企業のマーケティング担当者や広告運用を担当している方は、「サードパーティクッキー」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。サードパーティクッキーとは、Webサイトのユーザーに関する情報を収集するために使用される技術で、広告や分析などに利用されます。
そんなサードパーティクッキーですが、最近では規制や廃止に関する話題が注目を浴びています。実際、Appleの「Safari」では2020年3月に全面廃止され、Googleが提供する「Google Chrome」でも2024年中に全面廃止することが発表されました。
本記事では、サードパーティクッキーの概要や仕組みを解説するとともに、法律・Apple・Googleによる規制やそれによる影響を詳しく解説します。サードパーティクッキーの廃止に向けた企業の対処法も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
サードパーティクッキーとは?クッキーの仕組みと種類
サードパーティクッキーとは何かを解説する前に、まずはクッキー(Cookie)の仕組みを理解しておきましょう。
クッキー(Cookie)とは、Webサイトの訪問者の情報を一時的に保存するWeb上の仕組みや保存されたファイルのこと。
ユーザーがWebサイトにアクセスすると、そのWebサイトのサーバーからクッキーが発行され、ユーザーが入力した個人情報(名前・住所・カード情報・購入履歴など)が保存される仕組みです。
クッキーを用いると、ページを移動したり時間が経ってから再度アクセスしたりした際、同じ情報の入力が不要になります。
オンラインストアで買い物をした際、以前利用したカード情報が残っていたり、数日前にカートに追加した商品がまだ残っていたりしたなんて経験がある方も多いのではないでしょうか。
これこそがクッキーによる効果で、Webサイトの利便性を向上させるために欠かせない技術です。
そんなクッキーには、ファーストパーティクッキーとサードパーティクッキーの2つの種類があり、それぞれ特徴や役割が異なります。
ファーストパーティクッキー(1st party cookie)
ファーストパーティクッキーは、ユーザーがアクセスしたWebサイト自身が発行・管理するクッキーのこと。ユーザーが特定のWebサイトを訪問した際に発行されます。
先ほど例に挙げたログイン情報やカート内情報は、ファーストパーティクッキーによって管理されていることがほとんどです。
ファーストパーティクッキーにより、Webサイトはユーザーの好みや過去の行動などの情報を記録し、次回訪問時にそれを使用してユーザーによりカスタマイズされた体験を提供できます。
例えばオンラインストアで、ユーザーが過去に見た商品や購入履歴などの情報を利用してより関連性の高い商品を提案することが可能です。
ファーストパーティクッキーはユーザーにとっても利便性が上がる仕組みのため、ブロックされるリスクがほとんどありません。
サードパーティクッキー(3rd party cookie)
一方のサードパーティクッキーは、アクセスされたWebサイト以外の別のドメインに属するサービスや広告会社などが発行するクッキーのこと。Webサイト内の広告バナーなどから発行されます。
サードパーティクッキーは複数のWebサイトで共有されるため、ユーザーがあるWebサイトで閲覧した情報を別のWebサイトでも使用できます。
例えば、ある通販サイトで興味を示したが購入まで至らなかった商品の広告が、他のWebサイト上で表示されるといった具合です。
サードパーティクッキーは主に広告に使用されるため、ファーストパーティクッキーよりもユーザーにブロックされる可能性が高いという特徴があります。
サードパーティクッキーの活用方法4選
[st-slidebox webicon=”” text=”+ サードパーティクッキーの活用方法として、以下の4つが挙げられます。” myclass=”” bgcolor=”” color=”#1a1a1a” margin_bottom=”20″]
- リターゲティング広告
- Web広告の効果測定
- アトリビューション分析
- アフィリエイト
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1.リターゲティング広告
リターゲティング広告とは、特定のWebサイトを訪問したことがあるユーザーに対して後から広告を配信すること。
サードパーティクッキーを埋め込んだタグを利用してユーザーの行動を追跡し、別のWebサイトを閲覧しているユーザーに対してリターゲティング広告を配信することができます。
例えば、「通販サイトで見ていた商品の広告が別のWebサイト上で表示された」というのがサードパーティクッキーを活用したリターゲティング広告の仕組みです。
2.Web広告の効果測定
サードパーティクッキーは、Web広告の効果測定にも役立ちます。コンバージョン(通販サイトの場合は購入、企業・サービスサイトの場合は申込みや資料ダウンロードなど)に至ったユーザーがサードパーティクッキーを保有しているかどうかで、広告経由のコンバージョンかどうかを判断する仕組みです。
