えられます。自社の成長や競争力の強化には、デジタル技術を活用したDXへの取り組みが必要です。

ただし、やみくもにDX推進を唱えているだけでは前に進めません。大事なことは、社内各部門に浸透する透明性のある自社DXの理解です。DXを戦略的に進めるには、不透明な部分が残っていないか、を確認する必要があります。

DXは、デジタル技術を駆使したデータの利活用が中心となります。そのため、不透明な部分が残っていると足かせとなるでしょう。人から人へと連携する従来の取り組みからクラウドを介したデータの連携が主流となる昨今では、不透明な部分は致命的な足かせとなります。

デジタルツイン

不透明な部分を明確化することは、企業におけるDXのポイントです。ビジネスの透明性を目指す取り組みにデジタルツインがあります。

デジタルツインは、現実世界の状態をデジタル技術でサイバー空間上に再現する仕組みです。再現された仕組みは、現実世界のものと双子のように同じであることからデジタルツインと呼ばれています。

プロセスマイニング

DX導入を考える企業の課題は、不透明な業務をなくすことではないでしょうか。デジタル技術の導入により、企業が保有する業務ログデータは、プロセスマイニングで可視化できます。

プロセスマイニングで可視化した業務ログデータから改善点を明確にすることで、不透明な業務の効率化を目指せるでしょう。

人材が足りているか

企業がDXを進めるうえで、内部人材だけで完結できないという課題も考えられます。システム構築などに精通しているIT人材がいなければ、外部ベンダー企業に依頼することも解決策のひとつです。その際、企業体力と予算規模の関係も検討しなければなりません。

経済産業省の「DXレポート」では、ベンダー企業との関わり方が米国と日本で次のように異なると示しています。

ベンダー企業の選定
DXに取り組む米国企業 ・CIOや情報システム部門が評価
・誰も使っていないベンダー企業との関係性を構築
DXに取り組む日本企業 ・複数のベンダー企業の提案から判断
・大手ベンダー企業の提案に傾きがち

※出典:経済産業省「DXレポート・簡易版」を参考に作成

DXに取り組む国内企業は、自社の判断ではなくベンダー企業頼みな点が大きいと考えられます。国内企業では、米国企業と比較してエンジニアの在籍率が低い状況です。その理由は、米国と日本の給与水準の差が考えられます。

2017年の米国IT人材の平均年収が10万ドル以上に対して、日本のIT人材の平均年収は600万円と約半分となっています。この差が国内企業のIT人材不足の要因のひとつにもなるでしょう。

データ引用:JETRO「米国におけるテック人材に関する動向」

DXを進めるうえで自社のIT人材が不足しているため、ベンダー企業の経験や知見を重視しなければならない状況です。

DXを取り巻く3つのキーワード

DXは、デジタル技術を活用することから3つのキーワードと混同してしまう可能性があります。デジタル技術を活用するキーワードに、デジタルトランスフォーメーションと似たようなキーワードがあることもDXの理解の妨げとなるかもしれません。ここでは、DXを理解するための3つのキーワードとの関係について解説します。

デジタル技術の活用範囲 取り組み内容
デジタイゼーション
(Digitization)
業務のデジタル化 企業における特定作業の効率化に向けたデジタル技術活用(書類の電子化など)
デジタライゼーション
(Digitalization)
フロープロセスのデジタル化 自社内および外部環境、ビジネス戦略を含めたプロセス全体のデジタル化
デジタルトランスフォーメーション
(Digital Transformation)
デジタル技術を活用した新製品やサービス X-TechやXaaS

※出典:総務省「デジタルトランスフォーメーション、デジタイゼーション、デジタライゼーション」参照により作成

DXを取り巻くキーワードのうち2つは、業務レベルのデジタル化のデジタイゼーションとフロープロセスをデジタル化するデジタライゼーションのことです。DXは、これら2つの要素も含めたデジタル技術の活用で新製品やサービスを生み出します。

デジタル・ディスラプションとの関係

3つ目のキーワードは、デジタル・ディスラプションです。世界では、インターネットの恩恵であらゆるリアル店舗やリアルサービスの需要が低くなっています。

たとえば、紙の書籍やDVDビデオ、音楽CDなどはデジタルファイルに変換されインターネットを介して利用できる状況です。そのため、リアル店舗で紙の書籍やDVD、CDなどを購入する人が少なくなっています。この従来の産業を破壊する状況がデジタル・ディスラプションです。

