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生体認証とは?メリット・デメリットと活用場面【事例有り】

AI技術が飛躍的に進む現代では「生体」を利用した認証技術がさまざまな場面で活用されています。個人データの管理において高い機密性を求められる場面でも。生体認証技術は私たちの生活に普及し、ごく一般的な認証手段と言えるまでに浸透しました。

そこで今回は、改めて生体認証の種類やメリット・デメリットをまとめ、どのような場面で生体認証が使われているか。後半では、AIと連動した生体認証の実用例についても記していますので、ぜひ最後までお読みください。

それでは、生体認証の種類からみていきましょう。

生体認証の概要と種類

生体認証とは、身体の特性を利用して個人を識別するシステムです。その人にしかない身体的特徴を活用することにより、高度なセキュリティを確保する認証手法として評価されています。

ユーザーはあらかじめ生体情報をシステムに登録し、認証時に登録情報との比較を瞬時に行うことで、本人を特定することができます。

まずは、主な認証方法からご紹介していきます。

認証方法 特定の要素 特性
指紋  指の紋路の特徴  装置の大きさが小さく設置費用が比較的安い。ただし、指の清潔さや乾燥状態等が認証の精度に影響を及ぼす。
 顔の形状、目や鼻の位置と形の特徴  手間なく行うことが可能だが、マスクや眼鏡の使用、照明の状態、顔の老化などが認証の精度に影響を及ぼす。
掌紋  手のひら全体の紋理(筋模様)の特徴  指紋と比較し、装置の大きさが大きくなる。手のひらの清潔さや乾燥状態が認証の精度に影響する。
静脈  手や指の内側にある静脈(血管)の特徴  認証の精度が非常に高く、偽装も難しい。しかし、装置が大きく、体調や環境が認証の精度に影響する。
声紋  声の特徴  手間なく行うことが可能だが、体調の変化や周囲の騒音などが認証の精度に影響する。
虹彩  目の虹彩の特徴  年齢による変化が少なく、非常に高い認証精度がある。ただし、照明の状態が認証の精度に影響を及ぼす。
眼球血管  目の白目部分にある血管の特徴  簡単に認証ができ、装置が安価(スマートフォン等の一般的なカメラとアプリケーションで実現可能)。

このように、一言で「生体」と表現しても、色々な活用方法があります。

では、生体認証がここまで普及している理由とは何なのでしょうか。次の章では、生体認証のメリットをお伝えしていきます。

生体認証のメリット

ここまでご紹介した通り、生体認証にはさまざまな認証方法があります。そして、どんな認証方法を使用したとしても、「認証する側」と「認証される側」に役割が分かれます。ここでは、両者のメリットをお伝えしていきます。

①認証する側のメリット

個人を認証する側にとって、生体認証はたくさんのメリットを持っています。
代表的なものは、セキュリティが向上し、不正アクセスや侵入といったリスクを軽減できることです。また、イベントの入場管理など、多数の来場者を効率的に認証する目的にも役立ちます。

たとえば、日本の国際空港では、自動化ゲートによる指紋認証や顔認証が導入されています。これにより、出入国審査が自動化され、スムーズかつ正確な手続きが可能になりました。

さらに、非接触方式である顔や声の認証、虹彩認証などは衛生的な観点からも利点があります。接触方式ではたくさんの人々が触れるため感染症の心配がありますが、非接触方式ではこのようなリスクを軽減できます。病院や食品工場などの施設では特に効果的な手段となります。

近年では、コロナが流行したことにより非接触の生体認証は大きく普及し、公的機関や企業においても導入が進められています。

続いて、認証される側のメリットをみていきましょう。

②認証される側のメリット

生体認証の一番大きなメリットは、認証を受ける個人にとって認証情報の管理負担が減り、セキュリティがより強固になるという点です。

私たちの生活には、ATMやスマートフォン、オンラインサービスなど、多くの場面で本人認証が必要です。物理的な鍵やカードは、紛失や盗難のリスクが存在します。また、IDとパスワードの組み合わせは忘れたり他人に知られたりするリスクがあります。事実、オンラインサービスの普及に伴い、不正アクセスによる事件が増加しています。

本来であれば、適切に管理されたIDとパスワードでこれらのリスクを防げるはずですが、複雑なパスワードを厳密に管理するのは負担がかかります。多くの人がパスワードをメモしたり、推測されやすい単純なものにしてしまうのが現実はないでしょうか。

そんな生体認証機能ですが、利点と同時にリスクも抱えています。次はそのデメリットについてみていきます。

生体認証のデメリット

ここからは、生体認証がもたらすデメリットについて考えていきます。生体認証技術を導入する際には、以下の点に注意が必要です。

①「生体」が変化する可能性がある

まず、生体情報が変化する可能性があります。

認証対象となる身体の部位が変化した場合、正確な認証が行えなくなる可能性があります。例えば、顔認証ではマスクやメガネを着用している場合に認識が妨げられたり、指紋認証では怪我により指紋が変化したりすることが考えられます。

