Webサーバーとアプリケーションサーバーの違い|Nginx+Gunicorn・PHP-FPM・Node.jsの構成を理解する

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目次

「FlaskやFastAPIは python app.py で動くのに、なぜ本番ではGunicornとNginxが必要なのか」「PHP-FPMとは何で、Apacheとどう違うのか」「Node.jsはそれ自体がHTTPサーバーなのだから、Nginxはいらないのでは」。フレームワークのチュートリアルを終えた後、本番構成に進もうとすると必ずぶつかる疑問です。

この記事では、Webサーバーとアプリケーションサーバーの役割分担を「何を担当し、何を担当しないか」で整理し、Python(WSGI/ASGI)・PHP(PHP-FPM)・Node.jsそれぞれの典型構成、両者をつなぐUnixソケット接続、そして「なぜ本番でアプリサーバーを直接公開しないのか」を仕組みから説明します。リバースプロキシとしてのNginx設定そのものはリバースプロキシとは?で解説していますので、本記事では構成を選ぶための考え方に集中します。

Webサーバーとアプリケーションサーバーの役割分担

「HTTPを喋る係」と「コードを動かす係」

Webサーバー(Nginx・Apache・Caddyなど)は、HTTPという通信を専門に処理するプログラムです。TLSの暗号化と復号、静的ファイルの配信、リクエストの受付とバッファリング、圧縮、リダイレクト、アクセス制御などを高速かつ安全に行うことに特化しており、アプリのコードは動かしません。

アプリケーションサーバー(Gunicorn・Uvicorn・PHP-FPM・Puma・Tomcatなど)は、あなたが書いたPythonやPHPのコードをプロセスとして常駐させ、リクエストを受けてコードを実行し、レスポンスを返す役割です。フレームワーク付属の開発用サーバー(flask runphp -S)はこの役割の簡易版で、単一プロセス・エラー時の情報表示・ホットリロードといった開発向けの設計になっています。

処理Webサーバー(Nginx)アプリサーバー(Gunicorn等)
TLS終端(HTTPSの復号)担当基本的に担当しない
静的ファイル配信(画像・CSS・JS)担当(sendfileで高速)できるが遅く、ワーカーを浪費する
リクエスト・レスポンスのバッファリング担当担当しない
圧縮・キャッシュ・レートリミット担当ライブラリで可能だが本来の役割ではない
アプリコードの実行担当しない担当(複数ワーカーで並列実行)
複数アプリの振り分け(ドメイン・パス別)担当(リバースプロキシ)担当しない

言語別の典型構成|WSGI・ASGI・PHP-FPM・Node.js

Python: Nginx → Gunicorn/Uvicorn(WSGI/ASGI)

Pythonでは、Webサーバーとアプリの間にWSGI(同期)またはASGI(非同期)という標準インターフェースがあり、Flask/DjangoはWSGI、FastAPI/StarletteはASGIに対応しています。Gunicornは複数のワーカープロセスを管理するマスターで、WSGIアプリを直接動かすほか、UvicornWorker を指定してASGIアプリも動かせます。

# Flask/Django(WSGI): CPUコア数×2+1程度のワーカーが目安
gunicorn --workers 5 --bind unix:/run/myapp/app.sock myproject.wsgi:application

# FastAPI(ASGI): Gunicornにプロセス管理を任せ、Uvicornで非同期実行
gunicorn --workers 4 --worker-class uvicorn.workers.UvicornWorker \
         --bind unix:/run/myapp/app.sock main:app

Gunicornの公式ドキュメント自身が「Nginxのようなプロキシの背後で使うこと」を推奨しています。理由は後述する「遅いクライアント」の問題です。FastAPIの基本はFastAPI入門を参照してください。

PHP: Nginx → PHP-FPM(FastCGI)

PHPは歴史的にApacheのモジュール(mod_php)としてWebサーバー内で実行されてきましたが、現在の主流はPHP-FPM(FastCGI Process Manager)です。PHP-FPMはPHPを実行するワーカープロセスのプールを常駐させ、NginxからFastCGIプロトコルでリクエストを受け取ります。Nginx側では .php へのリクエストだけを fastcgi_pass で転送し、それ以外の静的ファイルは自分で配信します。

# /etc/php/8.3/fpm/pool.d/www.conf の主要項目
listen = /run/php/php8.3-fpm.sock
listen.owner = www-data
listen.group = www-data
pm = dynamic
pm.max_children = 20      # 同時に実行できるPHPプロセス数の上限
pm.start_servers = 4
pm.min_spare_servers = 2
pm.max_spare_servers = 6

# Nginx側(抜粋)
location ~ \.php$ {
    include fastcgi_params;
    fastcgi_pass unix:/run/php/php8.3-fpm.sock;
    fastcgi_param SCRIPT_FILENAME $document_root$fastcgi_script_name;
}

pm.max_children は「1プロセスあたりのメモリ使用量×この値」がサーバーのメモリに収まるように決めます。WordPressなら1プロセス30〜60MB程度になることが多く、それを基準に逆算します。

Node.js: Nginx → Node(それ自体がHTTPサーバー)

Node.jsはHTTPサーバー機能を標準で持ち、ExpressやNext.jsはそのまま listen(3000) でリクエストを受けられます。この点でPythonやPHPとは事情が異なりますが、それでも本番ではNginxを前段に置くのが一般的です。TLS終端・静的配信・複数アプリの同居・バッファリングをNodeのイベントループから切り離せるからです。マルチコアを活かすにはPM2のクラスターモードやNodeの cluster モジュールでプロセスを複数起動し、Nginxの upstream で分散します。Express自体の作り方はNode.js+ExpressでREST APIで解説しています。

