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会計システムのAPI連携とは?基本の仕組みと実現方法
「経費精算のデータを毎月何時間もかけて会計ソフトに手入力している」「請求書を発行したら、また会計システムにも同じ内容を入力しなければならない」――こうした二重入力の手間に悩んでいませんか?
会計システムのAPI連携を活用すれば、こうした作業を大幅に自動化できます。システム間で自動的にデータがやり取りされるため、手入力の時間もミスもゼロに近づけることが可能です。
この記事では、会計システムのAPI連携について、基本的な仕組みから具体的なメリット、Freeeやマネーフォワードなどの主要システムの機能、導入時の注意点まで、初心者向けに解説します。
API連携の基本的な仕組み
**API(Application Programming Interface)**とは、「システム同士がデータをやり取りするための窓口」のことです。
わかりやすく例えるなら、コンセントやUSBポートのようなものです。コンセントがあれば、メーカーが違う家電でも電源につなげますよね。同じように、APIという「共通の窓口」があれば、異なる会社が作ったシステム同士でも、スムーズにデータを受け渡しできます。
会計システムで実現できること
API連携を使うと、以下のような自動化が実現します:
- 経費精算システムから承認済みの経費データを自動で会計ソフトに送る
- 請求書発行システムで作成した請求データを会計仕訳として自動登録する
- ECサイトの売上データを毎日自動で会計システムに取り込む
- 給与計算ソフトから給与データを会計システムに連携する
つまり、「人が手作業でやっていたデータの移動を、システムが自動で行えるようにすること」がAPI連携の役割です。
従来の方法との違い
API連携の優位性を理解するため、従来の方法と比較してみましょう。
手入力の場合
経費精算システムで承認されたデータを見ながら、経理担当者が会計システムに一つ一つ手入力します。月間100件の経費精算なら、2〜3時間の入力作業が必要です。
CSV取り込みの場合
一方のシステムからCSVファイルでデータを出力し、もう一方のシステムに手動でインポートします。エクスポート→加工→インポートの手順が必要で、30分〜1時間程度かかります。
API連携の場合
設定さえ完了すれば、システム間で自動的にデータが受け渡されます。人の作業はほぼゼロで、リアルタイムまたは決まった時刻に自動実行されます。
| 比較項目 | 手入力 | CSV取り込み | API連携 |
|---|---|---|---|
| 作業時間 | 多い | 中程度 | ほぼゼロ |
| リアルタイム性 | 低い | 低い | 高い |
| ミスの発生 | 起こりやすい | 起こる可能性あり | ほぼなし |
| 初期設定の難易度 | 不要 | 低い | 中〜高 |
API連携は初期設定に一定の手間はかかるものの、運用が始まれば圧倒的に効率的です。特に毎月・毎日繰り返される定型作業ほど、効果が大きくなります。
API連携で得られる4つのメリット
業務時間を大幅削減
API連携の最大のメリットは、データ入力作業にかかる時間を劇的に削減できることです。
具体的な削減効果の例:
- 経費精算の入力:月間100件 × 3分 = 5時間 → ほぼゼロ
- 請求書データの入力:月間50件 × 5分 = 4時間 → ほぼゼロ
- 売上データの入力:毎日30分 × 20営業日 = 10時間 → ほぼゼロ
月間で合計19時間以上の削減が実現できます。これは経理担当者が約2.5日分の時間を、より付加価値の高い業務に充てられることを意味します。削減された時間で、経営分析や資金繰り計画、税務対策の検討など、会社の成長に直結する業務に注力できるようになります。
入力ミスの防止
人間が手作業でデータを入力する限り、ヒューマンエラーは避けられません。API連携では、システムが自動的にデータを転送するため、こうした入力ミスがほぼゼロになります。
防げるミスの具体例:
- 転記ミス:金額の桁間違い(10,000円を100,000円と入力)
- 勘定科目の間違い:交通費を交際費として計上
- 消費税区分の誤り:課税取引を非課税として処理
- 入力漏れ:承認済みの経費精算を入力し忘れ
- 重複入力:同じデータを二重に登録
特に重要なのは、システム間でデータの整合性が保たれることです。請求書発行システムで「税込110,000円」と発行した請求書は、会計システムにも同じ金額で正確に登録されます。
リアルタイムでの経営数値把握
従来の手入力やCSV取り込みでは、データの反映に数日から週単位のタイムラグが生じます。API連携を活用すれば、リアルタイムまたは準リアルタイムで経営数値を把握できます。
リアルタイム把握のメリット:
- 当月の経費がすぐわかる:月の途中でも、現時点での経費総額を正確に把握
- 売上の進捗をリアルタイム確認:目標に対する達成率を日次で確認し、早期に対策を実施
- キャッシュフローの可視化:入金・支払いの予定と実績をタイムリーに確認
