「どうしたら、いいインタビュー記事が書けるのか」と、不安な方もいらっしゃると思います。
「思いを伝える」「メッセージを込める」を第一に、インタビュー記事に慣れていきましょう。
まずは「伝えたいメッセージ」を明確に
インタビュー記事は多くの場合、世の中に発信したいメッセージのある人と伝えたい思いのある人が取材で出会い、そのメッセージを形にして発信するものです。
ですから、「いい文章にする」「読みやすく・ポイントが伝わる記事にする」ということも大切ですが、伝えたいメッセージを明確に伝えることが何よりも大切です。
媒体からの依頼によるインタビューであれば、その記事を通して何を伝えるかという企画の意図(趣旨)が必ずあります。
自分が企画し提案したインタビューであれば、「このことを伝えたい」という思いがさらに強くあるはずです。
実際にインタビューをして当初の意図と少し変わった部分があったとしても、あらためて「何を伝えたいか」を明確にし、そのメッセージが伝わるように記事をつくっていきましょう。
インタビュー記事のポイントは、具体的な事実よりも、その事実の裏側にある「思い」です。「新しい店ができた」「ケーキの新製品を発売した」「これまでにないサービスを提供する」という事実よりも、開店や開発への思いや、それまでの苦労を今、どう思うのか、といった部分。これは、人の共感を呼ぶポイントでもあります。
媒体の制作方針やプロセスの確認とは?
掲載予定の媒体やサイトの方針によって、インタビュー記事の制作の仕方も変わってくるところがあります。
制作方針やスタイルは媒体ごとに異なる
記事作成の前に確認しておくべき基本的なことがらには、以下のようなものがあります。
記事作成の前に確認しておくべき基本的なこと |
・文字数 |
・文体(です・ます体 または で・ある体) |
・インタビュー記事の形式(一問一答形式・モノローグ形式・ルポ形式) |
・小見出しの有無や数 |
ウェブ系の媒体では、近年は一部のニュース系サイトなどを除き、です・ます体が圧倒的に多くなっています。
で・ある体を基本とする媒体でも、インタビュー部分や取材相手のコメントの部分、「 」(かぎかっこ)の中などだけは、です・ます体にしている媒体もあるので、注意しましょう。
インタビュー記事の形式については、この後で詳しく説明します。
インタビュー相手に原稿案の事前確認をする?
インタビュー相手(インタビュイーとも言います)に、記事の掲載・公開前の確認をしてもらうかどうかによって記事作成時の対応が変わってきます。
◊企業やブランドなどのPR活動の一環で作成・発信される記事(広告記事やオウンドメディアの記事など)は、関係者の確認は必須でしょう。
◊それ以外の記事(広告記事に対して編集記事ということもあります)でも、インタビュー相手などに事前に内容を確認してもらうケースもあります。
◊新聞やテレビニュースなど、ニュース・報道系の媒体は、事前確認を行うことが少ないですが、雑誌媒体では伝統的に事前確認ありが一般的です。
一般的に「事前確認あり」の場合は、取材・執筆する側にも、インタビュー取材を受ける側にも、「インタビュー時の発言を修正するのは、あり」という認識があります。
媒体としての方針にもよりますが、事前確認を行う場合は、発言順を入れ替えたりても、相手が確認のときに了承してくれれば問題ないでしょう。
一方で、「事前確認なし」の場合は、「取材者・媒体の責任でインタビューをまとめている」ことになるため、記事の掲載・公開後に「そういう発言はしていない」「その意図では言っていない」と伝えられることもあります。しっかり責任を持って記事を作成しましょう。
インタビュー記事の3つの形式
インタビュー記事には、主に3つの形式があります。それぞれの特徴、どんな場合にふさわしいかをご紹介します。
媒体からの指定がない場合は、以下を参考にして形式を決めてください。
一問一答形式(Q&A形式)・対談形式
「インタビュー記事」と聞いて、最初に思い浮かぶのが、この一問一答形式ではないでしょうか。インタビュアーの質問と、インタビューを受ける人の回答を、それぞれ分かる形で紹介します。