Unixソケット接続の利点と注意点

同一ホストならTCPよりUnixソケット

NginxとアプリサーバーはTCP(127.0.0.1:8000)でもUnixドメインソケット(/run/myapp/app.sock)でも接続できます。同じマシン上であればUnixソケットが有利です。TCPスタックを通らないためオーバーヘッドがわずかに小さく、何よりポートを一切開かないので、ファイアウォールの設定ミスでアプリサーバーが外部から直接叩かれる事故が構造的に起きません。アクセス制御はソケットファイルのパーミッションで行い、Nginxの実行ユーザー(Ubuntuなら www-data)が読み書きできる必要があります。

# systemdでGunicornを起動する際のソケット権限の例
# /etc/systemd/system/myapp.service(抜粋)
[Service]
User=myapp
Group=www-data
RuntimeDirectory=myapp
ExecStart=/opt/myapp/.venv/bin/gunicorn --workers 4 \
    --bind unix:/run/myapp/app.sock --umask 007 myproject.wsgi:application
# umask 007 → ソケットが rw-rw---- (660) で作られ、www-dataグループから接続可能

一方、アプリサーバーが別ホストやコンテナにある場合はTCPしか選べません。Docker Composeでは各サービスが独立したネットワーク名前空間を持つため、proxy_pass http://app:8000 のようにサービス名とポートで接続します。

なぜ本番でアプリサーバーを直接公開しないのか

遅いクライアントがワーカーを占有する

最も重要な理由は「遅いクライアント」の問題です。Gunicornの同期ワーカーやPHP-FPMのプロセスは、1つのリクエストを処理している間、他のリクエストを受けられません。モバイル回線のユーザーが1MBのレスポンスを30秒かけてダウンロードすると、その30秒間ワーカーが1つ塞がります。ワーカーが5つなら、遅いクライアントが5人来た時点で全員が待たされます。悪意ある攻撃者が意図的に遅く接続すれば(Slowloris攻撃)、数十本の接続でサービスを止められます。

Nginxを前に置くと、Nginxはリクエスト本文を受け取り終えてからアプリサーバーに渡し、レスポンスも一気に受け取ってバッファし、あとはクライアントのペースに合わせてNginxが送ります。アプリのワーカーが拘束されるのは「コードの実行時間」だけになり、イベント駆動で数千接続を保持できるNginxが遅いクライアントの相手を引き受けます。この「バッファリング」こそ、Webサーバーを前段に置く最大の価値です。

その他の理由

  • TLS終端: 証明書の管理・更新・暗号スイートの設定をNginxに集約し、アプリは平文HTTPだけ扱えばよい。
  • 静的ファイル: Pythonプロセスで画像を返すのは、Nginxの sendfile に比べて桁違いに非効率。
  • 1024番未満のポート: 80/443で待ち受けるにはroot権限か特別な設定が必要。アプリはroot以外で動かすべき。
  • HTTPの厳密な処理: 不正なヘッダーや巨大リクエストの拒否、タイムアウト、リクエスト数制限など、防御をアプリに実装しなくてよい。
  • 無停止デプロイ: アプリを再起動している間もNginxが接続を受け、グレースフルシャットダウンと組み合わせてリクエストの取りこぼしを防げる。

トラブル事例:Nginxが502を返し「Permission denied」が出る

症状

DjangoアプリをGunicorn+Unixソケットで構成し、curl --unix-socket /run/myapp/app.sock http://localhost/ では正常に応答するのに、Nginx経由では502 Bad Gatewayになります。Nginxのエラーログには connect() to unix:/run/myapp/app.sock failed (13: Permission denied) と記録されていました。

原因

Gunicornを myapp ユーザー・myapp グループで起動しており、ソケットファイルが srwxr-xr-x myapp myapp で作られていました。Unixソケットへの接続には書き込み権限が必要ですが、Nginxのワーカーは www-data で動いているため、「その他」に書き込み権限のないソケットに接続できなかったのです。curlでの確認はrootで実行していたため気づけませんでした。

対処

  1. systemdユニットの Group=www-data--umask 007 を設定し、ソケットを 660 myapp:www-data で作成させる。
  2. ソケットの置き場所 /run/myapp 自体に www-data が入れるよう、RuntimeDirectoryMode=0750 とグループ所有を確認する。
  3. 再起動後、sudo -u www-data curl --unix-socket /run/myapp/app.sock http://localhost/ で「Nginxと同じユーザーで」接続できることを確認する。

SELinuxが有効なRHEL系では、これに加えて httpd_t がソケットに接続できるコンテキストかどうかも関わってきます。502の切り分けは「誰のユーザーで、どのソケット/ポートに、どんな権限で」を順に確認するのが定石です。

まとめ

Webサーバーとアプリケーションサーバーは競合する存在ではなく、得意なことが違う分業相手です。

  1. Nginxは「HTTPを喋る係」で、TLS・静的配信・バッファリング・振り分けを担当する。
  2. Gunicorn/Uvicorn・PHP-FPM・Node.jsは「コードを動かす係」で、ワーカーの数とメモリで性能が決まる。
  3. 同一ホストならUnixソケットで接続し、ポートを開けない。パーミッションはNginxの実行ユーザーに合わせる。
  4. アプリサーバーを直接公開しないのは、遅いクライアントからワーカーを守るため。

まずは自分の本番構成で「TLSはどこで終端しているか」「静的ファイルは誰が返しているか」「アプリサーバーのポートは外から見えないか」の3点を確認してみてください。Nginxの基本構築はLinux×Nginx入門で解説しています。本番構成の設計や既存環境のレビューが必要な場合は、Harmonic Societyのシステム開発・インフラ支援にご相談ください。

#Webサーバー#アプリケーションサーバー#Gunicorn#PHP-FPM

Harmonic Society

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