- 予算との比較が容易:予算に対する実績の乖離を早期に発見し、軌道修正
経営判断に必要な数字が「いつでも・すぐに」見られる状態は、変化の激しいビジネス環境での競争力に直結します。
業務の標準化と属人化の解消
中小企業の経理業務でよく見られる課題が、「この作業は〇〇さんしかわからない」という業務の属人化です。API連携による自動化は、この属人化の解消にも大きく貢献します。
API連携を導入する過程では、「どのデータを、どのタイミングで、どう処理するか」を明確に定義する必要があります。この過程で、業務ルールが明文化され、標準化されるのです。
標準化のメリット:
- 引き継ぎが容易:担当者が変わっても、システムが自動で処理するため業務が止まらない
- 教育時間の短縮:新しい担当者は、複雑な入力作業を覚える必要がない
- 業務の透明性向上:誰がいつ何をしたかがシステムに記録され、トレーサビリティが確保される
主要会計システムのAPI機能比較
Freee(フリー)
Freee会計は、クラウド会計ソフトの中でも特にAPI連携に力を入れているサービスです。
主な特徴:
- 豊富な連携実績:数百種類の外部サービスと連携可能
- REST API方式:現代的なAPI設計で、開発者にとって扱いやすい
- OAuth認証対応:セキュアな認証方式で、安全にデータをやり取り
- Webhook機能:Freee側でデータが更新されたときに、外部システムに通知
主な連携先:
経費精算(楽楽精算、ジョブカン経費精算)、請求書発行(Misoca、board)、勤怠・給与(ジョブカン勤怠管理、SmartHR)、EC連携(Shopify、BASE)など
マネーフォワード クラウド会計
マネーフォワード クラウド会計も、Freeeと並んでAPI連携に力を入れているサービスです。
主な特徴:
- シリーズ間の強力な連携:同じマネーフォワード社のサービス同士は、ほぼシームレスに連携
- 豊富なAPI機能:取引登録、仕訳取得、勘定科目管理など必要な機能が揃う
- OAuth 2.0認証:セキュリティへの配慮が高い設計
マネーフォワード クラウドの強みは、バックオフィス業務全体を同じプラットフォームで完結できることです。会計、請求書、経費、給与をすべてマネーフォワード クラウドで統一すれば、API連携の設定もシンプルになります。
弥生会計
弥生会計は、日本国内で長年シェアNo.1を誇る会計ソフトですが、API連携に関しては、クラウド版とデスクトップ版で対応状況が大きく異なります。
**弥生会計オンライン(クラウド版)**は、API連携機能を提供していますが、連携できる外部サービスの種類は、Freeeやマネーフォワードと比べると限定的です。
デスクトップ版は、基本的にAPIによる連携には対応していません。CSV取り込みなど半手動の方法に頼ることになります。
選択のポイント
| 項目 | Freee | マネーフォワード | 弥生会計オンライン |
|---|---|---|---|
| API機能の充実度 | ◎ 非常に充実 | ◎ 非常に充実 | ○ 基本機能は提供 |
| 連携可能サービス数 | ◎ 非常に多い | ○ 多い | △ 限定的 |
| 同社製品との連携 | ○ 一部あり | ◎ 非常に強力 | ○ 一部あり |
選択の目安:
- 多様な外部サービスと連携したい → Freee
- バックオフィス業務全体を統一したい → マネーフォワード クラウド
- 税理士が弥生を使っている → 弥生会計オンライン(ただし連携の制約を理解した上で)
重要なのは、自社の業務フローと、連携したいシステムに合わせて選ぶことです。導入前には、現在使っている(または導入予定の)他のシステムと連携できるか、必ず確認しましょう。
導入時の注意点と失敗を防ぐポイント
コストと期間の目安
API連携の開発費用は、連携の規模や複雑さによって大きく変わります。
初期開発費用の相場:
- シンプルな連携:30万円〜80万円(1対1、基本的なデータのやり取りのみ)
- 中規模の連携:80万円〜200万円(複数システム、ある程度の処理ロジックあり)
- 大規模な連携:200万円〜500万円以上(多数のシステム、複雑な業務ロジック)
ただし、AIを活用した開発手法では、従来の1/3〜1/2程度のコストで実現できるケースも増えています。
月額利用料(ランニングコスト):
- 会計システムのAPI利用料:無料〜月額数千円
- サーバー・インフラ費用:月額5,000円〜3万円程度
- 保守・運用費用:月額1万円〜5万円程度
開発期間の目安:
- シンプルな連携:1〜3週間
- 中規模の連携:1〜2ヶ月
- 大規模な連携:3ヶ月〜6ヶ月
セキュリティ対策
API連携では、重要な会計データを扱うため、適切なセキュリティ対策が必須です。
特に注意すべきポイント:
1. 認証情報の管理
APIキーやアクセストークンは、「システムにアクセスするための鍵」です。ソースコードに直接書き込まない、メールで平文のまま送らない、定期的に更新するなど、適切な管理が必要です。
2. データの暗号化
システム間でデータをやり取りする際は、必ず暗号化された通信(HTTPS)を使用します。
