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APIとは?わかりやすく基本から解説|中小企業のデジタル化入門

目次

「API連携で業務効率化」「API接続に対応」――最近、こうした言葉を目にする機会が増えていませんか?

デジタル化やDXが叫ばれる中、APIという言葉は至るところで使われています。しかし、「実際のところ、APIって何なの?」「うちの会社に関係あるの?」と疑問に感じている経営者の方も多いのではないでしょうか。

安心してください。APIは決して難しい技術ではありません。むしろ、私たちが日常的に使っているスマートフォンのアプリやWebサービスの裏側で、当たり前のように活用されている「つなぐ技術」なのです。

この記事では、APIの基本的な仕組みから中小企業での具体的な活用方法まで、専門用語を使わずにわかりやすく解説します。Excel管理の二重入力に悩んでいる方、SaaSツールをうまく活用できなかった方にこそ、知っていただきたい内容です。

APIとは?基本をおさえましょう

APIは「システム同士をつなぐ橋渡し役」

APIを一言で表現するなら、**「異なるシステムをつなぐ橋渡し役」**です。

私たちの身の回りには、会計ソフト、顧客管理ツール、メール配信サービス、ECサイトなど、さまざまなシステムが存在します。実際の業務では「会計ソフトのデータを顧客管理ツールでも使いたい」「ECサイトの注文情報を在庫管理システムに自動反映させたい」といったニーズが生まれます。

このとき活躍するのがAPIです。APIがあることで、異なるシステム同士が自動的にデータをやり取りし、連携して動くことができます。人間が手作業でデータを移し替える必要はありません。

身近な例で理解する:レストランの注文システム

APIの仕組みを、レストランでの注文に例えてみましょう。

あなたがレストランで食事をするとき、厨房に直接入って料理人に「ハンバーグを作ってください」とお願いすることはありませんよね。その代わりに、ウェイターに注文を伝えます

このレストランの仕組みを、システムに置き換えてみると:

  • お客さん = アプリケーション
  • ウェイター = API
  • 厨房・料理人 = データベースやサーバー

ウェイターは、お客さんの注文を厨房に正確に伝え、できあがった料理を届けます。お客さんは厨房の複雑な仕組みを知らなくても、ウェイターを通じて欲しい料理を手に入れられます。

APIも同じです。アプリはAPIという「ウェイター」を通じて、必要なデータを別のシステムに依頼し、結果を受け取ります。この例えからわかるように、APIは**「システム同士が効率的にコミュニケーションするためのルール」**なのです。

なぜ今、APIが注目されているのか

ここ数年、APIという言葉を耳にする機会が急激に増えました。その背景には、ビジネス環境のデジタル化があります。

クラウドサービスの普及により、インターネット経由で利用できるサービスが一般的になりました。クラウドサービス同士を連携させるには、APIが不可欠です。kintoneとSlackの連携、freeeとGoogleスプレッドシートの連携――こうした便利な使い方は、すべてAPIがあるからこそ実現しています。

また、人手不足が深刻化する中、同じデータを複数のシステムに手入力する非効率な作業を削減したいというニーズが高まっています。APIを活用すれば、一度入力したデータを自動的に複数のシステムで共有できます。

さらに、以前は「すべての機能を備えた大きなシステム」を導入することが理想とされていましたが、現在は**「それぞれ得意な機能を持つサービスを組み合わせる」**という考え方が主流です。顧客管理はSalesforce、メール配信はMailchimp、会計処理はfreee――これらをAPIで連携させることで、自社に「ちょうどいい」システム環境を構築できます。

そして重要なのは、ノーコード・ローコードツールの登場により、プログラミングの専門知識がなくてもAPI連携を実現できるようになったことです。ZapierやMakeといったツールを使えば、クリック操作だけで複数のサービスを連携させることが可能になりました。

APIの仕組みをわかりやすく解説

リクエストとレスポンス:APIの基本的な動き

APIの動作は、**「リクエスト(依頼)」と「レスポンス(応答)」**という2つのステップで成り立っています。これは、私たちの日常会話とまったく同じ構造です。

友人に「今日の天気は?」と尋ねる(リクエスト)と、友人が「晴れだよ」と答える(レスポンス)。この一連のやり取りが、APIの基本的な動きです。

具体的な流れ:

  1. アプリがAPIにリクエストを送る(「東京の今日の天気情報をください」)
  2. APIがサーバーに問い合わせる(適切なデータベースから情報を取得)
  3. APIがレスポンスを返す(「東京、晴れ、気温25度、湿度60%」)
  4. アプリが情報を表示する(ユーザーが見やすい形で画面に表示)

このやり取りは数秒以内に自動的に完了します。重要なのは、このプロセスが決められたルールに従って行われるため、異なる企業が作ったシステム同士でもスムーズに連携できることです。

データのやり取りとセキュリティ

APIを通じてやり取りされるデータは、**JSON(ジェイソン)**という形式で送受信されることが一般的です。JSONは、人間にも読みやすく、コンピュータも処理しやすいデータ形式で、整理された買い物リストのようなものです。

たとえば、顧客情報をAPIでやり取りする場合、「名前:山田太郎、メールアドレス:yamada@example.com」のように、項目名と値がセットになった形でデータが整理されます。この形式のおかげで、異なるシステム間でも正確に情報を理解し合えるのです。

セキュリティ対策も重要です。誰でも自由にデータにアクセスできてしまっては、情報漏洩のリスクがあります。そこで使われるのがAPIキーという仕組みです。

APIキーは、いわば**「会員証」や「合鍵」**のようなもので、正しいAPIキーを持っている人だけがデータにアクセスできます。APIキーは以下の役割を果たします:

  • 認証:このリクエストは許可されたユーザーからのものか確認
  • 認可:このユーザーは、この情報にアクセスする権限があるか確認
  • 利用量の管理:1日に何回までリクエストできるか制限

中小企業が注意すべきポイントは、APIキーをパスワードと同様に厳重に管理し、定期的に更新すること、そして使わなくなったキーは無効化しておくことです。

私たちの身の回りにあるAPI活用事例

天気予報アプリ

スマートフォンの天気予報アプリは、APIの代表的な活用例です。あなたが使っている天気アプリは、自社で気象観測所を持っているわけではありません。気象庁や民間の気象情報会社が提供する天気予報APIを利用して、データを取得しているのです。

この仕組みのメリットは、開発コストの削減、常に最新情報の表示、専門性の活用です。同じ天気APIを使っても、アプリごとにデザインや機能は異なります。APIという共通基盤の上に、独自の価値を乗せることができるのです。

これは中小企業のシステム開発にも応用できる考え方です。すべてを自社開発するのではなく、既存のAPIを活用しながら、自社独自の機能に注力することで、効率的にシステムを構築できます。

ソーシャルログイン

最近、会員登録が必要なWebサイトで「Googleでログイン」「LINEでログイン」といったボタンを見かけることが増えました。これもAPI連携の典型例です。

**OAuth(オーオース)**という認証APIを使うことで、わずか数秒で会員登録とログインが完了します。企業側はセキュリティの向上、登録率の向上、開発コストの削減といったメリットがあり、ユーザー側はパスワード管理が不要で、登録が簡単というメリットがあります。

地図サービスと決済システム

Google MapsやApple Mapsといった地図サービスも、API経由で多くのアプリに組み込まれています。飲食店予約アプリの店舗位置表示、配送管理システムの配達員追跡、不動産サイトの物件周辺環境確認など、すべて地図APIを活用しています。

もし各企業が独自に地図データを作成しようとしたら、莫大なコストと時間がかかります。しかしAPIを使えば、Googleが維持・更新している高品質な地図データを、自社のサービスに組み込むことができます。

ECサイトの決済機能も、決済APIによって実現されています。Stripe、PAY.JP、Square、PayPalなどの決済APIを使えば、クレジットカード情報を安全に処理し、注文から配送、会計処理までを自動化できます。

中小企業がAPIを活用するメリット

Excel管理からの脱却

多くの中小企業で、注文情報をExcelに入力し、同じ内容を会計ソフトに手入力し、顧客情報を別のExcelファイルにコピー&ペーストする――こんな状況が起きていませんか?