DXが新しい価値を創造していくたびに、デジタル・ディスラプションも広がるため従来のビジネスモデルの需要が低くなってきます。両者は真逆の関係にあると言えるでしょう。

デジタル・ディスラプションは、リバースイノベーションにも繋がります。既存産業の破壊から新しい価値を生み出す動きは、新興国や途上国でも実現できるでしょう。

リバースイノベーションは、グローバル企業が開発した製品やサービスを途上国や新興国で再度開発することです。その開発は、リープフロッグ現象になる可能性があります。

リープフロッグ現象は、途上国や新興国でゼロから開発した製品やサービスが一気に発展する現象です。総務省の公開している「情報通信白書・令和元年版」では、ケニアのリープフロッグ現象に触れています。銀行口座を持たないことが一般的だったケニアにおいて、モバイルバンキングは急速に発展しました。この状況は、リバースイノベーションと考えられるでしょう。

※出典:総務省「情報通信白書・令和元年版」

DXはIT化ではない

DXは、IT化と誤解される場合もあります。とくに組織全体で理解を求めた場合、デジタル技術を導入した単なるIT化と同一視されるかもしれません。そのような誤解を防ぐため、明確な違いについて解説します。

IT化との違い

IT化とDXは、手段と目的で違いを区別できます。IT化は、企業の業務一つひとつに対して効率化を求めた場合の解決策となる手段の導入です。たとえば、次のような導入が考えられます。

IT化 DX
概念 ・インターネットを介して伝達を便利にする情報技術のこと ・ITを含むデジタル技術全般を駆使した事業変革のこと
・宣伝用チラシの配布→SNSやWebサイト経由の情報提供
・電話による報告→メールやチャットを使った報告
・Webサイトを閲覧しながら参加者全員とリアルタイムでリモートビデオ会議を実施し、そのシステム導入により企業体質を変革する

IT化は、個別の業務効率の改善に役立ちます。業務効率を改善する手段をデジタル技術でシステム化し、新しい価値として浸透させることがDXです。DXは、ITを最適な状態で活用する施策の全体像でもあります。

DX成功に欠かせないポイント

企業は、DXを進めるうえでどのようなポイントを理解しておくべきでしょうか。DXは、進めるうえで成功に欠かせないポイントがあります。

DX人材の確保・育成

国内企業がDXを成功させるには、DX人材の確保や育成が重要なポイントとなるでしょう。DX人材の確保および育成は、企業共通の課題です。

  • どのようなスキルを持つ人材を求めるのか
  • どのような対応で確保育成を進めていくのか

この2つのポイントを整理し明確にする必要があります。IPAが2020年5月に公開した「DX推進に向けた企業とIT人材の実態調査」では、DX人材として必要な職種を指摘しています。

  • ビジネスデザイナー:DXやデジタルビジネスの企画・立案・推進などを担う人材
  • プロダクトマネジャー:DXやデジタルビジネスの実現を主導できる人材
  • UI/UXデザイナー:DXやデジタルビジネスのユーザー向けシステムのデザインを担う人材
  • テックリード:DXやデジタルビジネスのシステム設計や実装ができる人材
  • データサイエンティスト:データ解析や分析ができる人材
  • 船影技術エンジニア:AI(機械学習)やブロックチェーンなどの先端技術を担う人材
  • エンジニア/プログラマー:システム実装・インフラ構築・保守などを担う人材

出典:IPA(独立行政法人情報処理推進機構)「DX推進に向けた企業とIT人材の実態調査」

DXを進める企業は、これら人材の確保や育成が必要です。自社の既存社員を育成する場合は、リスキリング(技術革新やビジネスモデルの変化に適応するための社内で開催するスキル習得機会)なども方法のひとつです。リスキリングは、社員のキャリア形成にもつながります。既存社員のリスキリングが難しい場合は、外部の協力を得ることになるでしょう。

開発手法の刷新

DXで導入するデジタル技術の進化は、時代の流れとともに急速な変化を必要とします。企業は、変化の激しい多様化する時代に合わせた対応が求められるでしょう。そのような理由から、構築した開発手法をそのまま活用し続けられないと判断できます。

