目次
「いい話が聞けたはずなのに、机に向かうと書けない」——取材後によくある悩みです。原因は記憶ではなく記録にあります。人の記憶は数時間で細部が抜け落ちます。記事の質を支えるのは、当日の記録の質です。
この記事では、取材のやり方 完全ガイドのうち「記録」の技術——録音・メモ・文字起こし——を解説します。道具は特別なものは要りません。スマートフォンとノートがあれば十分です。
録音の基本:必ず許可を取り、2つの手段で守る
録音は冒頭にひとこと断る
「正確に記事にするため、録音させていただいてもよろしいですか?」——取材開始時に必ず確認します。断られることはまずありませんが、無断録音は信頼を壊します。「正確に書くため」という理由を添えると、相手も安心します。
機材はスマホで十分。ただし置き方と保険が大事
- スマホの録音アプリで十分です。相手との中間、テーブルの上に置く(手に持たない・ポケットに入れない)
- 騒がしい店内なら、相手寄りに置く。エアコンの真下は避ける
- 保険をかける:長い取材や大事な取材では、2台目(ICレコーダーや同行者のスマホ)でも録る。「録れていなかった」は取り返しがつきません
- 開始直後に一度、録音が動いているか画面を確認する習慣を
録音があっても、メモは取る
「録音してるからメモは要らない」は初心者が必ず一度ははまる落とし穴です。メモには録音にできない3つの仕事があります。
- ①音にならない情報を残す:表情・仕草・店内の様子・匂い・手触り。「壁一面に常連客の写真」「話しながら何度も商品を撫でた」——記事を生き生きさせる描写は、耳ではなく目のメモから生まれます
- ②その場の「重要マーク」:聞きながら「これはリード文になる」と感じた発言に★を付けておく。後で長い録音から探す時間が激減します
- ③数字・固有名詞の確認:人名の漢字、商品名、年号はその場で書いて、相手に見せて確認するのが最も確実です
メモは全文を書こうとせず、キーワード+記号で。「1974創業/先代=父/★閉店考えた→常連の手紙」程度の走り書きで十分です。清書は録音がやってくれます。
文字起こし:AIに任せて、確認は人がやる
かつて取材の後工程で最も重かった文字起こしは、AIでほぼ自動化できるようになりました。1時間の録音を手作業で起こすと数時間かかりますが、AIなら数分〜十数分です。
- 手軽に:スマホの録音アプリやオンライン会議ツールの文字起こし機能を使う
- 無料で本格的に:音声認識AI「Whisper」を自分のパソコンで動かす方法もあります。利用料がかからず、音声データを外部サービスに送らずに済むのが利点です。手順はWhisperで無料の文字起こし環境を作るで解説しています
ただし、AI文字起こしには2つの注意があります。第一に、固有名詞と数字は必ず誤認識を疑うこと。人名・地名・商品名は録音とメモで照合します。第二に、取材相手の発言には個人情報や未公開の話が含まれることがあるため、クラウド型のサービスを使う場合はデータの扱い(学習利用の有無)を確認すること。この観点はAIで文章を扱う全般に共通で、AIで記事を書くときの注意点にまとめています。
取材直後の10分が、記録の価値を倍にする
取材が終わったら、その場を離れる前に10分だけ使ってください。やることは3つです。
- ①メモの走り書きを補完する:自分にしか読めない略語を、忘れないうちに言葉に直す
- ②「一番のニュース」を1行で書く:この取材で一番驚いた・心が動いたことは何か。これが後で記事のリード文の種になります
- ③写真とメモの対応を確認する:どの写真が誰・何なのか、思い出せるうちに(撮影の作法は取材写真と掲載許可の基本へ)
まとめ:記録は「録音=正確さ」「メモ=臨場感」の二刀流
取材の記録は、録音が発言の正確さを、メモが情景と重要マークを担う二刀流が基本です。文字起こしはAIに任せ、浮いた時間を「取材直後の10分」と執筆に回してください。聞く技術は質問の作り方と聞き方のコツ、記録を記事に変える工程は取材のやり方 完全ガイドで解説しています。
取材・記事制作の業務フロー設計やAI文字起こしの導入は、当社のサービスでもご支援できます。
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