このような場合には、再度登録手続きが必要となります。近年ではAIの進歩にともなう認証技術の向上により改善が図られているものの、物理的な認証と比較して、完全ではありません。

②生体情報の流出

生体認証は非常に便利ですが、一度でも情報が外部に漏洩すると、生体情報の再設定が難しいという欠点もあります。

生体情報が漏洩する例は、以下のようなものがあります。

・他人の指紋をゼラチンなどで複製する
・他人の目の虹彩を紙に印刷する
・石こうや紙で他人の3Dマスクを制作する

このような生体情報の流出や盗難を完全に防ぐことは困難です。

生体認証とあわせて別途パスワードやIDを設定するなど、代替手段を用意することが必要といえます。

これらのデメリットを踏まえ、適切な生体認証技術を選択しましょう。

さて、ここまで生体認証の可能性やリスクを含め、生体認証機能の大枠について説明してきました。次では、いよいよ具体的な活用の場面について触れていきます。

生体認証の詳細と活用される場面

生体認証をより詳しくお伝えするために、日常生活でもよく使われる「顔認証」と「指紋認証」に注目し、その詳細と活用される場面をご紹介していきます。

①顔認証

成田空港の全日空と日本航空の国際線、羽田空港の一部航空会社の国際線において、顔認証技術を活用した搭乗手続きシステムが活用されています。

このシステムでは、個々の顔画像、パスポート写真、搭乗券のデータが、顔認証に対応したチェックイン端末に紐付けられます。それにより、手荷物の預け入れや保安検査場、搭乗ゲートの通過に際し、設置されたカメラによる顔識別だけで手続きや通行が可能となります。

また、顔画像データは24時間以内に完全に削除され、データの情報漏洩リスクを少しでも抑える工夫が施されています。

②指紋認証

指紋とは、指先の皮膚の汗腺の出口が隆起してできる模様のことです。この模様は全ての人で異なり、一生変わらないため、個人を識別するための情報として蓄積することができます。

スキャン技術の進展や認証システムの高度化、さらには指紋を読み取るセンサーの小型化などの進歩により、指紋認証はパソコンレベルでも利用できるようになりました。

そのため、入退室時の認証銀行のATMのセキュリティパソコンやUSBメモリへのアクセス制限自動車の盗難防止システムなど、さまざまな場面で広く活用されるようになってきています。

指紋の読み取りには、光学方式と半導体方式の2つがあります。指紋認証の弱点としては、指紋を写し取られたり、シリコンなどの素材で指紋を偽造される可能性が比較的容易であることが挙げられます。

指紋認証の歴史は古く、犯罪捜査の際に残された指紋から犯人を特定する場面は、ドラマなどでもよく見かけるかもしれません。日本でも1911年(明治44年)に警視庁が指紋制度を導入しています。

このように、さまざまな場面で生体認証は活用されています。続いて、実際に活用されている事例を通して、生体認証のイメージをさらに深めていきましょう。

AIを活用した生体認証の実用例「センス・サンダー」

マスクをかぶったままでも体温を計測できる画期的なシステムが「SenseThunder(センス・サンダー)」というAI検温ソリューションです。これは株式会社ソフトバンクによって開発されました。

この革新的なソリューションは、新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるための対策として注目されており、イオンモールへの導入が発表されたことで大きな注目を集めました。

「SenseThunder」の特筆すべき特徴の1つは、AIの顔認識技術と赤外線カメラを使用して、「マスクを着用したままでも体温を計測できる」という点です。これまでは、体温を計測するにはマスクを外す必要がありましたが、現在のマスク着用が推奨される状況において、体温計測のためにマスクを外すことは非効率的でした。

新型コロナウイルスの感染リスクを最小限に抑えるためにも、マスクを着用したままで効果的な体温計測ができる「SenseThunder」の開発は、画期的であるといえます。

このように実用性の高い生体認証機能ですが、その活用については課題もあります。最後に、生体認証のこれからをみていきましょう。

生体認証の課題

生体認証システムにおいて、使用される生体情報は通常、指紋や顔の画像そのものではなく、個人の特徴として変換されたデータが扱われます。

このデータは、日本の個人情報保護法においては個人識別符号として定義され、厳格な管理が求められています。データの漏洩を防ぐためには、暗号化や不正アクセス対策だけでなく、特徴のデータから、元の生体情報を復元できない不可逆的な変換方式を採用することも重要です。

生体認証に関しては、指紋や顔の画像などの生体情報そのものがデータとして保管されることへの懸念も存在します。しかし、実際に多くの生体認証システムでは、特徴としてのみが保管されており、この点についての認識を広めることも、生体認証の普及には不可欠な要素と言えるでしょう。

こういった課題を残しながらも、私たちの豊かな暮らしを実現するアイテムとして、生体認証は広く活用され続けているのです。

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