一問一答形式の特徴は、インタビューを受けた人がどのような答えをしたのかだけではなく、「どのような質問を受けて、そのように答えたのか」が分かることです。
自分から発表したりスピーチしたりする場合は、その人が話そうと思うことだけが言葉になります。一方で取材の場合は、自分では考えていなかったことも聞かれます。ときには、自分では話したくなかったことについて質問されることもあるでしょう。
質問と回答が分かるので、読者にとっては、インタビュー取材の現場で聞いているような感覚で読むこともできます。
一方で、「インタビューを受けた人の考えや言葉を知りたい!」という人にすると、一問一答の形式はところどころで質問者が相手の言葉を遮る形とも言えます。インタビュー相手の考え・言葉を集中して伝えるには、次項のモノローグ形式も検討するといいでしょう。
一問一答形式の特徴 |
・どのような質問を受けて、どう答えたかが分かる |
・インタビューの現場に居合わせたような感覚も伝わる |
・インタビューを受けている人の考えやメッセージに集中したい場合は、質問にって、それがさえぎられる感じにもなる |
<一問一答形式のインタビュー記事の例>
「2年先までほぼ休みなし」のんが切り開く独自路線 ジャニーズ問題で「能年玲奈」使えない問題脚光…エージェント語る7年半
(Jcastニュース 2023年09月30日)
対談形式は一問一答形式の一形態
インタビュー記事のスタイルの一つに対談形式があります。
一問一答形式は基本的にインタビューを受ける人が主、インタビューをする人が従あるいは黒子の関係です。これに対して対談は、両者が対等に近い関係性となります。
対談の場合、多くは質問をする人も何か特徴やテーマについての専門性を持っています。「その質問者が専門性を生かしてどんな質問をするのか」というところも読者の関心事となっているはずです。一般的な一問一答形式のインタビューよりも、質問に主観的な要素も入り、長いことが多いです。
ただし、対談と名乗らない一問一答形式の記事でも、質問が比較的長い記事もあります。また、通常の一問一答形式の記事でも、「聞き手=○○○○」と明記して、質問者が一定の知識や見識を持っていることを伝えることもあります。
モノローグ形式
インタビュアーの質問を省き、インタビューを受けた人が自分一人で話しているようにまとめた形式をモノローグ(独白)形式あるいは一人称形式などといいます。
「インタビューを受けた人の考えや言葉を知りたい!」という人にとっては、インタビューを受けた人の考えや言葉を、質問にさえぎられることなく、集中して読むことができます。
実際のインタビュー取材では、質問を受けたから答えることもあり、その中には本人としては積極的には話したくないこともあります。しかし、モノローグ形式では、自分から話したことと、質問されたから話したことの区別を付けづらく、その結果、すべてが自分から話したことにように受け取られがちです。
「質問されたから答えた」内容が多い場合は、モノローグ形式は避けた方が、インタビューに答えた人の思いに近くなるでしょう。
モノローグ形式の特徴 |
・インタビューを受けている人の考えやメッセージに集中できる |
・インタビューを受けた人が自分から進んで話したことか、質問されたから答えことなのかが、区別しづらい |
・質問されたから答えた内容が多い場合は、避けた方がいい |
<モノローグ形式のインタビュー記事の例>
真の生命保険を、一秒でも早く伝えたい。 中村 大悟
(ジブラルタ生命 ライフプラン・コンサルタント採用サイト)
ルポ形式
世の中で出回っている記事の多くは、取材、つまり関係する誰かへのインタビューを行った上で形になっています。
そして、その多くに「 」(かぎかっこ)付きのコメントなどの形で、関係者の声が含まれています。インタビュー部分が比較的多い記事もあれば、わずかのコメントが紹介されているだけの記事もあります。
しかし、インタビュー部分が少なくても、広い意味でのインタビュー記事と言えるでしょう。この形式は「ルポ形式」「三人称記事」と呼ばれることもあります。
