「カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いって何?」「具体的にどんな意味や役割があるのか知りたい」と思っている人も多いでしょう。カスタマーサクセスはSaaS業界(サブスクリプション)で有効な考え方の1つです。
カスタマーサクセスを説明するに当たって知らないワードも多く出てくるため、今回は初心者の人でもわかりやすいように解説していきます。
[st-midasibox-intitle title=”本記事で分かる内容は以下の通りです。” webicon=”st-svg-check-circle faa-ring animated” bordercolor=”#FFC107″ color=”” bgcolor=”#FFFDE7″ borderwidth=”” borderradius=”5″ titleweight=”bold” myclass=””]
- カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い
- カスタマーサクセスが重要になってきている理由
- カスタマーサクセスで期待できる効果
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カスタマーサクセスとは顧客を成功に導くための能動的施策
カスタマーサクセスとは直訳すると「顧客の成功」という意味で、既に自社商材を購入しているユーザーに成功体験を与えるための施策です。
「顧客の成功と言われても、幅広くてよく分からない」と感じる人も多いですよね。
現にカスタマーサクセスの具体的な施策は企業ごとに大きく異なるため、一概に定義付けることは難しいです。
顧客を成功に導くための「能動的」な行動を一般的にカスタマーサクセスと呼ぶことを理解しておきましょう。
もちろん「顧客の成功」だけが目的ではありません。カスタマーサクセスは最終的に顧客1人あたりの収益を最大化させ、企業の利益に繋げるのが目的です。
カスタマーサクセスが必要な理由はビジネスモデルの変化
ではなぜ近年「カスタマーサクセス」という言葉を耳にする機会が増えたのか。それは主に「サブスクリプション型サービスの台頭」です。
これまではパソコンのソフトウェアなどは「買い切り」がほとんどでした。toCの例で言うと、年賀状ソフトを購入してPC上にインストールした経験がある人もいらっしゃるでしょう。
ただ、現在は買い切り型のソフトウェアは少なくなり、サブスクリプション型(継続購入)に移行しつつあります。
「買い切り型」と「サブスクリプション型」の違いを表でまとめたのでご覧ください。
サブスクリプション型 | 買い切り型 | |
コスト | 安い(毎月定額コスト) | 高い |
他サービスへの乗り換え | 簡単 | 難しい |
企業の目的 | 継続利用してもらうこと | 購入してもらうこと |
サブスクリプション型サービスは初期費用がない場合が大半で、月々のランニングコストを支払う仕組みです。つまりユーザーは「サービスが気に入らなかったら、他のサービスに移行する選択肢がある」ことになります。
買い切り型サービスの場合、初期費用として高い費用を支払っているため、ユーザーはそもそも他社サービスに乗り換えようという発想にすらならない場合も多いでしょう。
つまりSaaS業界などのサブスクリプション型サービスを提供している場合、重要なのはあくまで「他社サービスに移行されず継続利用してもらうこと」です。
ユーザーは簡単に乗り換えができてしまうため、継続してもらうために「能動的なアプローチ(カスタマーサクセス)」が必要になります。
サブスクリプション型サービスはtoB業界が主流でしたが、今ではNetflixやHuluなどを始めtoC業界でも目にする機会は多いですよね。
つまり、カスタマーサクセスの考え方は今後ますます重要度が増してくることになります。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いは「能動性」
カスタマーサクセスと同じような意味合いで「カスタマーサポート」という言葉も存在しています。
先ほどから解説しているようにカスタマーサクセスはあくまでサービスを継続利用してもらうための「能動的」な施策です。
カスタマーサポートはどちらかというと、ユーザーの不満が出たタイミングで不満を解消する「受動的」な施策と言えるでしょう。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いを表でまとめたのでご覧ください。
カスタマーサクセス | カスタマーサポート | |
