目次
導入部
「最近よく聞くSaaSって何だろう?」「うちの会社でも導入すべきなのか?」
デジタル化が進む中で、中小企業の経営者や担当者の方から、こうした声をよく耳にします。GmailやZoomなど、実は既に日常的に使っているサービスの多くがSaaSですが、その仕組みや自社の業務にどう活かせるのか、明確に理解できている方は少ないのではないでしょうか。
この記事では、SaaSの基本的な意味から、中小企業が導入する際のメリット・デメリット、具体的な選び方まで、初心者の方にもわかりやすく解説します。「大きすぎず、小さすぎない、ちょうどいいデジタル化」を実現するための第一歩として、ぜひ最後までお読みください。
SaaS(サース)とは?基本をわかりやすく解説
SaaSの意味と従来のソフトウェアとの違い
SaaSは「Software as a Service(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)」の略称で、「サース」と読みます。インターネット経由で「サービス」として利用するソフトウェアのことです。
従来のソフトウェアとの最も大きな違いは、「所有」から「利用」へのシフトです。
従来のソフトウェア(買い切り型):
- パッケージを購入し、各パソコンにインストール
- 初期費用が高額(数万円〜数十万円)
- バージョンアップは別途費用が必要
- 特定のパソコンでしか使えない
SaaSの場合:
- インターネット経由でアクセスして利用
- 月額料金で利用(数百円〜数千円/ユーザー)
- 自動的に最新版にアップデート
- どのデバイスからでもアクセス可能
例えば、Gmailでメールをやりとりする際、パソコンに特別なソフトをインストールする必要はありません。ブラウザを開くだけで、すぐに使い始められます。これがまさにSaaSの特徴です。
IaaS・PaaSとの違い
SaaSとよく一緒に語られる用語に、**IaaS(イアース)とPaaS(パース)**があります。これらは「クラウドサービス」と総称される仲間ですが、提供される範囲が異なります。
■ IaaS(Infrastructure as a Service)
- 提供されるもの:サーバー、ストレージなどのインフラ
- 例:Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure
- 向いている人:システム開発者、IT担当者
■ PaaS(Platform as a Service)
- 提供されるもの:インフラ+OS+開発環境
- 例:Google App Engine、Heroku
- 向いている人:アプリケーション開発者
■ SaaS(Software as a Service)
- 提供されるもの:すべて(インフラ〜アプリケーション)
- 例:Gmail、Slack、freee
- 向いている人:一般ビジネスユーザー
中小企業が日常業務で使うのは、ほとんどがSaaSです。IT専門知識がなくても、アカウントを作成すればすぐに使い始められます。「使う」のがSaaS、「作る」のがIaaS・PaaSと覚えておくとわかりやすいでしょう。
身近なSaaSサービスの例
実は既に日常的に使っているかもしれません。身近なSaaSサービスをご紹介します。
コミュニケーション系:
- Gmail、Slack、Zoom、Chatwork
ドキュメント・ファイル管理系:
- Googleドキュメント・スプレッドシート、Dropbox、Notion
業務管理系:
- freee、マネーフォワード、kintone
営業・顧客管理系:
- Salesforce、HubSpot
これらに共通しているのは、ブラウザがあれば使える、月額料金制、自動アップデートという点です。既に多くの中小企業がSaaSを活用しているのが現状です。
中小企業がSaaSを導入するメリット
SaaSが中小企業に選ばれる理由は、従来のソフトウェアにはない多くのメリットがあるためです。
初期費用を抑えて始められる
従来のソフトウェア:
- ソフトウェアライセンス:10万円〜50万円
- サーバー機器:50万円〜数百万円
- 初期投資総額:100万円〜数百万円
SaaSの場合:
- 初期費用:0円〜数万円
- 月額料金:1ユーザーあたり数百円〜数千円
例えば、5人の会社でクラウド会計ソフトを導入する場合、月額3,000円程度から始められます。年間でも36,000円です。初年度から大幅なコスト削減が実現できます。
さらに、最初は最小限のプランで始めて、事業の成長に合わせて段階的に機能を追加していけるスモールスタートが可能です。
どこからでもアクセスできる柔軟性
こんな働き方が実現できます:
- オフィスのパソコンで作成した見積書を、外出先のスマートフォンで確認
- 在宅勤務の社員と、リアルタイムで同じ資料を編集
- 複数の店舗や拠点で、同じ顧客情報を共有
従来のソフトウェアでは、特定のパソコンにインストールされているため、そのパソコンの前に座らなければ作業できませんでした。SaaSなら、インターネット接続さえあれば、いつでもどこでも最新のデータにアクセスできます。
自動アップデートでメンテナンス不要
SaaSで不要になる作業:
- ソフトウェアのバージョンアップ作業
- セキュリティパッチの適用
- サーバーの保守・管理
- バックアップの設定・実行
これらの作業は、すべてSaaSベンダー側が自動的に実施してくれます。例えば、会計ソフトの場合、税制改正があると法改正に対応した機能が自動的に追加されるため、何も意識することなく最新の法令に準拠した処理ができます。
IT専門知識がなくても、安心して使い続けられる環境が整っているのが、SaaSの大きな魅力です。
事業規模の変化に柔軟に対応できる
ビジネスは常に変化します。SaaSは、事業規模の変化に柔軟に対応できるのが特徴です。
スケーラビリティの具体例:
- 社員が増えたら、必要な分だけアカウントを追加
- 退職者が出たら、その分のライセンスを削減
- 最初はベーシックプランで開始し、必要になったらプレミアム機能を追加
例えば、創業時は3人でスタートした会社が、5年後に20人規模になったとします。SaaSなら、その時々の人数に応じた料金だけを支払えば良いのです。無駄なコストを払い続ける必要がありません。
SaaS導入で注意すべきデメリットと対策
SaaSには多くのメリットがある一方で、導入前に理解しておくべき注意点もあります。現実的な課題とその対策を知っておくことで、より賢い選択ができます。
カスタマイズに限界がある
SaaSは多くの企業が使うことを前提に設計されているため、自社の業務フローに完全に合わせることは難しい場合があります。
よくある課題:
- 自社独自の業務プロセスに対応できない
- 必要な機能が標準で用意されていない
- 既存システムとの連携が困難
現実的な対策:
■ 業務プロセスの見直し
SaaS導入を機に、非効率な業務フローを標準化・シンプル化することで、かえって業務効率が向上するケースも多くあります。
■ カスタマイズ性の高いSaaSを選ぶ
kintoneやNotionなど、ある程度自由に設定できるSaaSもあります。
■ 複数のSaaSを組み合わせる
一つのSaaSですべてを賄おうとせず、用途に応じて複数のサービスを使い分けることで、より自社に合った環境を構築できます。
ランニングコストが継続的に発生する
SaaSは初期費用が安い反面、利用し続ける限り月額料金を払い続ける必要があります。
現実的な対策:
■ 長期的なコスト試算を行う
導入前に、3年後、5年後のコストをシミュレーションしましょう。月額3,000円のサービスでも、5年間では18万円になります。
■ 年間契約で割引を活用
多くのSaaSは、年間契約にすると月額契約より10〜20%割引になります。
■ 定期的な利用状況の見直し
契約しているSaaSを定期的に棚卸しし、使っていないサービスは解約します。半年に一度は見直しの機会を設けましょう。
実際には、従来のソフトウェアでも保守費用やバージョンアップ費用が継続的に発生していました。SaaSのランニングコストは、それらを含めた総コストで比較することが重要です。
インターネット環境に依存する
SaaSは、インターネット経由でサービスにアクセスするため、ネット接続が必須です。
現実的な対策:
■ 安定したネット環境を整備
業務に使うなら、安定した光回線などの固定回線を用意しましょう。
■ オフライン機能のあるSaaSを選ぶ
GoogleドキュメントやDropboxなど、オフラインでも一部機能が使えるSaaSもあります。
■ ベンダーの稼働率を確認
SaaSベンダーは通常、99.9%以上の稼働率を保証しています。契約前にSLA(サービスレベル契約)を確認しましょう。
現実的には、インターネット環境が整っている日本では、大きな問題になるケースは少ないです。むしろ、災害時にオフィスに行けなくても、自宅や避難先から業務を継続できるメリットの方が大きいと言えます。
データのセキュリティとプライバシー
企業の重要なデータを外部のサーバーに預けることに、不安を感じる方もいるでしょう。
現実的な対策:
■ 信頼できるベンダーを選ぶ
ISO27001認証の取得、プライバシーマークの取得、データセンターの所在地、セキュリティ対策の具体的な内容を確認しましょう。
■ アクセス権限を適切に管理
必要な人に必要な範囲だけアクセスを許可する運用を徹底します。
■ 二段階認証を有効にする