ルポ形式は、関係者の「思い」を伝えることに加えて、事実をしっかり説明するときや、複雑な状況を説明するときに向いている形式です。また、インタビューしたものの十分な取材時間が取れなかった場合に、資料などで情報を補いながらルポ形式の記事を作成することもあります。
ルポ形式の特徴 |
複雑な事実や背景などの説明がしやすい |
そうした状況に対する取材を受けた人の思いを効果的に伝える |
十分なインタビューの時間を取れないときにも活用できる |
<ルポ形式の記事の例 (1) インタビュー多め>
「思いを分かち合える仲間は、“希望”を大切に生きる助けになる」シングルマザーズシスターフッド・吉岡マコさん
(soar 2023年7月26日)
<ルポ形式の記事の例 (2) インタビュー少なめ>
ブレイディみかこさん「リスペクト R・E・S・P・E・C・T」インタビュー 政治や社会を諦めないで
(好書好日 著者に会いたい 2023年9月28日)
メッセージが伝わる記事にするには
最初に考えた「伝えるべきメッセージ」を中心に、実際の構成を考え、記事を作成します。
構成をしっかり考える
実際に記事を書くため、取材時のノートをもとに記事に盛り込む要素にはどのようなものがあるのか振り返り、確認していきます。
取材に慣れないうちは、メモがあまり取れないかも知れません。その場合は『文字起こし』も活用しましょう。最近はAIを活用した文字起こしもあるので、そうしたものを活用すると効率的です。文字起こしについては、この後、説明します。
構成を考えるときに大切なことは以下の4点です。
伝えたいメッセージを核にする
繰り返しとなりますが、その記事で何を伝えたいかを大切にし、そのメッセージが伝わるように、そのメッセージが結論になるように考えていきます。
導入(つかみ)・ポイント・締めを考える
多くの場合、読者は見出しと記事の冒頭を見て、その記事を読むかどうかを決めます。
インタビュー記事の場合は「その人のインタビューが読みたいかどうか」の要素も強いので、一般の記事(ルポ記事など)ほどではないかも知れませんが、やはり導入部分のインパクトは大切です。
そして、話が盛り上がるポイントを考えます。ここは伝えたいメッセージと重なっているはずです。
最後に締め、結論です。そのインタビュー、あるいはインタビューで語られた体験を受けた締めのメッセージがあると、読者も落ち着きます。
比較的使いやすいテクニックとして、導入で紹介したエピソードや言葉につながるエピソードや言葉を持ってくる、というものがあります。話が出発地点に帰ってきたような感じが強まり、しっくり来ることが多くなります。
一つの流れで起承転結させる
文章やストーリーの構成を表す言葉に「起承転結」があります。前項の説明にあてはめると、下記のようになります。
起:導入
承・転:ポイント
結:締め
ポイントとなるところで話に少し異なる要素があれば、それも「転」と言えるでしょう。
例えば、新しいメニューや商品の開発を続ける中で、大きな課題や困難に直面したエピソードなどは「転」と言えるでしょう。
取材やインタビューでは、予想していなかった興味深い話を聞くことも多くあります。
新しい菓子に込めた思いや試作の経緯を聞いていたのに、シングルマザーとして子育てや、学校時代は引っ込み思案だった話、先生・友人との出会いなどの話を聞くこともあるでしょう。それが菓子づくりに影響していれば盛り込みますが、あまり関連していないときは、思い切って外します。
興味深い話であっても、限られた字数のなかで方向性が違う話が複数あると、読んでいる人にとっては、「何がいいたいか分からない」ということになりがちです。伝えたいメッセージをしぼり、そのメッセージが伝わるように構成を考えます。
発言順の変更はどこまで可能?
インタビューをできるだけ忠実に記事にすることを重視し、発言順などを変えることはしない媒体・企画もあるでしょう。
事前の原稿確認を行わない場合は、実際のやりとりと順番を変えた場合、インタビュー相手が「流れが違う」と感じるかも知れませんので、注意しましょう(取材時に確認できると安心です)。
文字起こしはどこまで必要か?