配信した広告が実際に収益につながっているかどうかを判断できるため、マーケティング担当者にとっては重要な指標の1つといえるでしょう。
関連記事:Web広告とは?種類やメリット、課金方式と運用方法について解説
3.アトリビューション分析
アトリビューション分析とは、コンバージョンが発生するまでの広告の貢献度を分析すること。ユーザーがある広告をクリックして商品を購入した場合、アトリビューション分析はその購入がどの広告から発生したものなのかを特定することができます。
コンバージョンが発生した広告だけでなくそれ以前に閲覧していた広告まで特定できるため、例えば「直接購入に至った広告はAだけど、ユーザーが商品を知るきっかけになった広告はB、購入の後押しを行った広告はC」という分析が可能です。
Webマーケティングでのアトリビューション分析は計測ツールを用いられることが多く、そのほとんどにサードパーティクッキーが活用されています。
4.アフィリエイト
アフィリエイトとは、ある商品やサービスを提供する企業が自社の広告を掲載しているWebサイト運営者やブロガーに報酬を支払うマーケティング手法のこと。
アフィリエイターは自身のWebサイトやブログで商品やサービスを紹介し、アフィリエイトリンクをクリックしたユーザーが商品やサービスを購入した場合に、その売上金額の一部を報酬として受け取ることができます。
アフィリエイトリンクをクリックするとLP(ランディングページ)に遷移しますが、このときに裏側のサーバーからサードパーティクッキーが発行されます。これにより、ユーザーがどのアフィリエイトリンクをクリックしてコンバージョンしたかを追跡することが可能です。
関連記事:アフィリエイト広告とは?メリットやリスティング広告との違いも解説
サードパーティクッキーに関する法律とApple・Googleの規制
サードパーティクッキーは、広告を配信する企業にとって非常に価値のあるものですが、プライバシー保護の観点からさまざまな規制がかけられています。
サードパーティクッキーに関する法律・Apple・Googleの規制について、それぞれ詳しく解説していきます。
サードパーティクッキーに関する法律(国外・国内)
アメリカやEU圏では、サードパーティクッキーに関して、それぞれ以下のような法律が定められています。
- アメリカ(カルフォルニア州):CCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)
- EU圏:GDPR(EU一般データ保護規則)
また、日本国内でも2022年4月1日から改正個人情報保護法が交付され、プライバシーを保護する取り組みが進められています。
この法改正により、第三者が持つ情報と照らし合わせて利用する場合、クッキーは個人情報として扱われることとなりました(クッキー単体では個人情報として扱われない)。
これらの法律が定められている国や地域では、ユーザーが明示的に同意しなければ、サードパーティクッキーを使用することができません。
Appleでは2020年3月から全面廃止
Appleは、標準ブラウザである「Safari」にトラッキングを防止する機能「ITP」を搭載し、ユーザーがサイトを訪問するたびにサードパーティクッキーをブロックするように設定されています。
ITPは2017年から徐々に搭載され始め、2020年3月のアップデートにより、現在はサードパーティクッキーは全面ブロックされるようになりました。
また、Appleではファーストパーティクッキーやローカルストレージに対する取り組みも積極的に行われています。これにより、広告経由でのアクセス情報はすぐに削除されるようになりました。
Appleのサードパーティクッキーに対する規制は今後ますます厳しくなると予想されるため、Appleユーザーが多い日本にも大きな影響を与えるでしょう。
Googleでは2024年中に全面廃止される予定
Googleは、「Google Chrome」でのサードパーティクッキーの使用を2024年中に廃止することを発表しています。もともとは2022年の後半に全面廃止の予定でしたが、「プライバシーサンドボックス」のテストに時間がかかっていることを理由に、二度目(一度目は2023年後半)の延長となりました。
プライバシーサンドボックスとは、サードパーティクッキーと同様の機能を持ちながらプライバシーも保護する技術のこと。
サードパーティクッキーが廃止されたとしても、プライバシーサンドボックスを利用して広告主はリターゲティング広告やアトリビューション分析、アフィリエイトが利用できるようになります。
多くの企業がGoogle広告を利用しているため、サードパーティクッキーを廃止しても問題なく広告を配信できるよう、Googleも慎重になっていると考えられます。
Googleサービスでのサードパーティクッキーの規制の状況とともに、開発中のプライバシーサンドボックスについても常に最新情報を追うようにしましょう。
サードパーティクッキーが規制されるとどうなる?