このような二重入力・三重入力は、時間の無駄であるだけでなく、入力ミスのリスクも高めます。APIを活用すれば、こうした状況を一変させることができます。

改善前:

  • 営業担当がExcelで見積書を作成
  • 受注後、会計担当が会計ソフトに手入力
  • 在庫担当が在庫管理表を手動更新
  • 月末に各データを突き合わせて確認

→ 同じデータを3回入力、月末の確認作業に半日

改善後:

  • 営業担当が見積・受注管理システムに入力
  • APIが自動的に会計ソフトに売上データを連携
  • APIが在庫管理システムの在庫数を自動更新
  • リアルタイムでデータが同期され、常に最新状態

→ 入力は1回だけ、月末の確認作業が不要

実際にHarmonic Societyが支援したある企業では、API連携によって月間40時間の作業時間を削減できました。削減できた時間は、より付加価値の高い業務に充てることができます。

既存システムを活かしながら段階的に改善

「システムを刷新したいけど、今使っている会計ソフトは変えたくない」「顧客管理だけ改善したいけど、全システムを入れ替えるのは予算的に厳しい」――こうした悩みを持つ経営者は多いでしょう。

APIの大きなメリットは、既存のシステムを活かしながら、必要な部分だけを改善できることです。

たとえば、まず顧客管理システムを新規導入してAPIで既存の会計ソフトと連携し、次に営業支援機能を追加し、その後に在庫管理システムを統合する――このように、「ちょうどいい」タイミングで、「ちょうどいい」機能を追加していくことができます。

一度にすべてを変える必要はありません。事業の成長に合わせて、必要な機能を柔軟に追加・変更できるのが、API活用の強みです。

API連携でできること・できないこと

API連携で実現できること

API連携によって、実際に多くの企業が効果を実感している業務効率化の例をご紹介します。

データの自動連携による入力作業の削減は、API連携が最も得意とする領域です。受注情報を会計ソフトに自動転記、顧客情報を複数のシステムで同期、在庫数の自動更新、売上データの自動集計――これらは、人間が手作業で行っていたデータの転記作業を、ほぼ100%自動化できます。

また、リアルタイムな情報共有により、営業担当が外出先から入力した情報がすぐに社内で共有され、在庫状況が常に最新の状態で把握でき、配送状況をお客様にリアルタイムで通知できます。情報の鮮度が保たれ、意思決定のスピードが上がります。

さらに、決済機能、地図表示、SMS送信、本人確認など、既存サービスの機能を自社システムに取り込むことができます。これらの機能をゼロから開発する必要がなく、APIを組み込むだけで利用できます。

API連携だけでは解決できない課題

一方で、API連携には限界もあります。導入前に知っておくべき「できないこと」も正直にお伝えします。

業務フロー自体の問題は解決できません。API連携は「システム間のデータのやり取り」を自動化するものです。承認ルートが複雑すぎる、担当者の役割分担が不明確、不要な業務プロセスが残っている――こうした問題は、API導入の前に業務フロー自体を見直す必要があります。

また、連携したいサービスがAPIを提供していなければ、連携できません。特に古い業務システム(レガシーシステム)、独自開発された社内システム、APIを公開していないサービスとの連携は、別の方法を検討する必要があります。

さらに、データの質は改善されません。顧客情報に重複や誤りが多い、商品マスタが整理されていない、データの入力ルールが統一されていない――こうした問題がある場合、API連携の前に**データクレンジング(データの整理・修正)**が必要です。

自社に合った活用方法の見極め方

API連携が効果的なケースは以下の通りです:

  • 同じデータを複数のシステムに入力している
  • データの転記ミスが頻繁に発生している
  • 月末・月初に集計作業で残業が発生している
  • リアルタイムな情報共有ができていない
  • 既存のシステムは活かしつつ、機能を拡張したい

一方、業務フローが整理されていない、データの入力ルールが統一されていない、使っているシステムがAPIに対応していない場合は、まず業務整理やデータ整理から始めることをお勧めします。

API活用を始める前に知っておきたいこと

ITに詳しくなくても大丈夫

結論から言えば、APIを活用するために、経営者や業務担当者がプログラミングを理解する必要はありません

必要なのは技術知識ではなく、業務知識です。自社の業務フローを説明できること、解決したい課題を言語化できること、理想の業務の流れをイメージできること――これらがあれば十分です。

実際の役割分担では、経営者・業務担当者が業務要件の整理を行い、開発会社・エンジニアが技術的な実現方法の検討やシステムの設計・開発を担当します。それぞれの得意分野を活かした役割分担ができます。

Harmonic Societyでは、IT用語を使わず、業務の言葉でヒアリングを行います。「API」や「システム連携」といった言葉を理解していなくても、まったく問題ありません。

スモールスタートで始める

API連携を検討する際、多くの経営者が「一気に全部を改善しなければ」と考えがちです。しかし、それはリスクも大きく、費用も高額になります。

お勧めするのは、**「スモールスタート」**の考え方です。最小限の機能から始めることで、初期投資を抑えられ、効果を早く実感でき、途中で軌道修正でき、失敗してもダメージが小さいというメリットがあります。

