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1時間の取材を終えて、文字起こしを開くと2万字の壁——ここから記事にする作業は、かつて取材の中で最も重労働でした。話し言葉は繰り返しと脱線だらけで、そのままでは読み物になりません。この「文字起こし→記事」の変換こそ、AIが最も時間を削ってくれる工程です。
ただし、丸ごとAIに投げて「記事にして」では、事実が歪んだ、誰の声でもない文章ができあがります。この記事では、AIを使った文章の書き方 完全ガイドの実践編として、品質を守りながら文字起こしを記事に変える4ステップを解説します。
前提:文字起こしまでの流れ
録音から文字起こしまでは、スマホの録音アプリの文字起こし機能や、音声認識AI「Whisper」で自動化できます(Whisperで無料の文字起こし環境を作る)。ここでは文字起こしテキストが手元にある状態から始めます。
個人情報やオフレコ発言を含む音声・テキストをクラウドAIに渡す場合は、サービスのデータの扱いを確認し、必要なら該当箇所を伏せてから使ってください(取材メモと録音のやり方で詳述)。
ステップ1:整形 ― 2万字を「使える素材」にする
最初のプロンプトはこれです。
「以下はインタビューの文字起こしです。内容は一切変えず、①フィラー(えー、あの等)の削除、②明らかな言い間違いの整理、③話題ごとの小見出し付け、を行ってください。発言の意味や言い回しを変えたり、要約したりしないでください。」
「内容を変えない」を二重に念押しするのがポイントです。この段階はあくまで掃除であって、要約ではありません。2万字が読み通せる素材に変わります。
ステップ2:抽出 ― 記事の材料を掘り出す
次に、整形済みテキストから材料を抽出させます。
「この文字起こしから、次の4つを抽出してください。①記事の核になりそうな発言トップ5(原文のまま引用)、②出てきた数字と固有名詞の一覧、③話の流れの要約(時系列で10行)、④聞き手として確認が漏れていそうな点。」
①が「」付き引用の候補、②が裏取りリスト、④が追加取材(メールでの確認)のリストになります。ここで自分の取材メモの★マーク(現場で「これは使える」と感じた発言)と突き合わせると、AIが拾えない「現場の温度」を取りこぼしません。
ステップ3:構成 ― 「一番のニュース」を自分で決める
材料が揃ったら構成です。ここで重要な原則があります。記事の「一番のニュース」を決めるのは、AIではなくあなたです。AIは発言の重要度を頻度や一般性で判断しがちで、現場で感じた「この一言がすべてだ」という感覚は持っていません。
ニュースを決めたら、こう頼みます。「この記事の一番のニュースは【◯◯】です。これをリード文に置いた、【読者】向け・【字数】の記事構成案を3パターンください。」構成の選び方・磨き方はAIで構成案を作る方法と同じ要領です。
ステップ4:記事化 ― 下書き8割、仕上げは人
確定した構成で下書きを作らせます。「この構成案で記事の下書きを書いてください。発言の引用は、抽出した原文のままを使い、創作しないでください。地の文はですます調で。」
出てきた下書きに、人にしかできない仕上げを施します。
- 引用の照合:「」の中身が本当に本人の言葉か、文字起こしと1つずつ照合する。AIは引用をそれらしく「創作」することがあります。ここが品質の生命線です
- 数字・固有名詞の裏取り:ステップ2の一覧を、取材メモ・一次情報と照合
- 情景を足す:録音に残らない描写——店の匂い、表情、手の動き——はあなたのメモからしか書けません。これが入ると、記事は一気に「その場にいた人の文章」になります
- 最終添削:仕上げのチェックはAIで文章を添削・推敲する方法の3段階でどうぞ
やってはいけない:文字起こしの「そのまま記事化」
「文字起こし全文を貼って『記事にして』」の一発変換は、速い代わりに次の事故を招きます。①発言の趣旨が要約でねじ曲がる、②言っていない引用が生成される、③どの取材でも書ける平板な記事になる。整形→抽出→構成→記事化と工程を分け、各工程の間に人の判断を挟む——遠回りに見えて、これが結局いちばん速くて安全な道です。
掲載前には、相手に原稿を確認してもらうことも忘れずに(取材のやり方 完全ガイドのステップ6)。AIをどう使ったかにかかわらず、記事の責任は書き手にあります。
まとめ:AIは変換を、人は判断を
文字起こしから記事への道のりは、①整形(内容を変えない掃除)、②抽出(引用候補と裏取りリスト)、③構成(一番のニュースは自分で決める)、④記事化(引用照合と情景の追加は人の仕事)の4ステップです。2万字の壁に費やしていた時間を、取材そのものと、あなたにしか書けない一段落に使ってください。
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