では、サードパーティクッキーが規制されるとどうなるのでしょうか。サードパーティクッキーの廃止による3つの影響を解説します。
リターゲティング広告が制限される
サードパーティクッキーを使用することで、広告主はユーザーの興味関心や行動履歴に基づいた広告配信が行えます。そのため、サードパーティクッキーが廃止されると、これまで行っていたリターゲティング広告の配信が難しくなる可能性があります。
ただし、サードパーティクッキーが全面廃止されていない今でも、クッキーの発行を拒否するユーザーは少なくありません。実際、スマホに表示される「トラッキングを許可しますか?」というメッセージに「許可しない」と答える方も多いでしょう。
そのため、より正確にリターゲティング広告を利用したい場合、サードパーティクッキーに依存しない施策を検討する必要があります。
コンバージョンを計測しにくくなる
サードパーティクッキーは、広告主が自社のWebサイト外での広告の成果を追跡するためにも使用されます。そのため、サードパーティクッキーが廃止されてしまうと、広告主は自分が配信した広告のコンバージョンを計測しにくくなってしまうでしょう。
特に、複数のデバイスを使用するユーザーに対して配信している広告の計測が難しくなるため、該当する企業は今のうちから対策を検討しておきましょう。
デジタルマーケティングの戦略が変わる
サードパーティクッキーが廃止されると、広告主は代替手段を探す必要があります。
ファーストパーティデータもその1つ。オンライン上で集めたデータだけでなく、顧客アンケートやイベントでの意見、口コミなども重要です。
サードパーティクッキーの廃止とともに、広告主が自社で収集したファーストパーティデータはより重要なものとして扱われていくでしょう。
ファーストパーティデータ以外にも、コンテキストターゲティング(Webサイト上のテキストや画像をAIが読み込んでそれに沿った内容の広告を表示する施策)など、よりプライバシーに配慮したターゲティング方法を採用する必要もあります。
また、広告主は、LTV(顧客生涯価値)の向上やコンテンツマーケティングなど、よりブランド認知度を高めるマーケティング手法にシフトすることも大切です。
サードパーティクッキーが廃止されるまでに行うべき企業(広告主)の対応
サードパーティクッキーが廃止される場合、広告主である企業は、それまでに以下の対応を行う必要があります。
- サードパーティクッキーの代わりになる技術を検討する
- LTV(顧客生涯価値)の向上を高めるマーケティングにシフトする
それぞれ詳しく解説していきましょう。
サードパーティクッキーの代わりになる技術を検討する
サードパーティクッキーが廃止された後もリターゲティング広告やアフィリエイトなどを利用するためには、サードパーティクッキーの代わりになる技術を導入する必要があります。
例えば、ファーストパーティクッキーやGoogleが提供する「プライバシーサンドボックス」が挙げられます。
他にも、今後さまざまなツールベンダーがサードパーティクッキーに代わる技術を提供していくでしょう。
それぞれの技術に対する理解を深め、どれを導入するかを検討しておくことが重要です。
LTV(顧客生涯価値)を高めるマーケティングにシフトする
LTV(顧客生涯価値)とは、一人の顧客が会社と関係を持ち続ける期間中に会社が得ると期待される利益の総和のことを指します。
サードパーティクッキーが廃止された場合、LTVを高めるためのマーケティング施策を実施し、自社のデータを活用して利益を最大化させることが必要です。
また、今後はSNS運用やコンテンツマーケティングなど、サードパーティクッキーに依存しないマーケティング施策も検討していきましょう。
広告に頼らなくてもコンバージョンを獲得できるような精度の高いLPを制作する技術も、重要になっていくと考えられます。
サードパーティクッキー廃止に備えて対応を考える!
広告を配信する企業やブランドにとっては非常に価値があるサードパーティクッキー。しかし昨今では、プライバシー保護の観点から、法律やApple・Googleの取り組みによってさまざまな規制がかけられています。
サードパーティクッキーが廃止されると、リターゲティング広告が利用できなくなったり、コンバージョンを検測しにくくなったりなどの影響が出ます。
そのため、サードパーティクッキーを活用したマーケティング施策を行っている企業は、今後完全に廃止するまでにさまざまな対応をする必要があります。
サードパーティクッキーに関する法律や規制は段階的に強まっていくことが予想されるため、今後の動向にも注目しましょう。
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