DXを進める企業は、常に開発手法を刷新していく姿勢が必要です。とくにデータ連携のたやすさが訴求ポイントとなるツールの場合は、顧客ニーズの変容を素早く察知する必要があります。顧客ニーズの変容を受け入れる3つの施策は次のとおりです。

概念 メリット
アジャイル開発 ・小単位でシステムを区切り実装とテストを行う開発手法 ・ウォーターフォール開発と比べて開発期間を短くできる
リーン開発 ・顧客と市場のニーズを基準にして、必要な部分だけを取り入れ不要な部分は使わない効率的な開発手法 ・経営資源にメリハリがつけられる
・経営の無駄な部分を明確にできる
デザイン思考 ・顧客目線でビジネスの課題を明確化する思考法 ・製品やサービスの課題解決要因を明確化できる
・顧客ニーズを具体化できる

DXは、デザイン思考とアジャイル開発、リーン開発の強みを生かして、顧客ニーズの変容に合わせることが重要なポイントです。

データドリブン経営

DXは、デジタル技術を駆使したビジネス戦略とも考えられます。デジタル技術を駆使する大きな要素は、データの利活用です。現代は、ビッグデータやクラウド環境により顧客の情報収集するデータ量が増えています。過去の経営戦略のように、勘や経験で競争できる時代ではなくなっています。そこで必要となるのがデータ主導の考え方です。

データドリブン経営は、多様化する顧客ニーズの時代に合わせてデータ基準で判断します。ところが、現状ではデータドリブン経営のできている企業は多くありません。

総務省の公開した「デジタルデータの経済的価値の計測と活用の現状に関する調査研究」では、データ主導型経営に取り組む企業の少なさが数値であらわれています。

3年以上前からデータ主導の経営を実施している企業 直近3年以内にデータ主導型経営を実施する予定の企業
最高データ責任者の設置 18.5% 12.7%
データ分析人材の採用 17.6% 18.9%
データ分析専門の部署を設置 15.8% 16.8%
データ活用戦略の策定 16.1% 22.2%
データ分析に基づく経営判断の実施 17.2% 22.6%

※出典:総務省(2020年)「デジタルデータの経済的価値の計測と活用の現状に関する調査研究」を参照して作成

2020年を基準に、データドリブン経営を検討している企業は全体の20%前後という状況です。DXが浸透することでデータドリブン経営への意識は高くなると考えられます。それだけに、データ活用はDXに成功するポイントとして重要な役割を持つでしょう。

関連記事:データドリブンマーケティングとは?注目の理由と実践に向けた注意点

DXの進め方

DXは、企業の積み重ねてきた既存の事業からデジタル技術を駆使した変革です。既存のビジネスモデルは、不確実性の高い要素を含んでいるため、仮説と検証をくり返す必要があります。

そのくり返しから収集したデータを分析して確実性を上げます。手順は、次のとおりです。

自社ビジネスの取り組みを分析

DXを進めるには、自社ビジネスの現状を分析します。その理由は、現在取り組んでいるビジネスプロセスを明確にしなければ、不透明さが残ったまま進むことになるからです。

できる限りビジネスプロセスを細分化して、定量的な判断ができるレベルにする必要があります。既存のプロセスを具体化できれば、課題も明確になるでしょう。

課題解決手段のリサーチ

既存ビジネスプロセスの課題は、デジタルツールの活用で解決手段となる要素をリサーチします。デジタルツールの活用は、課題解決手段のデータ化に有効です。できる限り多くのデータを取得するために、効率よく収集する必要があります。

この時点で重要になるのは、既存システムのブラックボックス状態を解消することです。不透明な部分をなくしてデータ主導でシステム化できれば、本格的にDXの実行ができます。

組織へ情報共有

DXに取り組む準備が整ったら、社内組織へ情報を共有します。DXが社内の仕組みを変えるだけではなく、社外関係者(サプライヤー)のビジネスにも影響があるかもしれません。