目的 | 顧客の成功 | 不明点や不満の解消 |
姿勢 | 能動的 | 受動的 |
目標(KPI) | 継続率・解約率など | 顧客満足度・応答率など |
カスタマーサポートはあくまでユーザーの不満や不明点が起点となった「解決策の提案」です。
こちらからユーザーに対してアプローチするのではなく「受動的」な対応姿勢だと言えるでしょう。
カスタマーサポートの具体例は以下の通りです。
- FAQの作成
- チャットbotの導入
- クレーム対応マニュアルの作成
カスタマーサクセスで期待できる機能や役割は4つ
[st-slidebox webicon=”” text=”+ カスタマーサクセスで期待できる効果は以下の4つです。” myclass=”” bgcolor=”” color=”#1a1a1a” margin_bottom=”20″]
- チャーンレート(解約率)の低下
- アップセル・クロスセル率の向上
- LTV(顧客生涯価値)の最大化
- NPS(ネット・プロモータースコア)の向上
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「知らない用語ばかり」という人も多いと思うので、用語の意味も含めてそれぞれわかりやすく解説していきます。
チャーンレート(解約率)の低下
先ほども解説したように、カスタマーサクセスの重要なKPIの1つは「継続率」です。
カスタマーサクセスで能動的に顧客の悩みを解決、もしくは要望を受け入れることによって他社への乗り換えを防止できます。
その結果チャーンレート(解約率)も改善するわけです。
チャーンレートとはSaaS業界でよく使われる言葉で、以下の2つに細かく分類されます。
- カスタマーチャーン:顧客数をもとに計算する解約率
- レベニューチャーン:収益をもとに計算する解約率
それぞれの計算式は以下の通りです。
- カスタマーチャーン:特定期間内に解約した顧客数 ÷ 特定期間内に獲得した顧客数 × 100
- レベニューチャーン:特定期間内の損失額 ÷ 特定期間内の総収益 × 100
どちらも解約率に関わる指標なので理解しておきましょう。
アップセル・クロスセル率の向上
アップセルとクロスセルの詳しい解説は以下の表をご覧ください。
種類 | 意味 | 具体例 |
アップセル | 現状よりも高いグレードに変更してもらう施策 | 月額1,000円のプランA→月額3,000円のプランBに変更してもらう |
クロスセル | 関連サービスを購入してもらう施策 | 自動車保険の加入者に対して、生命保険も加入してもらう |
アップセル・クロスセル率が上昇すれば、売上に直結しますよね。チャーンレート(解約率)ももちろん重要ですが、1人あたりの利益最大化も目指すべきです。
カスタマーサクセスを上手く活用してユーザーの満足度が上昇すれば、グレードを上げてくれたり他の関連サービスも導入してくれたりする可能性も十分に考えられます。
特にユーザーは初めからグレードが高いサービスを導入する可能性は多くはありません。
「まずはお試し感覚で安いプランを利用して、良かったらグレード変更しよう」といったユーザーが多いことは容易に想像できると思います。
つまり、カスタマーサクセスによって顧客の成功体験を生み出せればアップセル・クロスセル率を高めるのはそこまで難しくありません。
LTV(顧客生涯価値)の最大化
LTV(顧客生涯価値)とは言葉の通り、顧客1人あたりどのくらいの収益を生み出してくれるのかを示す指標です。
もともとサプリメントや栄養食品など通販ショップの「定期購入」がある業界において、LTVはよく用いられていました。
SaaS業界を中心にサブスクリプション型サービスが増加したことが影響して、近年ますます耳にする機会が増えた指標です。
LTVは以下の計算式で求められます。
1人あたりLTV(顧客生涯価値) = 年間取引額 × 収益率 × 継続年数
つまり、チャーンレートとアップセル・クロスセル率もLTVの最大化に深く関わっているわけです。
解約率が減少すれば「継続年数」が増加し、アップセル・クロスセル率が上昇すれば「年間取引額」が増加します。
つまりカスタマーサクセスによって「チャーレートの減少」と「アップセル・クロスセル率の向上」ができれば、おのずとLVTは最大化するわけです。
NPS(ネット・プロモータースコア)の向上
NPS(ネット・プロモータースコア)とは顧客ロイヤリティを計測する指標です。
顧客ロイヤリティ(忠誠心)とは「自社サービスに対してユーザーがどれだけ愛着を抱いているのかどうか」の「忠誠心の度合い」を意味します。