たとえば、まず最も効果の高い1つの業務から始め(1〜3週間、30万円〜)、次に関連する業務に拡大し(1〜2ヶ月、50万円〜)、最後に全体最適化する(2〜3ヶ月、100万円〜)という段階的なアプローチが効果的です。

費用感と導入期間の目安

API連携の費用は、連携するシステムの数や機能の複雑さによって大きく変わりますが、参考となる目安をお伝えします。

Harmonic SocietyのAI活用開発の場合:

  • 最小構成(単一機能のシステム):30万円〜50万円、1〜3週間
  • 標準構成(複数機能統合、2〜3システム連携):50万円〜150万円、1〜2ヶ月
  • フル構成(業務フロー全体の自動化):150万円〜、2〜3ヶ月

AI技術とモダン開発手法を活用することで、従来の1/3〜1/2程度の費用で実現可能です。

投資回収の目安:

月間40時間の作業を削減できた場合、時給換算2,000円 × 40時間 = 月8万円の人件費削減となり、年間では96万円の削減効果があります。初期投資50万円なら、約6ヶ月で回収できます。

まとめ:APIは中小企業のデジタル化の第一歩

APIは業務改善の選択肢のひとつ

この記事で最もお伝えしたかったこと――それは、APIは決して難しい技術ではない、ということです。

APIとは、「異なるシステム同士をつなぐ橋渡し役」。データの二重入力をなくす、情報をリアルタイムで共有する、既存システムを活かしながら機能を拡張する――こうした当たり前の業務改善を実現するための、ひとつの選択肢に過ぎません。

プログラミングの知識は不要です。必要なのは、自社の業務への理解と、改善したいという意欲だけです。

自社に「ちょうどいい」仕組みを作る

大企業のような大規模システムは必要ありません。高機能すぎるSaaSを無理に使いこなす必要もありません。中小企業に必要なのは、自社の規模と業務に「ちょうどいい」仕組みです。

「ちょうどいい」とは、必要な機能だけがあり、現場の人が使いこなせ、予算内で実現でき、事業の成長に合わせて拡張できる――そういう仕組みです。

まずは現状の課題整理から

「API連携を導入しよう」といきなり決める必要はありません。まずは、自社の現状を整理することから始めましょう。

どんな業務に時間がかかっているか、どんなミスが発生しているか、どんな情報がリアルタイムで共有できていないか、理想の業務の流れはどうあるべきか――これらを箇条書きのメモにまとめるだけで十分です。

その上で、「API連携が適切な解決策なのか」「他にもっと良い方法があるのか」を、専門家と一緒に考えていけばよいのです。

Harmonic Societyがお手伝いできること

Harmonic Societyは、中小企業のデジタル化を伴走支援する会社です。

業務課題の整理から一緒に考え、「ちょうどいい」解決策を提案し、AI活用で短期間・低コストで開発し、最小構成からスモールスタートし、導入後も継続的にサポートします。

こんな企業様におすすめです:

  • Excel管理から脱却したい
  • 業務効率化したいが、何から始めればいいかわからない
  • SaaSを導入したが使いこなせていない
  • 既存システムを活かしながら機能を拡張したい
  • 大手の開発会社に見積もりを取ったが予算が合わなかった
  • ITに詳しくないので、丁寧にサポートしてほしい

まずはお気軽にご相談ください。初回相談は無料で承っています。あなたのビジネスの成長を、私たちが全力でサポートします。

師田 賢人

一橋大学商学部を卒業後、Accenture Japanに新卒入社し、ITコンサルタントとして大手企業のシステム導入・業務改善プロジェクトに従事。その後、Webエンジニアとしての実務経験を積み、2016年に独立。 独立後は、企業向けのWebシステム開発・業務効率化ツール構築を中心に、80件以上のプロジェクトを担当し、100社以上の企業と取引実績を持つ。技術領域ではブロックチェーン分野にも精通し、200名以上の専門家への取材・記事執筆を経験。 2023年にHarmonic Society株式会社を設立し、現在はAI駆動のWebサイト制作・業務システム開発・自動化ソリューションを提供。 中小企業から教育機関まで、幅広いクライアントのDXを支援している。

ちょっとした業務の悩みも、気軽にご相談ください。

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