とくに社外取引相手がDXの足かせとなる可能性もあります。そのため、すべての組織関係者と情報を共有して問題点を洗い出すことが大切です。

内製と外注の適切な分配

組織においてボトルネックとなる部分がなければ、業務効率と継続性を考慮したDXの導入へと進めます。

その際、重要な判断が内製と外注の適切なリソースの分配です。社内リソースと外注の適切な分配は、長期的な視点でプロセス全体を精査する必要があります。

実践結果の評価および改善

DXの準備が整ったら、実践して結果を評価することが大事です。

実践ごとにデータ収集しながら、新たな課題を可視化します。課題を改善しながら進める取り組み方が必要です。

DX導入によりできること

DXは、デジタル技術を活用して透明性の高いビジネスモデルが構築できます。その透明性の高さが企業全体のあらゆる場面に好影響をもたらすでしょう。

ビジネスプロセスの明確化による生産性向上

DXは、既存システムを刷新して不透明な状態から脱却ができます。断片的なプロセスではなく、明確なデータ同士で連携され透明性を担保できるでしょう。たとえば、いままでパソコンで実行してきた定型的な作業は、RPA(Robotic Process Automation)が代替して自動化できます。人間が行ってきた属人的な業務が定量化され、ビジネスプロセスも明確になるでしょう。

その結果、ビジネスが効率的に進められ無駄な作業を排除できます。その状況が生産性向上へとつながります。

膨大なデータの利活用で迅速な意思決定を実現

DXの導入は、ビジネスプロセスの要所で最適なデジタルツールを活用することです。現代のデジタルツールは、クラウドを介した膨大なデータ処理に対応しています。膨大なデータの利活用は、組織の迅速な意思決定を実現します。たとえば、部門をまたいだ社内外の関係者が迅速に必要な情報を入手できれば、意思決定のスピードは上がるでしょう。

迅速な意思決定の基盤となるのが透明性の高いビジネスモデルの構築です。関係者全員が共通認識で理解できるデータ主導の仕組みこそがDXの根源ではないでしょうか。

VUCA時代(目まぐるしい環境変化)への対応

ビジネスで活用する言葉には、機敏性や敏しょう性をあらわすアジリティ(Agility)があります。現代のビジネス環境は、IT技術や消費者ニーズの激しい変化から不確実性の高い状況です。そのような目まぐるしい環境変化(VUCA時代)に対して、ビジネスの革新性を追求できる取り組みがDXだと考えられます。

ビジネスを取り巻く環境は、新しく創出された事業モデルに対して、さらなる技術革新が登場すると考えられます。競合優位性に立つための企業環境は、デジタル技術を駆使することが重要です。DXは、企業を取り巻く環境の変化へ対応できる基盤づくりにもなるでしょう。

DX導入で注意すべき点

企業は、DXを進めるうえで3つの点に注意する必要があります。

コストがかかる

DXの導入は、コストをかけることが避けられません。クラウド環境を活用したデジタルツールの導入には、初期設定費用や毎月のランニングコストが発生します。もし、セキュリティ面の判断から自社でシステムを組む場合は、担当のエンジニアも必要です。

DXは、導入初期段階のコストを念頭に置き、長期運用で回収する考え方が求められます。

既存システムからの移行に手間がかかる

既存システムを刷新する企業の場合は、既存システムからの移行にかかる手間について理解しておきましょう。DXは、小さな業務のIT化とは違います。設備だけではなくプロセスや組織体制、ルールなどあらゆる面を変えなければなりません。

既存システムから新しいシステムへの移行は、移行作業だけではなくシステムに慣れる期間も必要です。システムを移行してから、どこかで不具合が生まれることもあります。それらの改善も想定することで精度が高まります。

軌道に乗るまで時間がかかる場合もある

企業がDXに取り組むことは、自社ビジネスとマッチングしたデジタル技術との出会いでもあります。DX検討中の企業は、十分な知見や経験をこれから積み重ねていくことが考えられます。そのため、初期段階で導入したデジタルツールが最適であるかは判断できないでしょう。それは、ツールだけではなく戦略面にも言えることです。

実行と結果から浮き彫りになった課題を改善しながら最適な状態へと調整します。このような期間も想定すると、軌道に乗るまで時間がかかる場合もあります。

DXで活用するデジタル技術

DXは、自社に最適なデジタル技術との出会いが大きなポイントです。ここでは、DXで活用する代表的なデジタル技術を紹介します。

AI(人工知能)