3. アクセス制限とログ管理
特定のサーバーからのアクセスのみ許可し、いつ、誰が、どのデータにアクセスしたかを記録します。
4. 個人情報保護法への対応
会計データには、取引先の企業情報や個人情報が含まれることがあります。データの利用目的を明確にし、必要最小限のデータのみ連携することが重要です。
仕様変更リスクへの対応
FreeeやマネーフォワードなどのSaaS型会計システムは、定期的に機能改善を行います。その際、APIの仕様が変更されることがあり、それまで動いていたAPI連携が突然動かなくなる可能性があります。
仕様変更への対策:
- 公式の通知を定期的にチェックする:開発者向けのメーリングリストやブログを購読
- 最新のAPIバージョンを使う:古いバージョンは廃止されやすい
- 保守契約を結んでおく:仕様変更時の対応を依頼できる体制を作る
定着させるための工夫
「せっかく開発したのに、使いこなせずに放置してしまう」という失敗を防ぐには、以下の工夫が有効です。
1. 現場を巻き込んで要件定義をする
実際に使う現場の担当者にヒアリングを行い、「どの作業が一番大変か」「どんな仕組みなら使いやすいか」を反映させます。
2. 小さく始めて、段階的に拡大する
最初から全ての業務を自動化するのではなく、最も効果が出やすい一部分から始めます。
3. 操作レクチャーと伴走サポート
システムの納品時に、現場担当者向けの操作レクチャーを実施し、導入後1〜3ヶ月は定期的にフォローアップの機会を設けます。
4. マニュアルと問い合わせ窓口の整備
誰でも分かる操作マニュアルと、困ったときに聞ける問い合わせ窓口があることで、担当者が安心して使えます。
自社に合ったAPI連携の実現方法
まず整理すべき業務フローと課題
API連携を検討する前に、まず自社の業務を整理することが最も重要です。
業務整理の具体的なステップ:
ステップ1:現状の業務フローを書き出す
今の業務がどのように流れているのかを可視化します。紙に書くだけでも十分です。
ステップ2:どこに手間がかかっているか洗い出す
各業務にかかる時間と、担当者が感じている課題を書き出します。
ステップ3:優先順位をつける
効果が大きく、実現しやすく、現場の協力が得られやすい業務から優先します。
ステップ4:現在使っているシステムを整理する
自社で使っている全てのシステムやツールをリストアップし、「どのシステムとどのシステムを連携させるべきか」を明確にします。
既製品とカスタム開発の使い分け
API連携を実現する方法は、大きく2つあります。
既製のSaaS連携ツール(Zapier、Make、Power Automateなど)
- メリット:初期費用が安い、すぐに使い始められる
- デメリット:複雑な業務ロジックには対応できない
- 向いているケース:シンプルな連携で十分、まず試してみたい
カスタム開発
- メリット:自社独自の業務ロジックに対応できる、長期的には月額料金を抑えられる
- デメリット:初期費用が高い、開発期間が必要
- 向いているケース:複雑な業務ロジックがある、長期的に使い続ける予定
現実的なアプローチ:
まずSaaS連携ツールで試してみて、限界を感じたらカスタム開発に移行するという段階的なアプローチが有効です。
小さく始めて段階的に拡張する
API連携でよくある失敗は、「最初から完璧なシステムを作ろうとして、結局完成しない」ことです。
段階的な進め方の例:
- 第1段階(1〜2ヶ月):最も手間がかかっている1つの業務を自動化
- 第2段階(2〜3ヶ月後):周辺業務にも拡大
- 第3段階(半年〜1年後):さらに業務全体を最適化
小さく始めることで、早く効果を実感でき、初期投資を抑えられ、失敗のリスクが小さくなります。
信頼できる開発パートナーの選び方
API連携を実現するには、多くの場合、外部の開発会社の力が必要です。
良い開発パートナーの条件:
- 技術力だけでなく、業務理解力がある:自社の業務を理解し、本当に必要な仕組みを提案してくれる
- 小さく始めることを提案してくれる:最初から大規模なシステムを提案する会社は要注意
- 運用・保守まで考えてくれる:操作レクチャー、保守契約、困ったときの対応体制がある
- 過去の実績と事例がある:自社と似た業種・規模の企業での実績があると安心
- 料金体系が明確:見積もりの内訳が分かりやすく、追加費用の条件が明確
見極めるための質問例:
- 「似たような業種での実績はありますか?」
- 「段階的に進めることは可能ですか?」
- 「運用が始まった後のサポート体制はどうなっていますか?」
- 「API仕様が変更された場合の対応はどうなりますか?」
これらの質問に対して、明確に答えられる会社は信頼できます。
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- 小さく始めて段階的に拡張:最初は一部の業務から、徐々に拡大
- 定着までの伴走サポート:導入後も定期的にフォローアップ
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