パスワードだけでなく、スマートフォンのアプリなどを使った二段階認証を設定することで、不正アクセスのリスクを大幅に減らせます。
実は、中小企業が自社でサーバーを管理するより、専門のSaaSベンダーに任せた方が安全なケースが多いのです。SaaSベンダーは、セキュリティ対策に多額の投資をしており、専門のセキュリティチームが24時間体制で監視しています。
中小企業に役立つSaaSの種類と代表例
中小企業の業務でよく使われるSaaSを、カテゴリー別にご紹介します。
業務管理・プロジェクト管理系
こんな課題を解決:
タスクの進捗が見えない、誰が何をやっているのか分からない
代表的なSaaS:
- Trello:カンバン方式で視覚的にタスク管理、小規模チームに最適
- Asana:プロジェクト全体の進捗を一元管理、中規模プロジェクト向け
- Backlog:日本企業が開発した国産ツール、日本語サポートが充実
- kintone:業務アプリを自由に作成できる、カスタマイズ性が高い
会計・経理・人事労務系
こんな課題を解決:
経理作業に時間がかかりすぎる、給与計算を効率化したい
代表的なSaaS:
- freee:銀行口座やクレジットカードと自動連携、初心者でも使いやすい
- マネーフォワード クラウド:会計・給与・勤怠などシリーズで展開
- 弥生会計オンライン:老舗会計ソフトのクラウド版、サポート体制が充実
- ジョブカン:勤怠管理・給与計算、飲食店や小売店に人気
顧客管理(CRM)・営業支援系
こんな課題を解決:
顧客情報が個人のExcelに散在、営業の進捗状況が把握できない
代表的なSaaS:
- Salesforce:世界シェアNo.1のCRM、中堅企業以上に適している
- HubSpot:マーケティングから営業まで一元管理、無料プランが充実
- Zoho CRM:コストパフォーマンスが高い、中小企業向けの価格設定
SaaS導入で失敗しないための選び方
SaaS導入の成否は、選び方の段階でほぼ決まります。失敗しないために押さえておきたいポイントをご紹介します。
自社の課題を明確にする
SaaS選びで最も重要なのは、「何を解決したいのか」を明確にすることです。
導入前に整理すべきポイント:
- 現状の課題は何か?(情報共有の遅れ、タスク漏れなど)
- 誰のどんな業務を効率化したいか?
- どの程度の効果を期待するか?
- 予算はどれくらいか?
課題が明確になっていないまま導入すると、「なんとなく使いにくい」という曖昧な理由で定着しないリスクが高まります。
無料トライアルで実際に試してみる
ほとんどのSaaSには、無料トライアル期間が用意されています。この期間を活用せずに導入を決めるのは避けましょう。
無料トライアルで確認すべきこと:
- 実際の業務フローで使えるか
- 操作の難易度は適切か(ITに詳しくない人でも使えるか)
- スマホやタブレットでの使い勝手
- 既存のツールとの連携
最初の1週間で「これは使える」という手応えがないツールは、本格導入しても定着しにくいというのが実情です。
現場の声を聞いて「使いやすさ」を重視する
SaaS導入でよくある失敗が、管理者や経営者だけで決めてしまうことです。
現場の声を聞く具体的な方法:
- トライアル期間中にアンケートを実施
- 実際に使う人を選定チームに入れる
- 「これなら今より楽になる」と感じてもらえるか確認
使いやすさのチェックポイント:
- 直感的に操作できるか(マニュアルを読まなくても使える)
- 必要な情報にすぐアクセスできるか
- 入力の手間が少ないか
自社の現場のITリテラシーに合った「ちょうどいいツール」を選ぶことが、定着の近道です。
サポート体制とベンダーの信頼性を確認する
導入後に必ず直面するのが、「使い方が分からない」「トラブルが起きた」といった場面です。
確認すべきサポート内容:
- 問い合わせ方法と対応時間(メール、チャット、電話)
- レスポンスの速さ
- サポート資料の充実度(マニュアル、FAQ、動画チュートリアル)
- 導入支援の有無
ベンダーの信頼性チェック:
- 運営会社の実績(サービス提供年数、導入企業数)
- セキュリティ認証(ISO27001、プライバシーマーク)
- 口コミ・評判
社内にIT専任者がいない場合、頼れるサポート体制があるかどうかは、長く使い続けられるかを左右します。
SaaSが合わなかった企業の選択肢
「いくつか試したけど、どれもしっくりこない」「自社の業務フローに合わせるのが難しい」——そんな経験をお持ちの企業も多いのではないでしょうか。
SaaS導入がうまくいかない理由
よくある理由:
- 業務フローとツールの機能が合わない
- 入力項目が多すぎる・少なすぎる
- 既存の業務プロセスを変えられない