デジタル技術のひとつには、過去のデータから未来を予測することが特徴のAI(artificial intelligence:人工知能)があります。AI(人工知能)は、認識した膨大なデータから最適な回答を導き出す技術として活用が可能です。最近では、コンテンツなどをまったく新しい形でアウトプットするGenerative AI(生成AI)が注目されています。

IoT(モノのインターネット)

IoT(Internet of Things)は、スマート家電やスマートファクトリーなどで注目を浴びているモノとインターネットをつなぐ技術です。IoTの登場により、遠隔から情報をリアルタイムで入手できます。DXであつかうデータのやり取りに欠かせない技術です。

RPA

パソコンで行っている定型業務は、RPA(Robotic Process Automation)により自動化できます。RPAは、企業の事務作業を効率化し業務時間の短縮や省人化に貢献するソフトウェアロボットです。

5G(第5世代移動通信システム)

5Gは、国際電気通信連合が定める移動通信システムの規格です。前規格4Gの20倍の通信速度を実現し、遅延時間が10分の1に短縮されています。その結果、超高速かつ大容量のデータ通信が可能です。5Gの特徴は、IoT導入の追い風となり、DX推進に欠かせないデジタル技術と考えられます。

ブロックチェーン

ブロックチェーンは、暗号を使ってデータをチェーン状に連結保管するデータベース技術です。改ざんリスクの高いデータを取りあつかう場合に有効な技術ではないでしょうか。仮想通貨の基盤に活用され注目されています。公開鍵と秘匿鍵を併用した暗号技術は、DXにおいても活用が期待されます。

NFT

デジタル技術で共有するデータは、コピー改ざんのリスクもあります。その防波堤となる仕組みがNFTによる偽造不可な所有証明を付ける技術です。DXは、オンライン上の取引きを増加させるため、デジタル資産の所有権を明確にする必要があります。NFTは、役割を担います。

xR

メタバースなどで注目を集める仮想世界を創造する先端技術は、xR(クロスリアリティ)として総称されています。デジタル技術を駆使した顧客の非現実体験に役立ちます。xRは、以下3つの技術の総称です。

xR技術 内容 使われる場所

 VR(Virtual Reality:

仮想現実)

仮想現実の空間 企業などの教育・訓練目的に使われる

AR(Augmented Reality:

拡張現実)

現実世界と仮想空間を幾重にも重ねた世界 ・ゲーム
・体験型イベント
・家電のシミュレーション
などに使われる

 MR(Mixed Reality:

複合現実)

360度どの視点からも体感できる現実と仮想を融合した映像技術 設計現場などで建築物の試作を体験するために使われる

モビリティ

本来、流動性や移動性などの表現に使われる単語のモビリティ(Mobility)は、DX観点から自動運転のデジタル技術として考えられます。IoTの普及により膨大なデータの高速通信ができることから、自動運転の技術は進化することでしょう。

モビリティの対象となる技術は、自家用車やバス、タクシーだけではなくドローンや空飛ぶ自動車(eVTOL)など、その領域が発展および拡大しています。

まとめ

DXの定義は、単なる企業のIT化や業務効率を目指したデジタル技術の導入だけではありません。DXは、企業の未来を変革する重要なキーワードです。それだけに取り組む範囲が広くなることも考えられます。そのため、懸念されるポイントは、PoC(Proof of Consept:概念検証)から先に進まずDXをやめてしまうことです。

DXは、改善を目的にした課題が明確でなければなりません。課題は、組織全体で共通認識のできるデータで打ち出す必要があります。PoCから先に進めない状況は、比較対象のデータが明確ではないことも要因として考えられるでしょう。つまり、比較対象のデータを用意するなど、デジタル技術の導入以外の準備も必要です。

DXは、導入すれば即成果が出て自社に都合よく進むとも限りません。必要なことは過去のビジネスモデルからの脱却です。ビジネスモデルの移行には、時間や手間がかかることも理解しましょう。

この記事を書いた人

Harmonic Society編集部です。コンテンツ・マーケティングを軸にWebマーケティングの情報を発信しています。Creating Harmony in small steps, 世の中にもっと調和が訪れますように。

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