顧客ロイヤリティは曖昧な指標で、数値として分析するのは難しい傾向がありました。そこで顧客ロイヤリティを数値化するためにNPSが利用されているわけです。
ユーザーが自社のサービスに対して愛着(NPS)があればあるほど継続率も高く、他の人にも紹介してくれる可能性は高いですよね。
「他の人にも紹介してくれる」という特徴からNPSは「顧客推奨度」とも呼ばれています。
NPSは「自社のサービスを他人にどれだけおすすめしたいですか?0〜10で教えてください」というアンケートで集計された数値です。
カスタマーサクセスを効果的に行うことによってNPSが上昇が見込め、ユーザーの忠誠心が向上します。
ユーザーの忠誠心が向上すればユーザー自らがサービスを他人に広めてくれるため、より多くの顧客を獲得できる可能性が高まるわけです。
「LTVの最大化(1人あたりの収益の最大化)」と「NPSの向上(新規ユーザーの獲得)」を両立できれば、企業として成長できることは間違いありません。
カスタマーサクセスを成功させるコツは2つ
カスタマーサクセスは人によって実行すべき施策が大きく異なるため、「〜をやるべき」と特定の行動を示せません。ただ、それでも「カスタマーサクセスって具体的にどうやるの?」と思われる人も多いと思います。
[st-slidebox webicon=”” text=”+ 2つのコツを解説していきます。” myclass=”” bgcolor=”” color=”#1a1a1a” margin_bottom=”20″]
- 正しい顧客に販売する
- 顧客の状況に適した対応を取る
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成功させるコツ1. 正しい顧客に販売する
そもそも論ですが、適切なターゲット層にサービスを販売することはカスタマーサクセスの成功に大きく起因します。
どれだけカスタマーサクセスを精力的に行ったとしても、そもそも「ユーザーと自社サービスの親和性が低い場合」には顧客の成功は難しいです。
親和性の低いユーザーに満足してもらうためには当然手間やコストも大きくなるため、結果として費用対効果が低くなってしまいます。
かといってサポートを怠ると口コミサイトなどで悪評を言われてしまう可能性や解約されてしまう可能性も否定できません。
サブスクリプション型サービスを販売しているのであれば、営業のゴールは「顧客獲得」ではなく、「適切な顧客の獲得」だと言えるでしょう。
サービスとの親和性がなるべく高いユーザーに利用してもらうことによって、カスタマーサクセスの費用対効果が高くなります。
顧客の状況に適した対応を取る
カスタマーサクセスの理想は「すべてのユーザーに成功体験を与えるように行動すること」です。
ただ、当然リソースは限られているため、どのユーザーにどれだけリソースを分配するのかを決めなければなりません。
そこで利用できる考え方が「タッチモデル」です。タッチモデルは顧客をLVTの大きさで以下の3つに分類します。
- ハイタッチ:LTVが最も大きい(単価が高い or 利用期間が長い)
- ロータッチ:ハイタッチとテックタッチの中間
- テックタッチ:LTVが最も小さい(単価が低い or 新規顧客)
一般的にハイタッチに行けば行くほどユーザー数は少なくなる傾向があります。また、企業によって3つの分類基準は異なるため、企業ごとに設定しなければなりません。
例えば各層で以下のような対応が想定できます。
- ハイタッチ:個別に担当者が常時対応など
- ロータッチ:担当者が定期的に対応など
- テックタッチ:サービス利用法の動画やebookの提供など
いずれの層にも適切な対応を心がける必要があります。ハイタッチだからといってサポートをしすぎると他のユーザーの対応がおろそかになってしまう可能性もあるわけです。
逆にテックタッチだからといって十分なサポートを提供しないのは「カスタマーサクセス」とは言えません。
自社のリソースの範囲内でそれぞれの層に適切なサポートを提供できるように心がけましょう。
カスタマーサクセスの役割はLTVの最大化!
カスタマーサクセスは「顧客の成功を導きつつLTV(顧客生涯価値)を最大化させる」あらゆる施策です。
ただ、個別のカスタマーサクセスに気を取られすぎてリソースが適切に分配できなければ結局トータルの顧客満足度は低下してしまいます。
顧客を上手く分類し、適切な顧客にリソースを考慮した上で最大限のサポートを行うことがカスタマーサクセスの成功に近づく考え方です。
カスタマーサクセスを効率的に行い、自社の利益を最大化できるようにしましょう。
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