- 複数ツールの併用で逆に複雑化
「ツールに業務を合わせる」のか「業務にツールを合わせる」のか——このバランスが取れないと、導入は失敗しやすくなります。
自社に「ちょうどいい仕組み」を作るという選択
既製品のSaaSが合わない場合、自社の業務に合わせたシステムを作るという選択肢があります。
「システム開発なんて、大企業がやることでは?」と思われるかもしれません。しかし、最近では中小企業でも手が届く価格と期間で、必要最小限のシステムを構築できるようになっています。
「ちょうどいい仕組み」とは:
- 自社の業務フローに完全に合わせられる
- 必要な機能だけを搭載(無駄な機能がない)
- 現場が使いやすいシンプルな設計
- 将来的な拡張や変更にも対応できる
例えば、Harmonic Societyでは、AI活用により従来の1/3〜1/2程度の費用で、1〜3週間という短期間でのシステム開発を実現しています。「顧客管理と案件管理を一元化したい」「見積作成から請求書発行まで自動化したい」といった自社独自のニーズに応える「ちょうどいいシステム」を作ることができます。
ノーコード・ローコードツールの活用
システム開発とSaaSの中間に位置するのが、ノーコード・ローコードツールです。プログラミング知識がなくても、ドラッグ&ドロップなどの直感的な操作で、業務アプリケーションを作れます。
代表的なツール:
- kintone:業務アプリを自由に作成できる、カスタマイズ性が高い
- Airtable:Excelとデータベースの中間のような使い心地
- Notion:軽量な業務管理に適している
「SaaSでは物足りないけど、フルスクラッチ開発は予算的に厳しい」という企業にとって、ノーコードツールは有力な選択肢となります。
業務フローの見直しから始める重要性
実は、ツールを導入する前に、業務フロー自体を見直すことが最も重要です。
よくある業務の無駄:
- 同じ情報を複数の場所に入力している
- 承認フローが複雑すぎて遅延が発生している
- 誰も見ていない報告書を作り続けている
こうした無駄を残したまま、ツールだけを導入しても、「デジタル化された無駄」が生まれるだけです。
業務フロー見直しのステップ:
- 現状の業務を可視化する
- 本当に必要な作業か問い直す
- 重複や無駄を削減する
- 理想の業務フローを設計する
- ツール導入と並行して業務を変革する
「ツールありき」ではなく、「業務改善ありき」で考えることが、本当の意味でのDX推進につながります。
まとめ:SaaSは手段のひとつ。大切なのは「自社に合った選択」
SaaS導入のポイントをおさらい
SaaSとは:
インターネット経由で利用できるソフトウェアサービス。初期費用が安く、どこからでもアクセスでき、常に最新版が使える点が魅力です。
導入で失敗しないためのポイント:
- 自社の課題を明確にする
- 無料トライアルで実際に試す
- 現場の声を聞く
- サポート体制を確認する
SaaSが合わない場合の選択肢:
- 自社に「ちょうどいい仕組み」を作る
- ノーコード・ローコードツールを活用する
- 業務フロー自体を見直す
最も大切なこと:
SaaSは万能ではありません。**ツールはあくまで手段であり、目的は「自社の課題を解決すること」**です。「有名だから」「他社が使っているから」という理由だけで選ぶのではなく、自社の業務に本当に合っているか、現場が使いこなせるかを基準に判断しましょう。
「自社にとってのちょうどいいデジタル化」を見つけることが、本当の意味でのDX推進なのです。
DXやIT化で悩んだら、まず相談してみる
「Excel管理から脱却したいけど、何から始めればいいか分からない」「SaaSを試したけど、うまくいかなかった」「自社に合うツールが見つからない」
こうした悩みを抱えている中小企業の経営者や担当者の方は少なくありません。情報が溢れる中で、自社に最適な選択を見つけるのは簡単ではありません。だからこそ、まずは専門家に相談してみることをおすすめします。
Harmonic Societyは、「テクノロジーが人を置き去りにしない社会」を目指し、中小企業にとって”ちょうどいい”デジタル化を支援しています。
私たちができること:
- 業務課題のヒアリングと整理
- 最適なSaaSの選定サポート
- 既製品が合わない場合の自社システム開発
- AI活用による業務効率化支援
- 導入後の運用サポートまで一気通貫
大きすぎず、小さすぎない。あなたの会社に「ちょうどいい」仕組みづくりを、一緒に考えさせてください。
まずはお気軽にご相談ください。あなたのビジネスの成長を、私たちが全力でサポートします。
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