インタビューでのやり取りの全てを取材時にノートにメモしたり、パソコンで記録したりするのは困難です(不可能ではないかも知れませんが、全てを記録する余力があれば、次の質問や会話を考えましょう)。
インタビュー取材後、やり取りを文字にするのが『文字起こし』です。文字起こしはどこまで徹底すべきでしょうか。
かなり正確な文字起こしが必要になる(やっておいた方がいい)と考えるのは、次のようなケースです。
◊インタビュー相手に掲載前の事前確認を行わない場合 |
◊ 媒体や企画の方針として、かなり忠実にやり取りを再現する場合 |
◊ インタビュー相手の地位や立場、記事内容のため、正確性が重要となるとき |
逆に言うと、記事の事前確認があり、取材者と取材相手との間に「インタビュー後に多少の修正はあり」との共通の認識があれば、文字起こしにそれほど労力をかける必要はないでしょう。
一方で、口調や、答えに迷った様子もできるだけ伝えるという記事であれば、その部分も含めて、一度、忠実に文字起こしをした方がよいでしょう。
大手企業のトップや政治家など、発言の社会的影響が大きい人の場合や、機微なテーマを扱う場合は、事前確認の上でインタビュー記事を公開・掲載しても、その後、より正確な発言の検証を求められることがあるかも知れません。記事を作成する上でも慎重さが求められますので、忠実な文字起こしをしておくことが望ましいでしょう。
最近は、AI(人工知能)技術を活用した文字起こしのサービスやアプリも増えています。無料で使えるものも複数あります。AI文字起こしで、やり取りを完璧に文字にするのは難しいですが、大まかな内容をつかむレベルであれば、無料で使えるものでも十分に活用できます。
AI文字起こしサービスの例 |
・Google document(無料) |
・Microsoft Office(サブスクリプション契約なら追加料金なし) |
・Whisper(無料) |
・notta(有料) |
メモ・文字起こし・録音データから原稿作成
形式や構成も決まったので、メモや文字起こし、録音データをもとに、原稿を作成していきます。
実際の会話(話し言葉)をそのまま原稿にしたのでは、意味が通らないことが多いでしょう。主語を含め言葉が省略されることも多いですし、文の途中で主語が変わったり、別の話になったりすることも多いです。ですので、必要な言葉を補ったり文を区切ったりしていきます。
媒体によっては、「(私が)そこに行ったのは…」など、( )かっこなどを使って、言葉を補ったことが分かるようにする場合もあります。
「えーと」とか「あー」などの言葉は、原稿に入れないことが多いですが、媒体・企画によっては、やり取りをできるだけ忠実に伝えるために残すこともあります。
文字数は、比較的柔軟な場合と、きっちり決まっている場合とがあります。文字数がきっちり決まっている場合、文字数を意識しながら書き進める場合もあるでしょう。筆者の場合は、書きたい、伝えたいと思ったことは、必ず一旦、書くようにしています。修正や削除は次の段階でじっくり考えればいいからです。
原稿を見直して推敲・修正・校正する
記事ができたら、見直しをします。まずは、想定した構成になっているか、伝えたいと思ったメッセージが伝わる記事になっているか、決められた文字数になっているか、などを確認します。その上で、わかりにくい表現や誤字脱字、表記の基準に合致しているかなども確認していきます。
この修正の段階で筆者が実践していることの1つが、「原稿を書き終えてから一晩おく」です。原稿を書き終えた直後は、頭の中は、その原稿や取材のことでいっぱいです。伝えたい思いにも、あふれています。その状態で、冷静、客観的に自分の原稿を見直すことはなかなか難しいからです。
中でも難しいのは、自分の書いた原稿を短くする、つまり原稿の一部を削ることです。筆者の先輩に「自分の原稿を削るのは、自分の血肉を削るような作業」と言った人がいましたが、同感です。
こうした確認・修正の作業を行い、伝えたいメッセージの際立った「筋肉質の引き締まった原稿」にしていきます。
インタビュー相手による原稿確認
取材者・ライターが原稿確認を行う場合と、媒体側(編集部)などで対応する場合があります。
確認の後、修正を求められる場合がありますが、取材時にあいまいだった数字や固有名詞、年月などの修正・補足は問題ないでしょう。一方で悩ましいのは、取材時の発言の「撤回」や、かなり違う意味への「書き換え」、表現の変更を求められるケースです。
事前に確認をするということには、こうした修正も「あり」という意味も込められていますし、公開が難しい情報もあります。しかし、「ぜひ伝えたい」と思った部分が変更・削除対象となることもあります。相手との関係や状況次第ですが、「ここはぜひお伝えしたい」「多くの人に共感される言葉だと思います」などと再検討をお願いすることもあり得ます。
取材者・ライターが原稿確認を行う場合は、この確認と修正によって、原稿完成となります。媒体からの依頼の場合は、さらに媒体との調整に進みます。
おわりに
他の記事と同様ですが、慣れないうちは実際のインタビュー記事の作成で難しいこともあるでしょう。ですが、伝えたいメッセージや思いの詰まった記事は、きっと多くの人の共感を呼ぶでしょう。
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